レバレッジETFやテーマETFが「なぜ長期保有に向かないのか」——その構造を理解すれば、使っていい場面と使ってはいけない場面を自分で判断できるようになる。
レバETFは「方向が合っていても資産が減る」構造的な問題を持つ。テーマETFはコストと集中リスクで長期リターンが削られやすい。どちらも「使い方のルール」なしに保有し続けることが最大の事故原因だ。
レバETFが「正しい方向に張っても負ける」理由
レバレッジETF(以下レバETF)を買ったとき、多くの人が想定するのは「2倍上がれば2倍儲かる」という単純な話だ。ところが実際の運用成績はそうならない。この乖離の正体を理解していないまま持ち続けることが、典型的な事故のパターンになる。
原因は「日次リバランス」の仕組みにある。レバETFは前日比の騰落率に対してレバレッジをかける設計になっている。たとえば日次2倍のレバETFで、原指数が1日目+10%、2日目−10%だったとする。原指数は1×1.10×0.90=0.99で1%の損失。ところがレバETFは1×1.20×0.80=0.96となり、4%の損失になる。方向性が「横ばい」でも、ボラティリティ(値動きの大きさ)があるだけで資産は目減りしていく。これを「ボラティリティ減衰」と呼ぶ。
相場が右肩上がりに動いた場合でも、途中の揺れが大きければこの減衰が効いてくる。特に2022年のような金利上昇・株安の局面では、レバETFのドローダウン(ピークからの下落率)は原指数の2倍どころか3倍を超えるケースも出た。
判断の起点として考えるなら、レバETFが機能しやすいのは「短期間で方向性が明確かつ値動きが安定している局面」に限られる。相場の方向性が読みにくい局面、または保有期間が数ヶ月を超える場合は、ボラティリティ減衰が累積してくる可能性がある。「長期保有するつもりはない」と決めていても、含み損を抱えた状態では損切りが遅れやすい——その心理的な罠も込みで設計上のリスクといえる。
テーマETFのコスト構造と「旬が過ぎた後」の問題
AIやクリーンエネルギー、メタバースといったテーマETFは、「成長分野に乗れる」という期待感が強い。ただし、そのコスト構造と銘柄選定の仕組みを見ると、長期運用との相性に疑問が生じやすい。
まず信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)が高い。国内籍のテーマ型ETFの多くは年0.5〜0.8%前後、海外ETFでも0.4〜0.7%台が多く、オルカン(全世界株、世界中の株式を1本で持てるETF)や先進国株インデックスの0.05〜0.2%台と比べると倍以上になる。長期で見れば、このコスト差は複利効果に逆方向で働く。
次に銘柄の入れ替えリスク。テーマETFは「今ホットな業種・分野(セクター)」に連動するよう設計されているため、テーマの賞味期限が切れると組み入れ銘柄が総入れ替えになることがある。メタバース関連ETFが典型で、一時期急騰してから90%超の下落を経験したものもある。個別銘柄ではなくETFというパッケージに入っていても、集中投資のリスクは変わらない。
さらに問題になるのは「AUM(ETFが運用している資産の総額)の縮小」だ。テーマへの注目が薄れると資金が流出し、AUMが一定水準を下回ると繰上償還(運用終了)になることがある。その場合、課税タイミングを選べず損益通算に影響が出る可能性もある。
テーマETFを検討する場合、「このテーマは10年後に存在しているか」「信託報酬の差をリターンでカバーできる根拠はあるか」という2点を自分に問い直すのが現実的な判断軸になる。
長期NISA口座に入れると何が起きるか
NISAは非課税の恩恵が大きい分、「何を入れるか」の判断がそのまま長期の結果に直結する。レバETFやテーマETFをNISA口座に入れたときの問題点を整理する。
NISAの非課税枠は一度使ったら戻らない(新NISAでは損失が出ても枠の再利用はできない)。レバETFで50%のドローダウンが起きたとする。その損失は課税口座であれば損益通算に使えるが、NISA内では使えない。枠を消費した上に損失を抱えた状態で、非課税メリットがゼロになる。
また、レバETFの多くは分配金(ETFが出す受け取り)を出さないか、あるいは値動きの激しさからNISA成長投資枠での扱いが限定されるケースもある。国内で設定されているレバ型ETFとして東証上場のものも存在するが、信託報酬の高さと流動性(スプレッド=売値と買値の差)の広さが、インデックスETFとは大きく異なる。
判断の分岐として整理すると、NISA口座にレバETFやテーマETFを組み込むのは「短期の値上がりに賭け、かつ損失が出たときに枠を失うコストを許容できる」場合に限られる。「長期・積立・非課税メリットを最大化したい」という目的に対しては、構造的に合っていない。
使うなら「ルール先行」で管理する
レバETFやテーマETFが「絶対に使ってはいけない」という話ではない。ただし、ルールなしで保有し続けることが事故の本質的な原因だ。では具体的にどんなルールを持つか。
期間の上限を決める:レバETFは「持ち続けるもの」ではなく「期間限定で使うもの」として設計する。たとえば「最長3ヶ月」「決算や重要指標発表までの短期」といった期間を事前に決め、期限が来たら判断にかかわらず見直す。
比率の上限を決める:ポートフォリオ全体に対して何%まで組み入れるかを先に決める。「全体の10%以内」などと決めておけば、仮に全損しても致命傷にならない範囲に収まる。ポートフォリオの大半をレバETFやテーマETFで埋めるのはリバランス(配分比率を元の設定に戻す作業)の問題でもある。
撤退条件を決める:含み損が「−20%になったら損切り」「テーマの中核企業の業績が2期連続悪化したら見直す」といった条件を保有前に書き出す。損失を抱えた状態で撤退ルールを考えると、どうしても甘くなる。判断は冷静なときに行う。
これら3点は特殊なスキルではなく、事前の「意思決定の型」を持つかどうかの話だ。ルールがあれば「ズルズル保有」を防げる。
よくある誤解
「レバETFはリスクが高いだけで、リターンも高いなら持ちつづけていいのでは」という理解は多い。確かに上昇相場では短期的に大きなリターンが出るため、そう感じやすい。
ただし、ここで確認したいのは「リスクが高い」の中身だ。通常の株式ETFのリスクは「価格が下がること」だが、レバETFのリスクには「方向性が合っていても、ボラティリティ減衰で資産が削られること」が加わる。これは時間の経過とともに確実に働く構造的なコストであり、相場が戻れば回収できる性質のものではない。
では何をするか。レバETFを検討するときは、「同じ期間に同じ原指数に連動するノーマルETFを保有した場合のリターン」と比較してみる。上昇局面での差は分かりやすいが、横ばいや下落を含む期間で見ると、レバETFの減衰がどれだけ働いているかを数字で確認できる。ETF提供会社の目論見書や運用報告書に過去の騰落比較が掲載されているものもある。判断は感覚ではなく、その数字をもとに。
まとめ
レバETFの問題の核心は「ボラティリティ減衰という構造的な目減り」で、テーマETFの問題は「高コストと集中リスクの複合」にある。どちらも使い方のルール(期間・比率・撤退条件)なしに長期保有すると、相場が正しくても資産が削られるシナリオがある。使う場合はルールを先に決め、NISAへの組み込みは非課税枠の性質と照らして判断する。
レバETF・テーマETFで
資産が壊れるプロセス
「なぜ長期保有に向かないのか?」
その構造を理解せず保有し続けることが、最大の事故原因です。
ボラティリティ減衰とコスト構造の真実を体験してください。
構造的欠陥
レバETFは方向が合っていても、値動き(ボラティリティ)だけで資産が目減りします。
高コスト・集中
テーマETFは信託報酬が高く、ブーム終了後の暴落リスクがつきまといます。
ルールの徹底
期間・比率・撤退条件。3つのルールを守ることで事故を防げます。
レバETFが「正しい方向でも負ける」理由
多くの人が「2倍上がれば2倍儲かる」と考えますが、実際は「日次リバランス」の仕組みにより、ボラティリティ減衰が発生します。相場が横ばいでも、上下に揺れるだけで資産は削られていきます。
👇 以下のシミュレーターで、「原指数」(青)と「レバレッジ2倍」(赤)の動きを比較してください。日々の変動率を選択できます。
💡 横ばい相場での現象(ボラティリティ減衰)
原指数が上下を繰り返して最終的に元の価格近くに戻っても、レバレッジETFは大きくマイナスになります。これが「減衰」です。保有期間が長くなるほど、この乖離は大きくなります。
なぜ減衰するのか?(計算例)
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1日目:原指数が +10%
→ レバ(2倍)は +20% -
2日目:原指数が -10%
→ レバ(2倍)は -20% -
結果:
原指数:1.1 × 0.9 = 0.99 (-1%)
レバ型:1.2 × 0.8 = 0.96 (-4%)
事故防止のポイント
レバETFが機能するのは以下の条件に限られます:
- ✅ 短期間であること
- ✅ 方向性が明確であること
- ✅ 値動きが安定していること
※ 長期・不透明な相場では「減衰」がリターンを食いつぶします。
テーマETFの「賞味期限」とコスト
AI、クリーンエネルギー、メタバース…。煌びやかなテーマETFは魅力的ですが、長期運用には不向きな構造があります。
💰 高い信託報酬
インデックスETFの数倍のコストがかかります。
コスト差は複利で大きく効いてきます。
📉 銘柄入替と集中リスク
「今ホットな銘柄」を集めるため、高値掴みになりがちです。ブームが去ると90%下落することも。資産規模(AUM)が減ると繰上償還(強制終了)のリスクもあります。
20年間のコスト累積イメージ(100万円投資時)
※年率5%のリターンを仮定した場合のコストによる利益の押し下げ効果
問うべきこと:「このテーマは10年後も主役か?」「コスト差を埋めるだけの超過リターンの根拠はあるか?」
NISA口座に入れてはいけない理由
「非課税だから大きく儲けたい」という誘惑がありますが、NISAの仕組みと高リスク商品は構造的に相性が最悪です。
課税口座(特定口座)の場合
税金を払い戻せるチャンスがある。
NISA口座の場合
1. 損失はそのまま丸損
2. 使った非課税枠は復活しない(その年分)
使うなら「ルール先行」で管理する
どうしてもレバETFやテーマETFを使いたい場合、以下の3つのルールを「買う前」に決めてください。感情が入る前に、機械的な撤退ラインを引くことが生存条件です。
✓ 運用ルールビルダー
これらは「持ち続けるもの」ではありません。期限が来たら損益に関わらず見直します。
最悪ゼロになっても人生が詰まらない金額に抑えます。
ズルズル保有を防ぐため、逆指値のイメージを明確にします。
まとめ
レバETFの敵は「時間の経過(減衰)」、テーマETFの敵は「変化(流行廃り)」です。
これらは相場観が正しくても負ける可能性がある商品です。
迷ったら、過去のチャートをノーマルETF(指数)と比較してください。
数字は嘘をつきません。感覚ではなく、事実に基づいて判断しましょう。
