AIに投資案を出させて、こっちが容赦なくツッコむ——それがこの実験室の流儀。

この記事でわかること
- AIが「高配当×成長」を狙うと、どんな組み方をしがちか
- AI案のありがちな穴(重複・役割の曖昧さ・管理難度)をどう見抜くか
- AIの提案を「下書き」にして、現実寄りに直す手順
結論だけ先に言うと、AIは叩き台作りは速い。でも、そのまま採用すると普通に事故るポイントが残る。
AIが投資判断をする時代?(結論:するけど、丸投げは危険)
「AIに資産運用を任せたら、どうなるんだろう」——一度は考えるよな。
生成AIは、候補出しや整理がとにかく速い。
ただし、投資に必要な違和感センサー(重なり・偏り・自分の許容範囲との相性)はまだ雑。
だから今回の実験はこれ。
AIにETFポートフォリオを組ませて、人間が“穴”を見つけて修正する
今回の実験条件(ここがブレると検証にならない)
AIに聞くとき、条件がフワいと答えもフワくなる。
今回はあえてシンプルに固定した。
- 目的:高配当×成長のバランス
- 商品:ETFのみ
- 地域:指定なし(AIに任せる)
- リスク:中程度(極端な一点集中は避けたい)
AIに「高配当×成長ポートフォリオ」を聞いてみた
まずはAIに、直球で聞く。
実際に投げたプロンプト(再現用)
「高配当×成長のバランス型ETFポートフォリオを提案して。 それぞれの役割と、配分比率も示して。」
AIの提案(初回・原文の要点)
AIは「年齢・資産額・目的が未確定なので投資助言ではなく設計図」という前置きを置いた上で、東証で買いやすいETF中心のモデルを出してきた。
配分はこう。
- 全世界株(2559):35%(成長の土台/世界分散)
- NASDAQ100(1545):10%(成長ブースター/米国ハイテク寄り)
- 米国高配当(2013):15%(インカムの柱/米国側の配当)
- 日経高配当50(1489):15%(円ベースの高配当)
- MSCIジャパン高配当(1478):10%(配当+品質寄り/日本高配当の“質”補強)
- 米国債7–10年(1656):15%(値動きのクッション)
さらに、
- 日本高配当は 1489 or 1478 の一本化もアリ
- NASDAQ枠は 0〜10%で調整
- 年1回 or ±5%でリバランス
といった運用ルールまで添えてきた。
見た目は丁寧。……ただし、見た目だけで合格にすると、投資はたまに痛い目を見る。
人間がチェックするポイント(AI案の添削テンプレ)
AI案を受け取ったら、最低これを見ろ。
- 役割は本当に増えているか(同じ役のETFを重ねてないか)
- 重なりは意図したものか(分散のつもりが集中になってないか)
- リスク源は何か(株式リスク/金利リスク/為替リスク)
- 管理難度は許容できるか(本数、リバランス、理解の手間)
今回はこの視点で、AI案を殴っていく。
添削①:まず“重なり”を見抜く(分散のフリが一番危ない)
AI自身も触れていたけど、
2559+1545+2013は中身が重なりやすい。
- 2559(全世界)には米国大型株がそれなりに入る
- 1545(NASDAQ100)は米国大型グロース寄り
- 2013(米国高配当)も米国大型株が中心
つまり、地域分散のつもりでも、米国要素が想像以上に濃くなる可能性がある。
重なり自体が悪ではない。
問題は「重なってることを理解してないのに、分散した気分になってしまう」こと。
添削②:日本高配当を2本入れる意味はある?(1489×1478問題)
AIは日本高配当を2本(1489と1478)入れてきた。
ここは意図としては分かる。
- 1489:日経平均高配当株50(母集団・ルールの癖が出やすい)
- 1478:MSCIジャパン高配当(財務要件などが入る設計)
同じ「日本高配当」に見えても、指数設計が違うので、
偏りを薄めたいという発想は成立する。
ただし、初心者目線だとここが罠。
- 2本入れると「分散できた気分」になりやすい
- 一方で、管理の手間(理解・比較・保有理由の説明)が増える
だから結論はシンプル。
混ぜるのは“狙いが言語化できる人”だけ。迷うなら一本化の方が強い
AIも「管理が面倒なら一本化」と言っている。
ここは人間側が、自分のキャラに合わせて選ぶべきポイント。
添削③:債券15%は“万能クッション”じゃない(1656の論点)
AIは値動きをならす枠として、米国債7–10年(1656)を15%入れてきた。
これは「株100%より続けやすくする」という思想としては理解できる。
ただ、ここも丸飲みは危ない。
- 債券は「安全資産」というより、金利に敏感な別のリスク資産
- 7–10年は期間が長めなので、金利変動で価格が動きやすい
- さらに海外資産なので、為替の影響も受ける
つまり、
株が荒れたときに必ず助けてくれる“保険”ではない。
「クッションになりやすい局面はある」が正確な言い方。
(この辺の言い切らないのが人間の仕事だな。)
添削④:このポートフォリオ、何が目的で何を捨ててる?
AI案は、数字の配置がそれっぽい。
でも、投資は最後にここへ戻る。
- 配当を“使いたい”のか、再投資して増やしたいのか
- 値動きに耐えられるか(下落時に投げないか)
- 為替変動をどう受け止めるか
この3つが未確定だと、
同じ「高配当×成長」でも最適配分は変わる。
AIは前提がないと、それっぽい平均点を出してくる。
だから記事では、ここを読者に渡してあげた方が親切。
人間の総評:AI案はよくできた下書き
(でも、そのままだと迷子になりやすい)
AIの提案をまとめると、こう。
良いところ
- 世界分散(2559)を土台に置いている(いきなり尖らない)
- 高配当(米国・日本)と成長(NASDAQ)を役割として分けている
- リバランスなど、運用ルールまで提示している
残る穴(ここが人間の仕事)
- 米国要素の重なりを「分散」と誤解しやすい
- 日本高配当2本は、目的が曖昧だと管理負けしやすい
- 債券15%は“万能の守り”ではなく、金利・為替の論点が残る
ここからが本番:AIに再提案させる“修正プロンプト”例
AI活用のコツは、最初の回答で終わらせないこと。
人間が穴を見つけて、条件を足して、再提案させる。
たとえば、こう。
「この構成の“重なり”を減らしたい。目的は①配当の分かりやすさ②下落時に続けやすいこと。ETF本数は最大4本まで。再提案して、各枠の役割と“捨てたもの”も書いて」
ここまで言えば、AIはだいぶ現実寄りに直してくる。
タイプ別:このAI案を“自分仕様”に直す考え方
1)配当をもう少し分かりやすくしたい
- 日本高配当は 1489 or 1478 の一本化
- 目的:管理コストを下げて、継続性を上げる
2)値動きが苦手(下落で心が折れやすい)
- NASDAQ枠(1545)は 0〜10%で“気持ちよく続く”範囲に抑える
- 目的:最適解より、撤退しない設計
3)為替の揺れがストレス
- 「為替の影響は避けられない」前提で、
生活防衛資金や円建て資産との全体バランスで調整 - 目的:パフォーマンスより“継続可能性”
今回の実験で分かったのは、AIの得意がハッキリしていること。
- AIは速い。候補出しと整理は上手い。
- ただし、重複・偏り・管理難度の評価は雑になりやすい。
- 人間が「目的」と「嫌なこと(続かない理由)」を言語化して渡すと、提案の質が上がる。
要するに、
AIに叩き台を書かせて、人間が検証して仕上げる
この距離感がいちばん事故りにくい。



