新NISAで、株式インデックスだけじゃなく「金も少し持っておきたい」と考えるのは、ごく自然。
ただ、円建ての金(ゴールド)ETFを買うと、値動きは金価格だけで決まらない。
実際には、金価格+ドル円(為替)の影響を同時に受ける。
金を買ったつもりでも、為替にも賭けている――まずはそこを認めておく必要がある。
結論はシンプル。
為替ヘッジは正解探しじゃない。消したいリスクで決めるもの。
この記事では、
① 値動きの仕組みを1分で整理し、
② 424A/425Aをスペックで比べ、
③ 最後は自分に合う選び方まで落とし込む。

円建て金の値動きは「金×為替」(まずはこれだけ)
円建ての金価格は、基本こう。
- 円建て金価格=金のドル建て価格(XAU/USD:金の対ドル相場)× ドル円(USD/JPY)
つまり、
金そのものが上がっても、円高になれば円建てでは伸びにくい。
逆に、金が横ばいでも、円安なら円建て価格は上がる。
円建ての金は、「金 × 為替」の合わせ技だ。
ここで一点だけ補足しておく。
424A/425Aが参照しているのは、金スポット価格そのものではない。
正確には、オーストラリアのASXに上場しているGXLDの終値を指数化したものがベースになっている。
そのため、理論式の
「金スポット × ドル円」
と完全に一致しない場面が出ることがある。これは指数定義の違いによるズレで、金ETFではよくある話だ。
ただ、考え方としてはシンプルでいい。
円建ての金は、基本的に「金価格」と「為替」の両方で動く。
まずはここを腹落ちさせておけば、後の話がスッとつながる。
具体例:金が上がっても、円高で相殺される
具体例で見てみよう。数字はあくまで仮だ。
- 金(ドル建て)が +10%
- ドル円が −10%(円高)
このとき、ヘッジなしの円建てだと、
金が上がっても、円高がブレーキになる。
計算をざっくり書くと、
(1+10%)×(1−10%)−1 ≒ −1%
見た目は「ほぼ相殺」だけど、実際にはわずかにマイナスになる。
細かい計算は気にしなくていいが、「完全には打ち消されない」点は押さえておきたい。
一方、為替ヘッジありの場合。
為替の影響はおおむね消されるので、値動きは金そのものに近づく。
このケースなら、結果は金の+10%に寄る。
(※ヘッジコストは別途かかる)
ここが腹落ちしないと、
「なぜ金が上がってるのに成績が伸びない?」って混乱しやすい。
まずは、円建て=金×為替。
この感覚だけ、しっかり押さえておこう。
為替ヘッジで「消しにいくもの」と「残るもの」
為替ヘッジありの金ETFがやっていることは、難しく考えなくていい。
狙って消しにいくのは「ドル円のブレ」、ただそれだけ。
将来の為替レートをあらかじめ固定する取引(フォワード)を使って、
円高・円安による上下をできるだけ打ち消す。
その結果、円建ての値動きは「金そのもの」に近づく。
ただし重要なのは、ドル円が完全に消えるわけじゃないって点。
ヘッジは月次で更新されるし、指数の作りにも差がある。
だから実際には、為替の影響は「ほぼ消えるが、わずかに残る」。
一方で、確実に残るものもある。
それが、
- 金そのものの価格変動
- 為替ヘッジを維持するためのコスト(ヘッジ損益)
特に後者は見えにくい。
米金利が高く、円金利が低い局面では、
このヘッジコストが年率数%分、リターンを削ることもある。
つまり、為替ヘッジとは
「為替リスクを消す代わりに、ヘッジコストを引き受ける選択」なんだ。
ここを押さえておけば、
「なぜ金が上がっているのに成績が伸びないのか」
「なぜヘッジありとなしで結果がズレるのか」
このあたりは全部つながって見えてくる。
424A(為替ヘッジあり)と425A(為替ヘッジなし)
比較は“気分”じゃなく、スペックでやる
東証に上場している「グローバルX ゴールドETF」には、次の2本がある。
- 424A:為替ヘッジあり
- 425A:為替ヘッジなし
仕組みの話や理屈も大事だけど、
読者が本当に知りたいのは「で、どっちを選ぶのか」って点だろう。
ここから先は、
為替の好みや気分論じゃなく、スペックと使いどころで整理していく。
金そのものを取りに行くのか、円安・円高も含めて持つのか。
選択は、その違いだけで決まるって話。
スペック比較(公式ページ/JPX(日本取引所グループ)資料に基づく)
| 比較ポイント | 424A(ヘッジあり) | 425A(ヘッジなし) | ここが判断材料 |
|---|---|---|---|
| 対象指数(正式名称) | Mirae Asset Gold Bullion ETF Hedged Index | Mirae Asset Gold Bullion ETF Index(円換算ベース) | 424Aはヘッジ込みの指数を追う |
| インデックスティッカー | MAGOLDJH Index | MAGOLDAU Index | まずはここで裏取りできる |
| 実質コストの見え方 | 信託報酬(実質)+ヘッジ損益(基準価額に織り込み) | 信託報酬(実質)が中心(為替は値動きにそのまま乗る) | 424Aは「コストが別で動く」 |
| 運用管理費用(実質) | 0.1775%程度 | 0.1775%程度 | 実質を見る(投資対象ファンド分を含む) |
| 決算日 | 毎年3月10日・9月10日 | 毎年3月10日・9月10日 | 分配は年2回が基本。ただし0円の場合もある |
| 売買単位 | 10口 | 10口 | 少額テストのしやすさに効く |
「指数」って何を見てる?
さっきはXAU/USD(金の対ドル相場)と書いたが、
424A/425Aが直接見ているのは金スポットそのものじゃない。
参照しているのは、ASXに上場している
Global X Gold Bullion ETF(GXLD)の終値をベースに算出される指数だ。
整理すると、こうなる。
- 425A:GXLDの日々の終値を指数化(ベース通貨はAUD)。それを円換算して使用
- 424A:上記のAUD建て指数に、USD/JPYの1カ月フォワードによるヘッジ損益(MTM)を組み合わせる
だから、ここは割り切っておきたい。
- 金現物価格と完全一致しない可能性がある
(GXLDと金現物の乖離リスクが残る)
なお、この点はJPXのETF概要資料でも明記されていて、
原資産ETF(GXLD)が金現物価格と乖離し得ることが示されている。
指数も同様に乖離しうる、という理解で問題ない。
要するに、
424A/425Aは「金そのもの」を直接トレースしているわけじゃない。
GXLDを介した金エクスポージャー(※金を直接見ているのではなく、金を持っているETFの値動きを元にしている)だと認識しておけば、あとで混乱しにくい。
消したいリスクで決める(最終判断)
ここからが本題だ。
似た説明をいくら並べても決めきれないなら、「どのリスクを消したいか」で考える。
円安になったとき、その動きも利益や防衛として取り込みたいなら、
為替ヘッジなしの 425A がしっくりくる。
一方、短期(目安は2年くらい)で値動きのブレを抑えたい、
あるいは金そのものの動きだけを取りたいなら、
為替ヘッジありの 424A が合いやすい。
資産の大半が日本株や円預金など円資産に偏っているなら、
通貨分散の意味でも425Aが効いてくる。
どうしても迷うなら、半分ずつ持つのもアリ。
ただし金の比率は入れすぎない。目安は5〜10%、多くても十数%まで。
新NISAは枠が限られる。金は主役じゃない。静かに効かせる脇役くらいがちょうどいい。
買う前チェックリスト
読者がやることは、実はこれだけだ。
まず一次情報を確認し、次に為替ヘッジの影響を押さえ、最後に取引のクセを見る。順番もこの通りでいい。
まずは、Global X Japanの公式ページで一次情報を引く。
各銘柄ページの下にある「ドキュメント」から、交付目論見書・月次レポート(ファクトシート)・請求目論見書を開き、
指数名(正式名称とティッカー)、実質の運用管理費用、決算日(毎年3月10日・9月10日)と分配方針、為替ヘッジ取引の方法と損益の扱いを確認する。
あわせて、JPXのETF概要資料も見て、原資産ETF(GXLD)と指数の説明、乖離し得る点の記載に目を通しておくと安心だ。
次に、為替ヘッジあり(424A)の影響を把握する。
信託報酬とは別に、ヘッジ損益(MTM)が基準価額に織り込まれ、実質リターンに効いてくる。局面によってはコストにも利益にもなる点を理解しておきたい。
月次レポートでは、対象指数との騰落率比較、実質の運用管理費用の記載を見て、指数に対してどれくらいズレているかを淡々と確認すれば十分だ。
最後に、取引面のチェック。
スプレッド(売買の差)、市場価格と基準価額の乖離、iNAV(推定純資産価額)を確認する。
ここまで押さえれば、余計な迷いはかなり減る。
まとめ:424A/425Aは「何を消したいか」で決まる
結論はシンプル。
為替をノイズ扱いにして、金の動きだけを取りたいなら
424A(為替ヘッジあり)。
円安も含めて取り込みたい/通貨分散を効かせたいなら
425A(為替ヘッジなし)。
そして、ここだけは忘れない。
424Aは、信託報酬とは別にヘッジ損益(実質コスト)が基準価額に乗る。
425Aは、為替の動きがそのままリターンを左右する。
材料は揃えた。
あとは、淡々と選ぶだけ。



