ETFって、銘柄数が多いほど「分散できてそう」に見える。
でも実際は、セクター比率が偏った瞬間に中身は集中投資寄りになる。
この記事では、ETFのファクトシートを使って分散の質をチェックする手順を整理する。
S&P500や全世界株式がどこで似てしまうか、高配当ETFなどでどう補完するかまで、初心者が迷いにくい順でまとめていく。

結論 セクター比率を見ない分散は危うい
結論だけ先に言うと、ETFの分散は銘柄数だけで判断しない方が安全。
理由はシンプルで、指数は時価総額が大きい企業ほど比率が上がりやすく、特定のセクターの比重が大きくなりやすいから。
たとえばS&P500は約500社に投資する。
それでも、上位企業と上位セクターの動きが指数全体を左右する場面は普通にある。
セクター比率とは 何が分かる指標か
セクター比率は、ETFの中身を産業別に分けた構成比のこと。
情報技術、金融、ヘルスケアみたいに、企業を産業カテゴリで分類して、その割合を出す。
セクター比率で見えることは、だいたい3つ。
1つ目は、リターンの源泉。
上位セクターが強い局面ならETFも上がりやすい。逆も同じで、上位セクターが沈むとETF全体が重くなる。
2つ目は、苦手な相場。
金利上昇に弱いセクターが多いのか、景気後退に強いセクターを抱えてるのか。ここで下落局面の耐性が変わる。
3つ目は、分散の質。
銘柄が多くても、同じタイプの企業が集まっていれば分散とは言いにくい。
たとえばテックが多いと、金利や規制の影響をまとめて食らいやすい。見た目は分散、中身は同時ダメージ。そういうやつ。
時価総額加重が偏りを作る理由
多くの株式インデックスは時価総額加重。
時価総額(会社の規模=株価×株数)が大きい企業ほど、構成比が高くなる仕組み。
この方式自体はわりと合理的でもある。
市場で高く評価されている企業の比率が自然に上がるし、指数の入れ替えも少なくて売買コスト(買ったり売ったりの手間と費用)を抑えやすい。
ただ、副作用もちゃんとある。
ここだけ押さえる
時価総額加重は「上がったものが、指数の中でもどんどん大きくなる」仕組み。だから偏りが育つ。
ブームになった産業は株価が上がる。
すると、その産業の企業の時価総額が膨らむ。
結果として、その産業の比率が指数の中でじわじわ増える。
見た目は銘柄数が多くて分散っぽいのに、中身は人気セクター寄りになりやすい。
逆回転すると、下落の影響もまとめて大きくなりがち。
つまり、指数は「勝っているものを増やす」ので、勝ちが続く局面では強い。
その代わり、偏りが溜まった状態で反転すると痛い。
この状態を避けるには、いきなり商品選びに入らないほうがいい。
まず「今どこに寄ってるか」を見える化するのが先。
そのための道具がセクター比率(業種の配分)。
GICSの基本 セクター分類の見取り図
ETFのセクター比率を読むなら、分類ルールを軽く押さえておくと話が早い。
世界でよく使われる基準が GICS。指数会社やETF運用会社の共通言語だと思えばイメージしやすい。
GICSは企業を4階層で分類する
GICSは企業を次の4つで段階的に分ける。
- セクター
- 産業グループ
- 産業
- 産業サブグループ
投資家が普段見るのは、基本的に一番上の「セクター」。
セクターは 11分類で、ETFのファクトシートもこの形で出てくることが多い。
初心者がつまずきやすい点:分類は「製品名」だけで決まらない
まず押さえておきたいのはここ。
企業の分類は、直感どおりに「何を作ってる会社か」だけで決まるとは限らない。
- どこで稼いでいるか(収益源)
- 市場がどう見ているか(ビジネスの性格)
こういう要素が効く。
なので「え、そこに入るの?」みたいなズレが出ることがある。
変な分類というより、ルールの結果。ここで悩み始めると進まない。
セクターの性格は「暗記」より3つの軸で十分
細かい暗記は不要。
代わりに「どう動きやすいか」の軸だけ持っておくと、ETFの中身が読みやすくなる。
見る軸はこの3つ。
- 景気に強い/弱い
- 金利(お金を借りるコスト)に強い/弱い
- インフレに強い/弱い
この3軸で眺めると、セクター比率がただの数字じゃなくなる。
「このETF、景気が悪いときにやられやすそうだな」みたいに、リスクの形が見えてくる。
S&P500の実態 テック集中をどう読むか
S&P500は米国大型株の代表指数。
ただ、セクター比率(業種の配分)で見ると、特定セクターの影響が強く出やすい局面がある。
設計上そうなりやすい。
意識したいのは「情報技術が膨らみやすい」こと
とくに見たいのは、情報技術(いわゆるIT・テック系)の比率が上がりやすい点。
時価総額加重なので、上がった企業・大きい企業が、そのまま比率を押し上げる。
さらにややこしいのはこれ。
分類上は情報技術じゃないのに、値動きはテック寄りの企業も混ざる。
- 一般消費財(生活必需品ではない消費系)にいる巨大企業
- コミュニケーション・サービス(通信・メディア・ネット系)にいる巨大企業
セクター名だけ見て「テックそんなに多くないな」と判断すると、ここでズレる。
ここだけ押さえる
S&P500のテック感は、情報技術セクターだけでは測れない。
実務の見方はこれで十分
見方はシンプルに2本立てでいい。
- 最大セクターが30%前後なら、そのセクターの調子がETFの調子になりやすい
- 広義のテック関連が40%超なら、金利(お金を借りるコスト)や規制の影響がポートフォリオ全体に効きやすい
「広義のテック関連」は、情報技術に加えて、テックっぽい値動きをする巨大企業群も含めたイメージ。
ここを合算して眺めると、体感に近いリスクが見える。
全世界株式の盲点 米国比率とセクターの重なり
全世界株式って、地域分散のイメージが強い。
でも国別構成で米国比率が大きいと、結局セクター構造も米国に引っ張られる。
その結果、S&P500と全世界株式はセクター面で似てきやすい。
「全世界に変えたから、テックの下落に強くなる」とは限らない、ということ。
もちろん欧州や新興国が入る分だけ、金融や素材みたいな比率が少し増える傾向はある。
それでも、上位セクターが重なるなら、リスク要因もだいたい重なる。
地域が広がっても、セクターの上位が同じなら、値動きの原因も似やすい。
チェックポイントはひとつだけ
ここでの実務チェックはシンプル。
同時に持っているETFのセクター比率を合算して見る。
- S&P500
- 全世界株式
- ついでに高配当やNASDAQ系なども(持ってるなら)
商品名が違っても、中身のリスクが同じなら分散の効果は薄くなる。
「分けたつもり」が一番危ない。
合算して見ると、分散の効きがハッキリする
セクター比率を合算すると、こういうことが分かる。
- テック(広義)が想像以上に大きい
- 逆にヘルスケアや生活必需品が薄い
- 金融やエネルギーがほぼ入ってない
- 地域分散のつもりが米国大型株の上乗せになってる
このズレに早めに気づけるだけで、ETFの組み合わせはだいぶ安定する。
高配当ETFは補完になる VYMとHDVの違い
S&P500や全世界株式の偏りを薄める手として、高配当ETFを使う方法がある。
高配当ETFは「配当が高い銘柄を集める」設計なので、そもそも選び方が違う。だからセクター構成も変わりやすい。
代表例として、性格の違う2つを整理しておく。
VYMのような幅広い高配当
VYMは、銘柄数が多めで分散寄り。
そのぶん、金融や資本財あたりが厚くなりやすい。
テック比率が下がりやすいので、S&P500や全世界株式のテック濃度を薄める用途で使いやすい。
補完役として素直。
HDVのような厳選型高配当
HDVは、銘柄数が少なめで厳選寄り。
そのぶん、エネルギーやディフェンシブ(景気に左右されにくい業種)が厚くなりやすい。
インフレ局面のヘッジになりやすい一方で、原油価格の影響を受けやすい。
つまり「落ち着きやすい面」と「特定要因でブレる面」が同居する。
利回りだけで選ぶと、別の偏りを抱えやすい
ここで大事なのは、利回り(今の値段に対する受け取り割合)だけで選ばないこと。
高配当は高配当で、セクターの偏りを持つ場合がある。
補完として使うなら、順番は逆にしないほうがいい。
- どのセクターを増やしたいのかを先に決める
- その目的に近い高配当ETFを当てる
この順にすると安全。
逆に「利回りが高いから」で入ると、結局また別の偏りを抱えがちだ。
GICS定義変更で過去データがズレる注意点
セクター分析で地味に見落とされがちなのが、分類定義の変更。
セクターは固定じゃない。経済の変化に合わせて見直される。
実務で困るのはここ。
過去のセクターリターンを見たときに、当時と今で中身が違うケースがある。
セクターETF同士の比較や、セクター比率の見比べで、昔の数字をそのまま信じるとズレが出る。
数字は同じ「セクター名」でも、入ってる企業が違えば意味も変わる。
セクターの過去データは「同じ箱の成績」に見えて、箱そのものが入れ替わってることがある。
対策はこの3つで十分
- セクターの過去データを見るときは、現在の区分で再計算されているかを確認する
- 「今の定義で過去も作り直したデータ」なのか、「当時の定義のまま」なのかで、解釈が変わる。
- 変更があった年をまたぐ比較は、結論を強く言いすぎない
- 「セクターが弱くなった/強くなった」と言い切る前に、構成の変化が原因じゃないかを疑う。
- ETFの中身は、まずファクトシートで 「いまの構成」を優先する
- 過去の理屈より、今そのETFが何を抱えているかが先。
セクター分析って、数字がきれいに見える分、つい信じたくなる。
でも分類が動く以上、過去データは「前提条件つき」だと思って扱うのが無難。
実務 ファクトシートで見る3つの診断手順
ここからが実務パート。
セクター比率は、難しい分析をしなくてもチェックできる。
一次情報さえ見れば十分。
余計な推測より、まず「いまの中身」を確認するほうが事故が減る。
一次情報の取り方
ETFなら、基本は運用会社の公式ページを見る。
商品ページで探すのはこのへん。
- 構成銘柄
- 組入上位(トップ10など)
- セクター別構成比
ファクトシートのPDFがあるなら、見る場所はシンプル。
「セクター別構成比」の表か円グラフを見ればいい。
国内の投資信託なら、運用会社サイトの月次レポートが一次情報になる。
「業種別構成比」の図表が載っていることが多い。
診断手順1 最大セクターの比重を見る
まずは最大セクターの比率を見る。ここが出発点。
一番大きいセクターが、そのETFのクセになりやすい。
目安
- 最大セクターが25%を超えると、そのセクターの影響が強くなりやすい
- 30%を超えると、値動きがかなり左右されやすい
偏っていても、それを狙っているなら問題ない。
問題は、気づかずに集中しているケース。だいたいここで事故る。
最大セクター=そのETFの主役。主役が強すぎると、相場の見え方も偏る。
診断手順2 上位3セクターの合計を見る
次に、上位3セクターの合計。
ここはETFの性格が出るところ。
目安
- 上位3セクター合計が60%を超えると、値動きの原因が偏りやすい
- 70%を超えると、実質テーマ型に近い動きになる場合がある
上位3が似た性格だと、集中はさらに強まる。
たとえば成長株寄りのセクターが固まると、金利(お金を借りるコスト)上昇局面に弱くなりやすい。
診断手順3 ディフェンシブの有無を見る
最後に、守りのセクターがどれだけあるかを見る。
代表どころはこの3つ。
- ヘルスケア
- 生活必需品
- 公益事業
ここが薄いと、下落時のクッションが効きにくい。
目安
- この3つの合計が20%前後あると、下落局面で耐性が出やすい
- 10%を切ると、守りがほぼない設計になりやすい
もちろん、守りが少ない方が上げ相場で伸びることもある。
なので結論は「良し悪し」じゃなくて、自分がその設計を選んでるかの確認。
まとめ まず自分のETFを1回X線検査する
ETFの分散は、銘柄数より「リスク要因」で見た方が安全。
セクター比率を見ると、自分の投資がどの産業に寄っているかが一目で分かる。
今日やることは3つだけで十分。
- 保有ETFのファクトシートを開いて、セクター比率を確認する
- 最大セクター、上位3セクター、守りのセクター合計を見る
- 偏りが気になるなら、高配当ETFやセクターETFで補完の方向性を決める
投資に絶対の正解はない。
ただ、「自分が何に投資しているか」を把握するのは、どんな戦略にも共通する土台だ。
セクター比率のチェックを習慣にしておくと、相場のニュースにも振り回されにくくなる。
まずは一回、自分のETFをX線検査。今日はこのくらいで。
公式一次情報を取りに行くためのリンク集はここ




