最近、日本企業の「株主還元」がやけに話題になるようになった。
理由はシンプルで、配当や自社株買いの金額が、はっきり増えてきたから。
東京証券取引所の要請もあって、
企業は資金を溜め込むだけじゃなく、「どう株主に返すか」を意識せざるを得なくなってきた。
その結果、配当だけでなく、自社株買いにも積極的な会社が増えている。
そこで注目されているのが、
配当と自社株買いの両方を評価軸にした株主還元ETF。
その代表例が、2529だ。
この記事では、2529の仕組みや特徴を整理しながら、
高配当ETFとの違いも含めて、落ち着いて見ていく。
今の日本株の流れを理解する入り口として、ちょうどいいテーマ。

2529とは?(基本情報)
2529(NEXT FUNDS 野村株主還元70連動型上場投信)は、野村アセットマネジメントが運用する日本株ETFだ。
2019年に上場しており、株と同じように市場で売買できる。
愛称は「NF・株主還元70 ETF」。
また、日経では「株主還元70」という名称で表記されている。
このETFの最大の特徴は、「株主還元(配当+自社株買い)に積極的な企業70銘柄」へ
まとめて投資できる点にある。
運用は、「野村株主還元70指数」への連動を目指す。
後ほど詳しく触れるが、この指数は配当だけでなく、自社株買いまで含めて企業を評価する。
そのため2529は、単なる高配当ETFとは少し立ち位置が違う。
いわば、「配当だけじゃない」株主還元重視型ETF。
ここで基本スペックも整理しておこう。
- 信託報酬:年率0.308%(税込)
- 分配金:年4回(1月・4月・7月・10月)
- 新NISA:成長投資枠の対象
- 純資産総額:2025年半ば時点で約600億円規模
テーマ型ETFとしては資金規模も比較的大きく、そのため流動性の面では安心しやすい部類だ。
連動指数「野村株主還元70指数」の特徴
2529が連動する「野村株主還元70指数」は、株主還元を重視して設計された指数だ。
配当+自社株買いを合算して評価
まず大きな特徴として、配当と自社株買いを合算して評価する点がある。
この指数では、直近3年間の実績をもとに、
- 配当額
- 自社株買い額
- 増資による希薄化
これらを加味した「ネット総還元利回り」という指標を使う。
言い換えると、
- 株主に返したお金:配当+自社株買い
- 株主から集めたお金:増資
- それを差し引いて、時価総額に対する割合で評価
という考え方だ。
そのため、高配当でも増資が多い企業は評価されにくい。
これは、配当利回りだけを見る指数との大きな違いになる。
分散を意識した指数設計
さらにこの指数は、
- 浮動株調整後の時価総額加重
- 1銘柄あたりの上限ウェイト2%
という設計になっている。
その結果、超高利回りの小型株に偏りにくく、大型株中心で分散しやすい構成だ。
また、定期見直しは年1回(毎年2月)。
頻繁に入れ替えない分、短期的な数字より
中長期の還元姿勢を反映しやすい。
金融業種を除外している理由
もう一つ押さえておきたいのが、金融業種を最初から除外している点だ。
銀行や保険は、規制や外部環境の影響が大きく、配当利回りが見かけ上高くなりやすい。
そのため、比較の公平性を保つ狙いがあると考えられる。
採用基準と指数の考え方
採用基準の軸は、直近3年のネット総還元利回りだ。
ルールを整理すると、次の通り。
- 対象:東証上場普通株(金融業除外)
- 評価指標:配当+自社株買い-増資 ÷ 時価総額
- 選定:上位70銘柄
- ウエイト:時価総額加重(上限2%)
- リバランス:年1回(2月)
この仕組みにより、
- 配当を出している
- 自社株買いにも積極的
- 増資で株主を薄めにくい
こうした企業が自然と集まりやすくなる。
つまり、「数字上の利回り」より「実質的な還元姿勢」を見る指数、
そう理解しておくと分かりやすい。
構成銘柄と業種バランス
では実際の構成はどうか。
2529は大型株中心で、
通信、商社、医薬品などが上位に並びやすい。
金融業は除外されているためゼロだが、それ以外の主要セクターは比較的まんべんなく入る。
ここで重要なのは、配当利回りが高いだけでは上位に来にくい点だ。
自社株買いが大きければ評価される一方、高配当でも増資が多ければ採用されにくい。
また、1銘柄あたりの上限があるため、特定企業への集中リスクは抑えられている。
分配金・利回りの特徴
高配当ETFとの違い
2529の分配金利回りは、高配当ETFと比べると控えめだ。
目安としては2.5〜3%前後で、4%台が普通の高配当ETFより低く見えることもある。
しかし、ここで判断を急ぐとズレる。
2529は、分配金だけを目的にしたETFではない。
自社株買いがもたらすリターン
自社株買いはETFに現金として入らない。
そのため分配金には反映されにくい。
一方で、企業価値が高まれば、株価上昇(キャピタルゲイン)としてリターンに寄与する。
つまり2529は、配当+値上がりでトータルリターンを狙う設計だ。
なお、分配金は年4回だが、
4月・10月が多く、1月・7月は少なめになりやすい。
これは日本株の配当時期の影響だ。
値動き・ボラティリティ(事実のみ)
TOPIXとの比較
2529の値動きは、
基本的には日本株全体に沿って動く。
ただし構成の違いから、
短期ではTOPIXと差が出ることもある。
- 直近1年:2529は下落、TOPIXは小幅上昇
- 直近3年:どちらも上昇、ただしTOPIXの方が強い
- 設定来:約5年で見ると概ね近い水準
金融株を持たない影響
金融株を持たないため、
金融セクターが相場を牽引する局面では不利になる。
一方で、金融が不調な局面では影響が小さくなる可能性もある。
ボラティリティは、
70銘柄分散・大型株中心という点から、
極端に高いとは言いにくい。
2529と高配当ETF(1489・399A・1478)の性格差
さて次は、日本株の高配当ETFとの比較。
2529を見ていると、どうしてもこの辺が気になってくる。
特に、
- 1489(NEXT FUNDS 日経平均高配当株50)
- 1478(iシェアーズ・MSCIジャパン高配当利回りETF)
このあたりは、よく比較対象に挙がる。
いずれも「配当」を重視したETFだが、
2529はそもそも“配当だけを狙う商品ではない”。
まずはその前提を置いたうえで、性格の違いを整理していこう。
1489|「配当利回り」をストレートに狙う王道タイプ
まず1489、これはかなり分かりやすい。
日経平均採用銘柄の中から、予想配当利回りが高い50銘柄で構成される指数に連動する。
つまり、銘柄選定の軸はほぼ一本、「配当利回り」だ。
加えて、金融株も組み入れるため、
メガバンクなど配当が高くなりやすい金融セクターの比率が上がりやすい。
その分、相場環境による影響も受けやすい。
一方で、信託報酬は比較的低く、分配も年4回。
扱いやすさという意味では、かなり優等生だ。
一言でまとめるなら、「配当を取りにいく高配当ETFのど真ん中」。
迷ったらまず名前が挙がるタイプ。
1478|「利回り+配当の質」を重視する堅実タイプ
1478は、少し毛色が変わる。
連動指数はMSCIの高配当利回り指数で、単に利回りが高い銘柄を集めるわけではない。
というのも、
配当の持続性や財務面の健全性といった基準をクリアした企業が
選ばれやすい仕組みになっている。
その結果として、
- 銘柄数は1489・399Aより少なめ
- 「厳選」された印象の構成
になりやすい。
分配は年2回で、利回りは「高配当ETFの中では控えめ」に見える場面もある。
ただしその分、配当の安定感を狙う設計と言える。
2529はどこが違う?|最大の差は「配当+自社株買い」
ここまで見てきたETFは、程度の差はあれ、基本的に配当中心だ。
しかし、2529は発想が少し違う。
① リターンの源泉が違う
- 1489/1478:
→ 主に配当(分配金)がリターンの柱 - 2529:
→ 配当+自社株買い(株価を押し上げる要因)まで含めて評価
そのため、分配金利回りだけを見ると2529は見劣りする場面もある。
ただし、狙っているのはそこじゃない。
2529は、トータルリターンを取りにいく設計だ。
② 銘柄の選び方が違う
次に、銘柄選定の考え方。
- 1489:
→ 予想配当利回りが中心(1年先の“予想”に寄りやすい) - 1478:
→ 配当利回り+財務・配当の持続性 - 2529:
→ 直近3年の総還元(配当+自社株買い)を軸に、増資の影響も考慮
要するに2529は、
「いま高配当かどうか」より、「株主にきちんと返してきた会社か」を見にいく。
ここが思想の違いだ。
③ 金融セクターの扱いが決定的に違う
最後に、見落とされがちだが重要なのがここ。
- 1489/1478:金融を含む
- 2529:金融を除外
金融株が相場を引っ張る局面では、2529はどうしても取り残されやすい。
ただし逆に、
金融ショックのような場面では、
影響を受けにくい可能性もある。
この差は、
パフォーマンスの出方が分かれやすいポイントなので、
読者にもきちんと伝えておきたいところだ。
まとめ|2529は「高配当ETFの代替」ではなく別枠
2529は、高配当ETFと並べられることが多い。
ただ、実態はこうだ。
「配当を最大化するETF」ではなく、
「株主還元を最大化する企業群を買うETF」。
整理すると、こんな感じになる。
- インカム最優先なら:1489
- 配当の質・持続性を重視するなら:1478
- 配当も欲しいが、株価成長も取り込みたいなら:2529
どれが正解という話じゃない。
リターンの柱をどこに置くかが違うだけ。
自分の目的に合うやつを選べばいい。



