40代になると、投資の失敗を取り戻す時間が短くなる。
だからこそ高配当ETFは、利回り(=今の値段に対する受け取り割合)より先に見る項目がある。
順番を間違えると、減配や繰上償還で「非課税枠までムダ」になりかねない。
この記事は「新NISAで長期保有」を前提に、地雷を避ける確認手順をまとめる。

結論|利回りは最後に見るだけでいい
高配当ETF選びは、利回りを最初に見ると事故りやすい。
利回りは「株価が下がった結果、見かけ上だけ上がる」こともある。
減配リスクや財務不安がある銘柄が混ざっていると、利回りの高さはむしろ警告になる。
だからおすすめの順番は、こう。
- 指数ルール
- 税金
- 実質コストと指数とのズレ
- 流動性と繰上償還リスク
- ここまで通過した候補の中で利回りを見る
利回りは「合格した候補の比較項目」。
40代が高配当ETFと相性がいい理由
20代や30代は、給料での巻き返しが効く。
値上がり益を狙う戦略も取りやすい。
一方で40代は、教育費や住宅ローンなどの固定費が重なりやすい。
老後までの残り年数も、だんだん現実味が出てくる。
この局面では、配当のような「現金の入り」があると計画が立てやすい。
ただし、高配当なら何でもいいわけじゃない。長期で持てる設計かどうかを先に確認する。
指数ルールで決まる|ETFの性格と減配リスク
ETFの中身は、連動先のインデックスでほぼ決まる。
インデックス(=ルールで作った成績表)は「どういう銘柄を入れて、どう入れ替えるか」のルール集だ。
ここが甘いと、「高利回りに見えるけど危ない銘柄」が入りやすい。
見るポイントはこの4つ。
- 赤字企業を外すルールがあるか
- 配当性向(=利益のうち配当に回す割合)が高すぎる企業を外すルールがあるか
- 減配しがちな企業を外すルールがあるか
- 特定セクターに偏りすぎない仕組みがあるか
指数ルールの一次情報(方法論)は、提供会社のページが一番早い。
例:MSCIの高配当指数の方法論 → MSCI:High Dividend Yield Indexes Methodology(PDF)
MSCI系の高配当指数は品質フィルターが厚いことが多い
MSCI High Dividend Yield Indexのような設計は、高利回りだけで集めない。
配当の持続性を見て、無理して配当を出している企業を外す思想が入っている。
結果として、爆発的な利回りは狙いにくい。
その代わり、致命傷を避けやすい傾向がある。
初心者が確認しやすい見どころはこのあたり。
- REITを外すかどうか
- 配当性向が極端に高い企業を外すか
- 過去数年で配当が減っていないかを条件にするか
- 入れ替えが激しすぎないように緩衝(バッファ)ルールがあるか
S&P 500 Quality High Dividend Indexのような複合型はクセがある
S&P系には、配当と品質を同時に見る指数がある。
たとえばROE(=ざっくり「資本をどれだけ効率よく増やしたか」)や財務健全性などで、弱い銘柄を落とす。
ただし均等加重の指数は、時価総額加重より値動き(ボラティリティ=値動きの大きさ)が大きくなる場面もある。
小さめの銘柄の影響が増えるからだ。
日本株は指数ごとの実務設計の差が大きい
国内の高配当指数は、投資家の使い方を意識したルールが入っているものがある。
野村日本株高配当70は、過去3年で赤字がないことを条件にするなど、減配や無配の回避を強く意識した設計だ。
決算期を絞るなど、分配の出し方を整える工夫もある。
野村ファイナンシャル・リサーチ:野村日本株高配当70 ルールブック(PDF)
日経平均高配当株50は、母集団が日経225で大型中心。
流動性や知名度の面で安心感はある一方、幅広い銘柄から拾う力は相対的に弱くなりやすい。
税金|新NISAで起きる二重課税と取り戻せない損
新NISAの魅力は、国内の税金がかからないこと。
ただし米国ETFなど「海外配当」には落とし穴がある。
米国ETFの配当は米国で先に課税される
日本に住む人が米国ETFの配当を受け取ると、米国で税が引かれる。
通常は日米租税条約で10%が源泉徴収される。
課税口座なら、確定申告で外国税額控除を使える場合がある。
でもNISAは国内課税がゼロなので、外国税額控除が使えない。結果として「米国で引かれた分は戻らない」ことが多い。
10%の漏れは長期では差になる
例として、1,200万円を配当再投資で20年運用すると仮定する。
株価変動は無視して配当だけで比較する。
- 税の漏れがない利回り4.0%相当 → 20年後はおよそ2,629万円
- 米国課税10%で利回り3.6%相当 → 20年後はおよそ2,434万円
差はおよそ195万円。
増配や値上がりが強い銘柄なら埋められる可能性はあるが、「利回りだけが高い米国高配当ETF」をNISAに入れるなら、このハンデは先に織り込んでおくと判断がぶれにくい。
国内ETFでも配当の受取設定を間違えると課税される
NISAで国内株や国内ETFの配当・分配金を非課税で受け取るなら、基本は株式数比例配分方式(=配当を証券口座で受け取る方法)。
これ以外(銀行振込など)だと、NISAでも課税扱いになるケースがある。
一次情報は日本証券業協会が分かりやすい。
- 受け取り方法の全体像(4方式)→ 日本証券業協会:配当金の受取り方(4つの方法)
- NISA口座での注意点 → 日本証券業協会:NISA口座の配当金受取方式に関する注意
証券会社側の実務ページも、設定確認の導線が載っていて便利。例:
注意点として、複数の証券会社を使っている人は設定が連動することがある。
どこかで受取方法を変えると、全体が同じ設定に揃うことがある。ETFを買う前に、各社の設定画面は必ず確認しておく。
コスト|信託報酬より実質コストと乖離を確認する
信託報酬が低いETFは魅力的に見える。
ただETFのコストは信託報酬だけじゃない。売買委託手数料、保管費用、監査費用など、運用で発生するコストが追加で差し引かれる。
実質コストは「運用会社が出す資料」で確定する
実質コストを見たいなら、運用会社の公式サイトから資料を開く。
投資信託なら「運用報告書(全体版)」の費用明細がいちばん確実。
- 例(運用報告書が並んでいるページ):野村アセットマネジメント:運用報告書(全体版)一覧(例)
- 例(ファンドページに運用報告書がまとまっている):三菱UFJアセットマネジメント:ファンド情報(例)
計算イメージはこう。
実質コスト率 = 費用合計 ÷ 期中平均基準価額 × 365 ÷ 計算期間日数
信託報酬と実質コストの差が大きいETFは、見えないコストが重い可能性がある。
長期保有だとジワジワ効くので、ここは雑に飛ばさない方がいい。
※補足:国内ETFは「運用報告書が作成されない」タイプもある。
その場合は、決算短信や有価証券報告書などの開示資料で費用を見る(ETFのタイプで出方が違う)。
指数とのズレが大きいETFは運用品質を疑う
確認したいのは2つ。
- トラッキングディファレンス:指数と比べた成績の差(マイナスが続くと、静かに負ける)
- トラッキングエラー:ズレのブレ幅(大きいと成績が安定しにくい)
信託報酬が低いのに指数に大きく負けるなら、現金の滞留や運用方法の問題があるかもしれない。
売買が少ない指数でもズレが大きいなら、慎重に見直したい。
流動性|AUMとスプレッドで繰上償還を避ける
長期で持つつもりでも、出口の品質は大事。
流動性が低いETFは、買う時点でコストを払っていることがある。さらに怖いのが繰上償還(=途中で運用終了して強制的に現金化)だ。
JPXの一次情報はここが便利。
- ETFの銘柄情報(基準価額・純資産総額などの入口)→ JPX:銘柄一覧(ETF)
AUMが小さいETFは繰上償還リスクが上がる
純資産総額(AUM=そのETFに集まっている資金の合計)は、生存力の目安になる。
一般論として、小さすぎるETFは運用会社にとって採算が取りにくい。
目安はこう考えると整理しやすい。
- 10億円を下回る水準が続くと不安が増える
- 30億円を超えると流動性が安定しやすい
- 100億円を超えると安心感が増えやすい
NISAで繰上償還されると強制的に現金化される。
非課税枠は使った年に消費されるので、長期運用の計画が崩れやすい。40代のコア資産なら、ある程度大きいETFを選ぶ発想が安全寄り。
スプレッドは売買コストとして効く
スプレッドは買値と売値の差。つまり実質的な売買コストだ。
板が薄いETFほど広がりやすいので、基本は指値が無難。
JPXはETFのスプレッド等を日次で公表している。
iNAVとプレミアム/ディスカウントも確認する
ETFには基準価額と市場価格がある。
取引時間中は推計値としてiNAVが表示される(=だいたいの理論価格)。
- 市場価格がiNAVより高い → 割高で買いやすい(プレミアム)
- 市場価格がiNAVより低い → 安く売らされやすい(ディスカウント)
(iNAVの参照先)はJPX。
対策はシンプル。iNAVを見ながら指値で置く。薄いETFほど成行は避ける。
これだけで事故は減る。
分配金の中身|ETFで見ておきたい健全性の目安
高配当と聞くと、元本取り崩しの分配を心配する人もいる。
ETFは一般的な追加型投資信託と違い、分配のルールが異なる点がある。
ETFの分配はインカム由来になりやすい
日本のETFは、決算期間中に受け取った配当や利子などの収益から経費を引いた範囲で分配しやすい。
投資信託のように、分配を一定にするための平準化は効きにくい。
景気後退で企業の配当が落ちれば、ETFの分配も落ちやすい。
だから最初から「分配は上下する前提」で、無理のない利回りを選ぶ方が続きやすい。
実践|5ステップで絞るスクリーニング手順
ここからは、買う前にやることを順番に落とす。
利回りは最後に見る。
1|税効率で入れる場所を決める
- NISAに入れるなら、国内高配当ETFは税の漏れが少ない
- 米国高配当ETFは米国税の漏れがあるので、増配や成長の見込みも含めて考える
2|インデックスの除外基準を確認する
目論見書や指数概要で、赤字除外、配当の持続性、財務クオリティなどの条件があるかを見る。
利回りだけで並べる設計なら慎重に。
(指数ルールの一次情報:MSCI / S&P / 日経 / 野村のリンクは上のセクションにまとめて置いた)
3|生存能力をチェックする
- 純資産総額(AUM)が十分か
- 売買代金が細すぎないか(JPXの統計も参考になる)→ JPX:売買高・売買代金(ETF)
- スプレッドが広すぎないか → JPX:ETF気配提示・取引状況
4|実質コストと指数とのズレを確認する
- 運用会社の公式ページで実質コストを確認(運用報告書など)
- 指数に対して恒常的に負けていないかを見る
5|最後に利回りを見る
ここまで通過した候補の中で比較する。
目安としては3〜4%前後で十分戦えることが多い。
5〜6%を超える水準が出ている場合は、市場が減配や不安材料を織り込んでいる可能性を疑う。
利回りは「ご褒美」じゃなくて「最終チェック」。
よくある質問|株式数比例配分方式と指値の基本
Q:NISAで配当が課税されるのはどんな時?
A:受取方法が株式数比例配分方式になっていない場合に起きやすい。 日本証券業協会:NISA口座の配当金受取方式に関する注意
Q:高配当ETFは分配がずっと一定?
A:一定とは限らない。企業の配当が減ればETFの分配も減りやすい。分配が上下する前提で、生活費に直結させすぎない運用が安全。
Q:成行注文はなぜ避けた方がいい?
A:板が薄いETFは、思わぬ価格で約定しやすいから。iNAVを見ながら指値で置く方が、スプレッド負けを減らしやすい。一次情報の参照先はJPX。→ JPX:インディカティブNAV(ETF)
まとめ|40代は「守りながら増やす設計」が勝ちやすい
40代の投資で怖いのは焦り。
焦るほど高利回りに飛びつきやすい。
でも長期では、派手さより「生き残る設計」が効く。
指数ルールが堅いか。税の漏れがないか。実質コストとズレが小さいか。流動性が十分で繰上償還が遠いか。
ここまで確認してから利回りを見る。





