セクターETFは指数に連動するパッケージ商品に見える。
指数連動なら中身は決まっていそうだし、ETFは株みたいに板で売れる。だから「米国と同じノリでいける」と思いやすい。
でも国内で同じことをやると、詰まるポイントが2つ出る。
1つ目。
同じセクター名でも、中身が米国と同じとは限らない。
つまり「金融」と書いてあっても、入ってる銘柄の顔ぶれや偏りが違うことがある。
2つ目。
売買コストとズレが、思ったより効く瞬間がある。
売買コストはスプレッド(買値と売値の差。入場料みたいなもの)。
ズレは乖離(市場価格が中身の値段からズレること)。
国内はここが露骨に出る場面がある。
この記事でやることはこれだけ。
国内セクターETFを、米国の縮小版として扱わない。
その代わりに、次の2つを手順にする。
- 何を買っているか:セクター名じゃなく、指数ルールで確定する
- いつ損しやすいか:板とiNAVで、スプレッドと乖離を見て避ける
ここだけ押さえる。
国内セクターETFは、セクター名で判断すると事故る。指数ルールと板の状態で勝負が決まる。
なぜこの仕組み/ルールが存在するのか
セクターETFとセクター指数がある理由は1つ。
「セクター」というふわっとした言葉を、誰が見ても同じ意味になるルールに固定するため。
ルールがないと、だいたい3つ壊れる。
再現性がなくなる
「金融が強い」と言っても、人によって想像する銘柄がバラバラになる。
この状態だと、検証も比較もできない。会話も噛み合わない。
だから指数は、金融なら金融で「この範囲」と決める。
同じ言葉が、同じ中身を指すようになる。
公平性が崩れる
曖昧さが残ると、都合のいい銘柄だけ混ぜる余地が生まれる。
それを「指数連動」と呼んだ瞬間、看板倒れになる。
一方で指数は、採用ルールを文章で公開する。
恣意性が入りにくくなる。つまり、公平性を担保する仕組みでもある。
運用できないと商品にならない
定義があっても、実際に売買できないなら商品として終わる。
作れない・追えない指数は意味がない。
だから指数提供者は、ルールを細部まで固定する。
セクターの切り方、採用銘柄、比率(ウェイト)、入れ替え条件まで決める。
日本だとTOPIX銘柄を業種分類して、33業種やTOPIX-17として整理している。
TOPIX-17は、33業種を17にまとめた版。
指数も価格だけを見る版に加えて、配当込み(トータルリターン)も用意される。
さらにリアルタイムで数値が配信される。ここまで揃って、セクターが金融商品として扱える形になる。
ETF側は「価格を寄せる」問題を抱える
ETFには、もう1段むずい問題がある。
指数に連動する基準価額(NAV)に近い価格で、取引所で売買できるようにする問題。
ここは重要で、勝手にそうはならない。
裁定(ETFと現物を入れ替えてズレを埋める動き)が弱いと、ETF価格はNAVからズレやすい。
マーケットメイク(板に気配を出して売買を成立させる役)が薄いと、スプレッド(売買の入場料)も広がりやすい。
取引所が制度で支える
だから取引所は、マーケットメイカー制度を用意する。
一定時間は気配を出す、スプレッドはこの範囲で頑張る、数量もこれくらい出す。そんな条件を課す。
その代わりに、参加者にインセンティブを渡す。
売買が止まりにくい市場を作って、ETFが「取引できる商品」として回るようにしている。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
核心はシンプル。
国内セクターETFは、米国と同じ感覚で売買するとコストで負けやすい。
理由は2つだけ。
- セクターの中身(指数)が違う
- 板(流動性)の強さが違う
この2つが、そのままスプレッドと価格のズレ(乖離)に出る。
① 指数が違う=中身が違う
指数は「何を買っているか」を決める設計図。
ここでつまずきやすい。
名前が同じでも、中身は同じとは限らない。
日本はTOPIX-17や33業種の分類。
米国は別の分類を使う。
だから同じ「金融」でも、入っている会社のタイプや比率が変わる。
その結果、金利ニュースへの反応もズレる。
つまり、米国の感覚をそのまま当てはめると外れる。
② 板が違う=値段がズレやすい
もう1つは流動性。
「その値段で、今すぐ売買できるか」という力。
ETFは分散されている。
しかし、分散=流動性が高い、ではない。
板が薄いと、次のことが起きやすい。
- 買値と売値の差(スプレッド)が広がる
- NAVから価格がズレやすくなる
とくに荒れている場面では、この差が一気に広がる。
スプレッドは毎回払うコスト
スプレッドは、買値と売値の差。
売買するたびに払う入場料。
市場が薄いほど、この入場料は高くなる。
しかも状況によって変わる。いつも同じではない。
iNAVがあっても安心ではない
iNAVは「今の中身の推定価格」。
割高か割安かを見る目安になる。
ただし、ズレが必ず消えるわけではない。
裁定にはコストがかかるし、板も必要。条件が悪いと動けない。
だからズレは残ることがある。
実際の市場シーンで考える
平日の後場が始まった直後。
「国内REIT/不動産に寄せたい」と思った個人投資家が、TOPIX-17不動産に連動するETF(例:1633)を成行で買う。
その日は米国金利のニュースが動いていて、SNSでも「ディフェンシブ買い」みたいな雑な話が流れている。
ここで最初に見るべきは相場観じゃない。
板。
板が薄いと、テーマより約定で負ける
板を見ると、出来高が薄い。気配も飛び飛び。
この状況だと勝負は、テーマの当たり外れより約定の条件で決まる。
成行を入れると、どうなるか。
目の前のAsk(売り気配)を上から食っていく。
結果として、思っていたより高い値段で買わされる。
買ったあとにiNAVを見ると、だいたい手遅れ
買ったあとにiNAVを見る。
すると「理論値より上で買ってた」=プレミアムで掴んでたことに気づく。
ただ、ここで気づいても遅い。もう約定している。
ETFは株と同じ。
指数の理論値で売買してるわけじゃない。
その瞬間の板の値段で売買している。
この場面でありがちなミスは2つ
ミス① ズレを相場観のミスだと思って、即損切りする
乖離を「読みが外れた」と勘違いして、すぐ売る。
しかも今度はBid(買い気配)にぶつける。
これで、スプレッド(入場料)を往復で2回払う。
負けの原因が相場じゃなく、売買コストになる。
ミス② ズレを無視して「そのうち戻る」で放置する
「いつか戻る」で何もしない。
すると次に市場が荒れたとき、同じことが起きる。
板が薄い瞬間に当たるたび、
スプレッドと乖離でじわじわ削られる。
やるべきは相場観の反省じゃない
やるべきことはシンプル。
- iNAVを見る(いま割高か割安かを確認する)
- スプレッドを見る(入場料が高い場面を避ける)
- 注文の出し方を変える(成行を避ける/指値にする)
- タイミングをずらす(板が落ち着く瞬間を選ぶ)
相場の読みを当てる前に、まず約定で負けない。
これだけで、損益が目に見えてマシになる局面がある。
この理解がもたらす判断力
買う前に中身を確定する。買うときに板で負けない。
これでだいたい事故が減る。
セクター名じゃなく、指数ルールで中身を確定する
国内はTOPIX銘柄を、33業種やTOPIX-17で分類して動いている。
だから「金融」「不動産」という言葉だけ見ても、米国の分類と一致する保証はない。
やることは単純。
まず、そのETFがどの指数に連動しているかを見る。
次に、その指数が価格版なのか、配当込み(トータルリターン)なのかも見る。
ここまで確認すると、「自分が何に賭けているか」を言葉じゃなく中身で確定できる。
つまり、テーマに乗っているつもりで別物を買う事故が減る。
売買を「相場観」じゃなく「執行」の問題として切り分ける
取引所は流動性改善のためにマーケットメイク制度を置いている。
ただし、常にスプレッドが細い保証はない。
スプレッドが跳ねやすいのは、だいたいこのへん。
- 板が薄い時間帯
- 相場が荒れている局面
- 気配が飛んでいるとき
結果が変わるのは、見通しよりここ。
成行で突っ込むか、指値で待つか。
一気に出すか、注文を分けるか。
見通しの当たり外れとは別に、執行だけで損得が決まる場面を切り分けられる。
この発想に切り替わるだけで、ムダな負けが減る。
乖離を見て、慌てるべきかを判断できる
iNAVは、取引時間中の理論値の目安。
いまの価格が割高か割安かを測る物差しになる。
乖離が小さくて、スプレッドも薄い。
このときは、値動きはセクター見通しの勝負になりやすい。
一方で、乖離とスプレッドが同時に開いている。
このときは、まず執行の失敗を疑う。
相場観の反省を先に始めると、判断がズレやすい。
要するに、
乖離を見て「相場が間違った」と決めつけない。
まず板とiNAVを見て、「負け方」を分類できる。これが判断力になる。



