同じ指数(ルールで作った成績表)に連動する国内ETFが複数あるとき、どれを選べばいいか。この記事を読むと、信託報酬・純資産総額・スプレッドと出来高という3つの数字を自分で読み取り、銘柄を比較できるようになる。
国内ETFの銘柄選びは「同じ指数の中でコスト・継続性・売買コストの3軸を比べる」作業に絞られる。おすすめを探すより、この3軸で自分が納得できる銘柄を選ぶ方が長続きする。
数字を見る前に:なぜ同じ指数なのに複数の銘柄があるのか
ETFを調べ始めると、同じTOPIXや日経平均に連動するETFが複数存在することに気づく。どれも「同じ指数に連動する」はずなのに、なぜ選択肢が分かれているのか。
東証に上場するETFは、同一の指数を対象にしても複数の運用会社が個別に商品を設計・上場できる仕組みになっている。たとえばTOPIXに連動するETFは2025年時点で東証に十数本以上存在する。連動する指数が同じなら値動きはほぼ一致するが、コスト・規模・流動性には大きな差がある。
この差が、銘柄選択の本質的な論点になる。連動する指数を先に決め、その中で3つの数字を比べる。この順番が崩れると選択が迷子になる。指数を決めずに「コストが安いETF」を探すと、自分のポートフォリオの設計とずれた銘柄を掴むことになる。
判断の補助として整理すると:まだ指数を決めていない段階なら銘柄比較は早い。まず「何の市場・資産クラスに投資するか」を決める。指数が決まったら、その指数に連動する東証上場ETFを一覧で並べ、以下の3軸で絞り込む。
第1の数字:信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)
信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)は、最もよく比較される数字だ。保有残高に対して年率で差し引かれ、日々少しずつ基準価額に反映される。投資家が明示的に支払う手続きはなく、自動で引かれる構造になっている。
国内ETFの信託報酬は、インデックス連動型であれば年0.05〜0.20%台の範囲に多くが収まっている。0.1%の差が30年・1000万円の運用でどれだけ積み上がるかは試算次第だが、複利の構造上、長期保有ほど差が開く。
ただし、信託報酬だけで判断するのは不十分だ。「実質コスト」という概念がある。信託報酬以外にも、売買委託手数料・有価証券取引税・その他費用が運用コストとして存在し、目論見書の「運用管理費用(信託報酬)以外の費用」欄や、交付運用報告書の「1万口当たりのコスト」で確認できる。
判断の補助:信託報酬が同程度の場合は交付運用報告書で実質コストを確認する。実質コストが大きく乖離している場合、その差の原因(売買回転率・貸株収益の有無など)を確認してから判断する。信託報酬だけで「こちらが安い」と即断しない方が精度が上がる。
第2の数字:純資産総額(ETFが運用している資産の総額)
純資産総額(ETFが運用している資産の総額)、いわゆるAUM(ETFが運用している資産の総額)は、ETFの「継続性」を測る数字だ。
ETFには繰上償還というリスクがある。運用規模が極端に小さくなった場合、運用会社の判断で予定より早くETFが終了(償還)されることがある。強制的に現金化されるため、自分のタイミングで売却できなくなる。これを避けるために純資産総額の水準を確認する。
目安として、純資産総額が30〜50億円を下回るETFは繰上償還リスクの観点から注意が必要とされることが多い。ただしこれは絶対的な閾値ではなく、運用会社の方針や市場環境によって変わる。重要なのは「金額の絶対値」より「推移のトレンド」だ。同じ100億円でも、半年で200億円から半減したケースと、3年かけて50億円から100億円に成長したケースでは状況が異なる。
東証のウェブサイトやETFを調べる際に使える各種サービスでは、純資産総額の推移をグラフで確認できる。一時点の数字だけでなく、6〜12ヶ月の推移を見る習慣をつけると判断精度が上がる。
判断の補助:純資産総額が小さく、かつ減少傾向にある銘柄は、信託報酬が安くても長期保有の候補から外すという判断もある。逆に純資産総額が大きく安定していれば、多少信託報酬が高くても「継続性」という安心コストと見ることができる。どちらを優先するかは保有予定期間によって変わる。
第3の数字:スプレッドと出来高
スプレッド(売値と買値の差)と出来高は、ETFを実際に売買するときのコストに直結する。株式と同様に、ETFは市場で売買される。このとき売り手がつけた価格(売り呼び値)と買い手がつけた価格(買い呼び値)の間には必ず差がある。これがスプレッドだ。
スプレッドは信託報酬のように年率で示されないため見落とされやすいが、短期で売買するほど影響が大きい。たとえばスプレッドが0.1%あれば、買って即売るだけで0.1%のコストが発生する。長期保有が前提であれば売買頻度は低いので相対的な影響は小さくなるが、積み立て時に毎月購入するような場合は積み重なる。
出来高が少ないETFはスプレッドが広がりやすい。売買したい金額に対して市場に十分な注文がないと、希望価格で約定できないか、スプレッドが広がって不利な価格で約定することになる。
確認方法は、証券会社の取引画面や東証のサイトで板情報(売り買いの注文状況)を見ること。また日次の出来高は各証券会社のスクリーニング機能で確認できる。
判断の補助:積み立て型で月1〜2回程度の購入であれば、出来高が多少少なくても成行注文を避け指値注文を使えばスプレッドの影響を抑えられる。一方で、数百万円単位をまとめて購入・売却する予定がある場合は出来高の多い銘柄を優先する方が実態コストの予測がしやすい。
3軸を使った比較の手順
3つの数字の意味はわかった。では実際にどう使うか。
以下の手順が現実的だ。
- 投資したい指数を決める(例:TOPIX、日経平均、MSCIコクサイなど)
- 東証のETF一覧で、その指数に連動する国内ETFを全て並べる
- 信託報酬で絞る:実質コストが確認できるなら合わせて確認する
- 純資産総額の水準と推移を確認し、継続性に懸念がある銘柄を除外する
- 残った候補でスプレッドと出来高を確認し、自分の売買スタイルに合う銘柄を選ぶ
3つ全てで圧倒的に優位な銘柄が一つに絞れることは少ない。コストが安いが純資産が小さい、純資産は大きいが信託報酬がやや高い、といったトレードオフが存在する。どの軸を重視するかは保有期間と売買頻度によって変わる。
| 優先軸 | 向いているケース |
|---|---|
| 信託報酬(実質コスト) | 長期保有・売買頻度が低い |
| 純資産総額 | 10年以上の超長期保有・償還リスクを避けたい |
| スプレッド・出来高 | まとまった金額を一度に売買する予定がある |
表はあくまで方向感の整理。実際は3軸を同時に見て、どれかが著しく劣っていないかを確認する作業になる。
よくある誤解
「信託報酬が一番安い銘柄を選べば間違いない」という判断は一見合理的に見える。コストが低いほど長期リターンに有利なのは事実だし、インデックス投資の文脈ではコスト最小化が繰り返し強調される。
ただし、純資産総額が極端に小さい銘柄では繰上償還リスクが現実的な問題になる。信託報酬が0.03%安くても、10年後に強制償還されれば再投資の手間とタイミングリスクが生じる。実質コストで見ると差が縮まるケースもある。
では何をするか。信託報酬は比較の起点として使いつつ、最終判断は3軸を並べてから行う。「信託報酬が安い=即決」ではなく「信託報酬が安い候補の中で純資産・流動性を確認する」という順番で動くと、見落としが減る。
まとめ
国内ETFの銘柄選びは、指数を先に決め、同一指数の中で信託報酬・純資産総額・スプレッドと出来高の3軸を比べる作業に収束する。3つ全てで完璧な銘柄は少なく、自分の保有期間と売買スタイルに合わせてどの軸を重視するかを決めることになる。
国内ETF ナビゲーター
同じ指数なのに、なぜ迷う?
国内ETF選びの正解を見つける。
TOPIXや日経平均に連動するETFは多数存在します。「どれを選んでも同じ」ではありません。
「コスト・継続性・売買コスト」の3つの数字を読み解けば、
自分に最適な一本が見えてきます。
🤔 なぜ複数の銘柄があるのか?
東証には同一の指数(例:TOPIX)を対象にしても、複数の運用会社が個別に商品を上場できる仕組みがあるからです。 連動する指数が同じなら値動きはほぼ一致しますが、コスト・規模・流動性には運用会社ごとの実力が反映され、大きな差が生まれます。
確認すべき「3つの数字」
銘柄選びはこの3軸を比べる作業に集約されます。カードをクリックして詳細を確認しましょう。
1. 信託報酬
コストETFを保有している間、毎日自動で引かれる年間コスト。
- 目安: 年0.05〜0.20%程度
- 重要: 隠れコストを含む「実質コスト」を交付運用報告書で確認するのがプロの流儀。
- 影響: 複利効果により、長期保有ほど0.1%の差が資産額に響きます。
詳細を見る ↓
2. 純資産総額
継続性ETFが運用している資産の規模。継続性の指標。
- リスク: 規模が小さいと「繰上償還(強制終了)」の可能性も。
- 目安: 30〜50億円以上が安心ライン。
- ポイント: 金額そのものより「増えているか、減っているか」のトレンドを確認します。
詳細を見る ↓
3. スプレッド・出来高
売買コスト実際に売買する時のコスト(売値と買値の差)と取引量。
- 仕組み: 出来高が少ないとスプレッドが広がり、不利な価格で約定しやすくなります。
- 対策: まとまった金額を動かす場合は、板が厚く出来高が多い銘柄を選びます。
- 注意: 短期売買ほど影響が大。
詳細を見る ↓
実践:銘柄比較シミュレーター
以下の5ステップで、架空のETF候補(A, B, C)を比較し、最適な銘柄を見つける手順を体験しましょう。
左側のステップをクリックして進めてください。
まずは「何に投資するか」を決める
銘柄比較の前に、投資対象(アセットクラス・市場)を明確にします。
まだ指数を決めていない段階でETFを比較するのは早すぎます。
今回は例として
「TOPIX(東証株価指数)」
への投資を決定したと仮定します。
同じ指数のETFを一覧にする
東証のETF一覧などから、TOPIX連動型をピックアップします。
ここでは特徴の異なる3つの架空銘柄を比較対象とします。
| 銘柄名 | 特徴(仮) |
|---|---|
| ETF A | 超低コスト・新興ファンド |
| ETF B | 標準的コスト・老舗で巨大 |
| ETF C | 高コスト・規模縮小傾向 |
信託報酬(実質コスト)の比較
まずは固定費である信託報酬を見ます。「安い=正義」が基本ですが、それだけで決めてはいけません。
💡 ポイント
ETF Aは信託報酬0.08%と最安です。ETF Cは0.25%と割高です。長期保有ならAかBが候補に残ります。
純資産総額の推移(継続性)
「安さ」だけで選ぶと危険です。ETF A(最安)とETF B(巨大)の純資産推移を見てみましょう。 30億円を下回ると償還リスクが高まります。
⚠️ 危険信号
ETF Aはコスト最安ですが、純資産が20億円しかなく、さらに減少傾向です。早期償還のリスクがあります。
ETF Bは安定して成長しており、500億円を超えています。安心感はBが圧倒的です。
スプレッドと出来高(売買のしやすさ)
最後に「買いたい時に適正価格で買えるか」を確認します。板の厚さとスプレッドを見ます。
ETF A (不人気・板薄い)
コスト増
注文が少なく、希望価格で買えないリスクあり。
ETF B (人気・板厚い)
スプレッド 0.1% (狭い)。即座に売買可能。
🏆 最終判断: あなたならどれを選ぶ?
ETF A: 信託報酬は最安だが、いつ償還されるか不安。板も薄く買いにくい。
ETF B: 信託報酬は並だが、純資産が潤沢で流動性も抜群。長期で放置しても安心。
結論:多少のコスト差なら、初心者や長期投資家は「ETF B(安心感)」を選ぶのが合理的です。
3つの数字を複合的に見ることで、”安物買いの銭失い”を防げます。
あなたの投資スタイルでは何を重視する?
全ての項目で完璧なETFは稀です。トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)を理解しましょう。
長期保有・売買頻度が低い人向け
10年、20年と持ち続けるなら、毎年かかる「信託報酬(実質コスト)」の差が複利で大きく効いてきます。
流動性が多少低くても、一度買ったら売らないなら保有コストの低さを最優先しましょう。
超長期保有・償還リスクを絶対避けたい人向け
「NISAで一生持ちたい」という場合、途中で償還(強制売却)されるのが最大のリスクです。
コストが多少高くても、純資産総額が大きく安定している「王道」の銘柄を選ぶのが安心です。
まとまった金額を売買する人向け
数百万円単位を一括で投資する場合や、短期間で売買する場合は、スプレッドによる損失が信託報酬を上回ることがあります。
出来高が多く、板が厚い銘柄を選び、無駄なコストを抑えましょう。
まとめ
- まずは投資したい指数を決める(比較はそのあと)。
- 信託報酬は比較の起点。実質コストまで見れば完璧。
- 純資産総額の推移を見て、償還リスクを回避する。
- 最後にスプレッドと出来高を確認し、自分のスタイルに合うか判断する。

