コミュニケーションはテックの一種だから、ITと同じ理由で上がったり下がったりする、という見立て。
たしかに見た目は似ている。
アプリもクラウドも同じスマホの中にある。
売上もデジタルっぽい。
だから金利が上がって成長株が売られた、と言えば広告もサブスクも一括で説明できそうに見える。
でも相場の要所で、その説明は外れる。
コミュニケーションだけ崩れて、ITは意外と耐える日がある。
逆にITが崩れても、コミュニケーションの一部だけ粘る日もある。
このときに同じテック扱いをすると、下落の原因を取り違える。
見るべき指標もズレる。
ニュースは合ってるのに、自分の持ち物の中身と話が噛み合わなくなる。
この文章でやりたいのはここ。
コミュニケーションを、広告・メディア・プラットフォーム(配信の場)に分けて、ITと別のロジックで読む。
読後にできるようにしたいのは、こういう動き。
コミュニケーションが動いた日、金利だけで片付けない。
広告単価が落ちたのか。広告枠が増えすぎたのか。コンテンツ費用が膨らんだのか。規制や計測の制約で効率が悪化したのか。
このへんまで分けて、原因を当てにいける状態にする。
コミュニケーション・サービスの中身
なぜ「セクター」という箱が必要か
セクターという箱が必要な理由はシンプルだ。
似て見える会社を一緒にすると、比較が壊れるから。
儲かり方が違う会社を同じ物差しで測ると、数字の意味がズレる。
すると次の3つが連鎖してズレる。
- 指数(ルールで作った成績表)がズレる
- 分散(リスクを散らすつもり)がズレる
- そして結局、判断そのものがズレる
いちばん痛いのはここだ。
投資家が「自分が何を持っているのか」を説明できなくなる。
説明できないものは、コントロールできない。
コミュニケーション・サービスは「通信会社の箱」じゃない
次に、コミュニケーション・サービスの中身。
ここは通信会社だけの箱ではない。
今の「伝達」は、回線だけで成立していない。
人の時間と視線をどこに集めるか、つまり注意(アテンション)をどう集めるかで回っている。
だから中に入るのは色々いる。
- 広告で稼ぐ会社
- コンテンツ(番組・映画など)で稼ぐ会社
- 配信の場(プラットフォーム)を握って稼ぐ会社
どれも「視聴・会話・共有」にぶら下がっている。
でも、利益の出方は別物だ。
混ぜると「何が原因で動いたのか」が見えなくなる
ここを分けないと、違う性質のものが混ざる。
たとえば、ITの生産性ソフトと、コミュニケーションの注意の市場。
同じ「デジタルっぽい会社」に見えても、売上のドライバーが違う。
混ざると何が起きるか。
同じ下落でも、次に確認するべきものが毎回ズレる。
原因が見えないから、確認の順番もブレる。
見たいのは「広告・メディア・プラットフォームの癖」
ここで言う癖は、これだ。
売上が何に強く引っ張られるか。
- 広告なら:企業の広告予算や景気の温度感
- メディアなら:コンテンツ投資と回収のタイミング
- プラットフォームなら:利用時間・囲い込み・手数料の設計
同じ「コミュニケーション」の中にいても、効く変数が違う。
だから癖を押さえないと、同じ下落でも次のチェックが毎回ズレる。
コミュニケーション・サービスの構造:登場人物
全体像は、まず登場人物を4つに絞ると見えやすい。
- 視聴者(利用者)
- 広告主
- プラットフォーム
- コンテンツ保有者(メディア)
この4者の関係で、お金と注意(時間)が回っている。
① 視聴者は「2つの顔」を持つ
視聴者には2つの顔がある。
- お金を払う人(サブスクなど)
- 広告を見せられる枠でもある存在
ここがITと大きく違う。
多くのIT企業では、顧客=支払う人だ。構造は比較的単純。
しかし広告モデルでは、支払うのは広告主。見るのは視聴者。
このズレが、収益構造を複雑にする。
視聴者が増えても、広告単価が下がれば売上は伸びない。
逆に、利用者数が横ばいでも単価が上がれば売上は伸びる。
まずこの二面性を押さえる。
② 広告主は「売上の元」そして景気に敏感
広告主はお金の出どころだ。
だから景気、広告枠の多さ、計測の精度に強く反応する。
広告費はコストではなく「投資」。
つまり効率で動く。
見るべきはROAS(広告費に対してどれだけ売れたか)。
- ROASが悪化すれば止める
- 効率が良い媒体に配分を寄せる
検索、SNS、動画、テレビ。
お金は常に動いている。
同じ業界の会社でも、広告主の配分変更ひとつで明暗が分かれる。
③ プラットフォームは「場」ではなく「ルールの持ち主」
プラットフォームは単なる配信の場ではない。
ルールを握っている存在だ。
- 広告枠の形を決める
- 入札方式を決める
- 効果測定のルールを決める
つまり、取引の設計者。
ここで言うプラットフォームは、単なるアプリ会社という意味ではない。
広告主・配信者・クリエイターをつなぎ、データを管理し、手数料や広告単価で稼ぐ仕組みを持つ主体のことだ。
ルールを少し変えるだけで収益が動く。
ここが、純粋なITプロダクト企業との違いになる。
④ コンテンツ保有者は「先に費用が出る」
コンテンツ保有者は、見てもらう素材を作る側だ。
メディアの癖はシンプル。
費用が先に出る。
- 番組制作
- 映画
- 音楽
- スポーツの放映権
当たれば強い。
しかし外すと固定費だけが残る。
さらに権利契約の条件が利益に直撃する。
ヒットの有無と契約条件、この2つがブレを生む。
4者の関係が見えると、動きの理由が分かる
この4者構造が頭に入ると、分けて考えられる。
株価は将来の利益期待で動く。
しかし、その期待を動かす「途中のつまみ」が違う。
- ITは主に顧客数・単価・解約率
- コミュニケーションは広告配分・単価・ルール変更・ヒットの有無
同じデジタル企業に見えても、動く変数が違う。
ここが境界になる。
構造を分けて理解できれば、下落したときに「誰が動いたのか」を先に探せる。
視聴者か、広告主か、プラットフォームのルールか、コンテンツか。
それが見えれば、確認する数字も自然と決まる。
コミュニケーション株のメカニズム:何が動いて株価が決まるか
コミュニケーションの中心は「注意の市場」だ。
人の時間と視線がどこに集まるかで、お金の流れが変わる。
① 原因は3つだけに絞れる
株価が動くきっかけは、だいたいこの3つ。
- 人が見る場所が変わった(注意の移動)
- 広告主の予算配分が変わった(お金の移動)
- 計測のルールが変わった(効いた/効かないの見え方が変わった)
まずは「どれが起きたか」だけ当てればいい。
② 途中で効く“つまみ”はこれ
株価は結局、売上と利益の見込みで決まる。
その見込みを動かす部品が、ここ。
広告モデルの3点セット
- 表示回数(広告を見せられる回数)
- 単価(CPM)(1000回表示あたりの値段)
- 計測(広告が売れたか追えるか)
売上はざっくりこう。
売上=表示回数 × 単価
そして単価は、計測が効くほど上がりやすい。
測れない広告は、広告主が強気で入札しにくいからだ。
③ ここが一番の誤解ポイント
広告モデルは、ユーザーが増えた=儲かるになりにくい。
なぜなら、ユーザーが増えてもこうなることがある。
- 広告枠が増えすぎて、広告がだぶつく
- だぶつくと、単価が下がる
- 結果、売上が伸びない
入口はユーザー数。
でも勝敗を決めるのは 単価 × 表示回数 × 計測 のセットだ。
④ ITとの違いは「どこで儲けが決まるか」
IT(SaaS)なら、だいたいこう。
良い機能
→ 値上げできる
→ 継続する
→ LTVが積み上がる
一方で広告・プラットフォームはこう。
注意が集まる
→ 配信ルールと入札が回る
→ 単価が決まる
→ 利益率が決まる
同じデジタルでも、途中のつまみが違う。
だから同じ環境でも反応が割れやすい。
⑤ 典型的に弱くなるのは「計測が壊れたとき」
よくあるパターンはこれ。
トラッキング制限やプライバシー規制
→ 広告主が「何が効いたか」測れない
→ 入札が弱くなる
→ 単価が落ちる
→ 利益が落ちる
ユーザーが消えたわけじゃない。
でも儲からなくなる。
⑥ メディアは別ルートで弱くなる
メディアは、費用が先に出る。
- コンテンツ制作費
- 放映権などの権利費
加入者や視聴時間が変わらなくても、
費用が上がれば利益が削れる。
コンテンツは、ITのソフトみたいに
「同じものを何度も売って回収」が効きにくい。
ここがメディアとITの決定的な境目だ。
見る順番はこれ
コミュニケーション株が動いたら、順番はこう。
原因(注意/予算配分/計測)
→ 途中(表示回数・単価・計測/コンテンツ費用・解約率)
→ 結果(売上と利益率)
→ 株価
ユーザー数だけで判断しない。
単価と計測がセットで動いているかを見る。
金利が上がる日に「広告だけ深く沈む」理由
想定する場面
長期金利が上がって、成長株が全体的に売られる日。
こういう日は、コミュニケーションの下げも「金利のせい」で片付けがちだ。
でも実際は、同じ日に
- ITはそこそこ踏ん張る
- 広告系だけが深く沈む
みたいなことが起きる。
同じ日に起きる「もう1つの下げ要因」
広告系が沈む日には、だいたいセットがある。
- 広告主が景気不安で財布を締める
- さらに計測がやりにくくなって、効果が見えにくくなる
つまり、広告主の目線ではこうなる。
「効いたか分からない広告に金を出したくない」
広告主はこう動く
広告主の行動はシンプルだ。
- 効率が測れない広告は減らす
- 効率が見えるところに予算を寄せる
この「寄せる」は、会社をまたいで起きる。
検索、SNS、動画、テレビの間で資金が移動する。
プラットフォーム側で起きること
プラットフォーム側は、広告枠そのものは残っている。
でも入札が弱くなる。
- 入札が弱い
→ 単価(CPM)が下がる
→ 売上の伸びが鈍る
→ 利益率の見通しも悪くなる
結果として、株価はこういう理由で落ちやすい。
金利そのものより、広告単価と利益率の下方修正で落ちる。
落ちた日に見る順番
下げた日こそ、見る順番を固定する。
- まず金利(相場の地合いチェック)
- 広告モデルなら
- 単価(CPMなど)
- 広告主の予算配分のコメント(決算・ガイダンス)
- 計測や規制の変化(トラッキング、プライバシー、OS変更など)
- メディアなら
- コンテンツ費用・権利コスト
- 解約率
- ARPU(1人あたり平均売上)
ここまで見てからでいい。
慌てる下げなのか、ただのノイズなのかを決めるのは、そのあと。
この理解がもたらす判断力:見る順番を固定する
① まず下落理由を2択にする
コミュニケーション株が下げたら、最初にこれを分ける。
- 金利で値札が下がっただけか
- 広告・コンテンツ・計測の変化で、利益が削られそうなのか
この2択にするだけで、次に見る場所が決まる。
もし後者っぽいなら、
ユーザー数や利用時間を見る前に、ここへ直行する。
- 単価(CPMなど)
- 広告効率(ROASなど)
- コンテンツ費用
- 計測や規制の変化
入口の数字より、お金が動く部品を見る。
② ITとの違いは「見た目」ではなく「動かす部品」で見る
どちらもデジタル企業に見える。
でも、利益を動かす仕組みが違う。
広告・プラットフォーム
注意を集める
→ 入札が走る
→ 計測が効く
→ 単価が決まる
→ 利益率が決まる
IT(SaaSなど)
機能を売る
→ 契約単価が決まる
→ 継続する
→ 売上が積み上がる
違いはここだ。
同じ成長株でも、チェックする指標の場所が違う。
③ コミュニケーションの中でも3種類は別物
さらに中身も分ける。
広告系
- 見る場所:単価と計測
- 刺さるもの:景気、広告予算、規制
メディア系
- 見る場所:コンテンツ費用と解約率
- 刺さるもの:権利コスト、ヒット率
回線(通信)系
- 見る場所:料金、投資額、負債
- 刺さるもの:金利、競争環境
同じセクターでも、効く変数が違う。
まとめ:ETFを一括で見るのをやめる
この理解があると、こう変わる。
セクターETFが下げた
→ 「コミュニケーション弱い」で終わらせない
中身に合わせて、
見る場所を変える。
金利か。
単価か。
費用か。
負債か。
見る順番が固定されると、
ノイズに振り回されにくくなる。



