運用ルールの作り方(テンプレ)

ETF運用で判断に迷う場面を減らし、感情ではなくルールで動けるようになるための設計テンプレを紹介する。自分の状況に合わせて書き換えながら使えるひな型として活用してほしい。

運用ルールの目的は「正しい判断をすること」ではなく「判断しなくて済む状態をつくること」。禁止事項・例外条件・判断停止条件の3つをあらかじめ決めておけば、相場が荒れた日にも行動の軸がぶれない。

ルールがない運用が「疲れる」理由

ETFを保有していると、判断を迫られる場面が頻繁にやってくる。相場が下がれば「売るべきか追加するか」、上がれば「一部利確すべきか」、ニュースが出れば「ポートフォリオを見直すべきか」。これらの問いに毎回ゼロから向き合うのが「判断疲れ」の正体だ。

人間の意思決定には認知的なコストがかかる。特に損失が絡む局面では、感情によるバイアスが入りやすい。行動経済学の研究では、損失から受ける心理的な痛みは、同額の利益から得る喜びの約2倍とされている(プロスペクト理論)。つまり、ルールのない状態でボラティリティ(値動きの大きさ)の高い局面に向き合うと、論理ではなく感情が判断を支配しやすくなる。

ルールが果たす役割は「選択肢を事前に絞ること」だ。「下落率が〇%を超えたら追加購入を検討する」というルールがあれば、-8%の日に「どうしよう」と悩む必要がない。すでに答えが出ている。逆にルールがなければ、毎回同じ問いを違うコンディションで考え続けることになる。蓄積すると判断の質が落ちる。

ルール設計に必要な要素は大きく3つ——禁止事項、例外条件、判断停止条件。この3つを紙1枚でもスプレッドシートでもいいので書き出すことが起点になる。

禁止事項:やらないことを先に決める

運用ルールの核心のひとつは「やること」より「やらないこと」の列挙だ。やることは状況次第で変わるが、やらないことは環境に依存せず守れる。

禁止事項の例としてよく機能するのは次のような項目だ。

  • 保有ETFの数を〇本以上に増やさない
  • 1週間以内に売買を2回以上しない
  • SNSやYouTubeを見た直後に注文を入れない
  • 既存ポートフォリオの総額〇%を超える資金を1回で動かさない

これらに共通するのは「衝動的・反射的な行動のブレーキ」になっている点だ。禁止事項は長くなるほど守れなくなる。最初は3〜5項目程度に絞るのが現実的だ。

項目を決める際の判断軸は「過去に後悔した行動パターン」から引き出すと精度が高くなる。「あのとき慌てて売らなければよかった」「銘柄を増やしすぎて管理できなくなった」——こうした経験が禁止事項の材料になる。経験のない人は、一般的に多くの投資家が後悔しやすいパターン(急落時の狼狽売り、流行に乗った銘柄追加)を参照するところから始めるといい。

禁止事項はルール文書の最上部に置く。一番目に入る場所に書くことに意味がある。

例外条件:ルールを破れる状況を先に定義する

禁止事項を設けると「でもこんな場合はどうするの」という問いが必ず浮かぶ。その問いへの答えを事前に書いておくのが例外条件だ。

例外を「曖昧なままにしておく」と、相場が動いた局面で「これは例外に当たるか」という判断が都度発生する。感情が高まっているときに例外認定をすると、禁止事項が骨抜きになる。だから例外条件も具体的な数値や状況で書く必要がある。

例外条件の書き方の例:

禁止事項例外条件
保有ETF数を5本以上に増やさないNISA成長投資枠の使い切りのために1本追加する場合のみ
1週間に2回以上売買しないリバランス(配分比率を元の設定に戻す作業)の実施タイミングに限る
総資産〇%超を1回で動かさない年1回の積立額見直しによる定期増額は除く

例外条件を書く際のポイントは「感情ではなく状況で定義すること」だ。「相場が大きく下落したと感じたとき」という表現は感情依存なので機能しない。「前月末比で〇%以上下落したとき」という数値で書くと、判断が客観的になる。

例外条件の数は禁止事項の数と同じか少なめにするのが目安だ。例外が増えすぎると禁止事項と矛盾し始める。

判断停止条件:考えること自体をやめる基準

禁止事項と例外条件だけでは対処できない局面がある。「今の状況はルールの範囲内か範囲外か」自体を判断できなくなる状態だ。急落・急騰が連続する局面、大きなニュースが出た直後などがその典型だ。

こういう場面で「どちらが正解か」を考え続けることは、多くの場合で有害になる。情報が断片的で、感情が入り、疲労しているなかでの判断は精度が低い。だから「一定の条件下では考えることをやめる」という判断停止条件を設ける。

判断停止条件の例:

  • 日経平均またはS&P500が3日以内に〇%以上変動した場合、その週は新規の売買判断を保留する
  • 保有資産の評価額が1ヶ月で〇%以上変化した場合、2週間は追加・売却を行わない
  • ニュースや他者の意見を見た直後は、その日中の売買を禁止する

判断停止条件は「相場から距離を置く権利」を自分に与えるルールだとも言える。ドローダウン(ピークからの下落率)が大きくなるほど人は「何かしなければ」という衝動を感じやすい。その衝動に乗らないための仕組みだ。

判断停止中にすることも事前に書いておくと実用性が上がる。「何もしない」だけでは落ち着かない人は「方針を確認するだけにする」「次の積立日の計算をする」など、行動の置き換えを定めておくといい。

ルールを機能させる「書き方」と「置き場所」

ルールを作っても守られないケースは多い。原因のひとつは「ルールの存在を忘れること」、もうひとつは「ルールが曖昧すぎて判断の余地を残していること」だ。

書き方の原則は「5秒で読める・解釈がひとつに決まる」だ。「感情的にならない」ではなく「注文を入れる前に5秒待つ」。「分散(複数に分けてリスクを薄める)を意識する」ではなく「1銘柄の比率を40%以上にしない」。行動と数値で書かれたルールは、解釈の余地がない。

置き場所も運用の一部だ。スマートフォンのメモアプリの冒頭、証券口座のログイン前に見るブラウザのタブ、手書きのカードを財布に入れる——どこに置くかはスタイル次第だが、売買の直前に目に入る場所でないと機能しない。

ルールの見直し頻度は「年1回」を目安にする。頻繁に書き換えると、都合よく変更するためのルールになる。改定する場合は「相場が落ち着いているとき」「感情が平常なとき」に限定する。これ自体をルールに書いておく。

最終的なルール文書の構成例:

  1. 禁止事項(3〜5項目)
  2. 例外条件(禁止事項ごとに対応して記載)
  3. 判断停止条件(2〜3項目)
  4. 判断停止中にすること
  5. ルール改定の条件と頻度

よくある誤解

「ルールを作れば感情を完全にコントロールできる」と期待する人は少なくない。これはルールへの過信だ。なぜそう思いやすいかというと、ルール設計の文脈では「感情的な判断をなくす」という言い方をされることが多いからだ。

実際には、ルールは感情を消すものではない。急落した日に不安を感じなくなるわけではないし、保有資産の評価額が下がれば心は動く。ルールが果たすのは「感情があっても行動をコントロールできる状態をつくること」であり、感情そのものへの介入ではない。

この違いを誤解していると「ルールを作ったのに動揺した。ルールが役に立たない」という結論に飛びやすくなる。では何をするかというと、「動揺したが行動はしなかった」という状態をルールの成功として認識し直す。感情と行動を切り離すこと——それがルールの実際の仕事だ。

まとめ

運用ルールの設計は、禁止事項・例外条件・判断停止条件の3要素を具体的な数値と行動で書くことから始まる。感情を消すためのものではなく、感情があっても動かないための仕組みだ。ルールは作って終わりではなく、年1回・平常時に見直す前提で置いておく。

ETF運用ルール設計テンプレート | インタラクティブ・ガイド

「判断疲れ」をゼロにする
投資ルールの技術

相場が荒れた日、売るべきか買うべきか迷っていませんか?
運用ルールの目的は「正しい判断」をすることではなく、
「判断しなくて済む状態」をつくることです。

なぜルールがないと「疲れる」のか?

人間の意思決定コストとプロスペクト理論

😫

ルールがない状態

毎回ゼロから考えるため、脳のエネルギーを消費する。

  • 下落時:「まだ下がる?売るべき?」と焦る
  • 上昇時:「もっと買えばよかった」と後悔する
  • 損失の痛みは利益の喜びの2倍(感情支配)
😌

ルールがある状態

選択肢が事前に絞られており、自動的に行動できる。

  • 下落時:「-8%なので追加購入」と即決
  • 上昇時:「比率内なので放置」とスルー
  • 感情ではなく「仕組み」で資産を守る

運用ルールの3大要素

以下の3つのタブを切り替えて、あなたの運用ルールに必要な要素を確認・選択してください。
クリックした項目は下部の「ドラフト(下書き)」に追加されます。

やらないことを先に決める

「やること」は状況で変わりますが、「やらないこと」は環境に依存せず守れます。衝動的・反射的な行動にブレーキをかけるためのルールです。

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📝 Myルール・ドラフト

左のリストから項目を選んでください

シミュレーション:暴落時の行動

「ルールなし(感情)」と「ルールあり(機械的)」の違いを可視化します。

上のボタンを押してシナリオを選択してください。

ルールを機能させるための「実践ポイント」

✍️

書き方の原則

解釈の余地をなくすため、具体的数値と行動で書く。

× 感情的にならない
注文前に5秒待つ

× 分散を意識する
1銘柄を40%超にしない
📍

置き場所の工夫

売買の直前に必ず目に入る場所に置く。

  • 証券口座のログイン前画面
  • スマホのメモアプリ最上部
  • 財布の中(カード)
  • モニターのベゼル
📅

更新のタイミング

頻繁な書き換えはルールの破壊と同じ。

  • 年1回を目安にする
  • 相場が穏やかな時に限定する
  • 感情が平常な時に行う

まとめ

ルールは感情を消すためのものではなく、
「感情があっても誤った行動をしないための仕組み」です。
まずは紙1枚から、3つの要素(禁止・例外・停止)を書き出してみましょう。

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