テクノロジー株ETFのXLKは、分配金が多い・少ないを語るより先に、いつ権利が確定し、いくら受け取り、税引後がいくら残るかを押さえる必要がある。本記事は、その計算と読み方を自分で再現できる形に落とし込む。
価格が下がれば利回りの数字は上がる。表示されている利回りを眺めて判断するのではなく、TTM(過去12か月)で分配金を合計し、税引後を差し引き、購入価格ベースで見直す。それだけで「毎月いくら入るか」のズレは大半が潰れる。
分配スケジュール|いつ・何回もらえるか
XLKの分配頻度は年4回(四半期)だ。 米国ETFは「権利落ち日(Ex-Date)」を境に、分配金を受け取れる人と受け取れない人が分かれる。権利落ち日より前に保有していることが条件になる。
2026年の分配スケジュール(予定)
※日付はState Streetの分配スケジュール(Calendar Year 2026)に基づく。
| 回 | 権利付き最終日(目安) | 権利落ち日(Ex-Date) | 権利確定日(Record Date) | 支払予定日(Payable Date) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2026/3/20 | 2026/3/23 | 2026/3/23 | 2026/3/25 |
| 2 | 2026/6/19 | 2026/6/22 | 2026/6/22 | 2026/6/24 |
| 3 | 2026/9/18 | 2026/9/21 | 2026/9/21 | 2026/9/23 |
| 4 | 2026/12/18 | 2026/12/21 | 2026/12/21 | 2026/12/23 |
権利確定日(Record Date)は、ファンドが株主名簿を照合して受給権者を確定する日だ。日本の国内ETFで言う「決算日」とは別の概念なので、混同しないようにしたい。State Streetのスケジュール自体も、Ex-Date/Record Date/Payable Dateで整理されている。
具体例:2026年3月分を取りに行く場合
権利落ち日が3/23(月)なら、3/23に買っても分配はもらえない。前営業日(3/20)の引けまでに保有しておく必要がある。権利落ち日当日は「分配権利が落ちた状態」で取引が始まるため、その日に買った人には分配の権利が付かない。
参照:SPDR Dividend Distributions(スケジュール掲載ページ)
参照:SPDR Dividend Distribution Schedule(PDF)
参照:XLK 公式ファンドページ(Distribution Frequency など)
分配金の実績と計算の仕方
分配金は固定給ではない。XLKが保有する銘柄から入る配当(+一部利息等)の結果として、四半期ごとに変動する。利回りを計算するときはTTM(過去12か月合計)で集計してから行うのが基本だ。
直近1〜2年の分配金実績(1口あたり)
StockAnalysisの配当履歴(Ex-Date/Pay Date/金額)より。
| Ex-Date | Pay Date | 分配金($ / 口) |
|---|---|---|
| 2025/12/22 | 2025/12/24 | 0.21883 |
| 2025/9/22 | 2025/9/24 | 0.17893 |
| 2025/6/23 | 2025/6/25 | 0.19875 |
| 2025/3/24 | 2025/3/26 | 0.18745 |
| 2024/12/23 | 2024/12/26 | 0.19298 |
| 2024/9/23 | 2024/9/25 | 0.19926 |
| 2024/6/24 | 2024/6/26 | 0.20000 |
| 2024/3/18 | 2024/3/21 | 0.16960 |
TTM(過去12か月)の考え方と計算式
TTMは直近4回(四半期)の分配金を合計するだけで作れる。
TTM分配金($)=直近4回分配金の合計 TTM分配利回り(%)=TTM分配金 ÷ 現在価格 × 100
XLKの場合(例)、直近4回(2025/3・6・9・12)の合計は 0.18745 + 0.19875 + 0.17893 + 0.21883 = 0.78396($ / 口)。
サイトに表示されている利回りをそのまま信じるとズレる理由は3つある。
まず使っている分配金が違う。直近1回を年換算(×4)しているサイトもあれば、TTMで足しているサイトもある。次に分母(価格)が違う。NAV(基準価額)で割る表示もあれば、市場価格で割る表示もある。State StreetはFund Distribution Yieldを「過去365日の分配合計÷NAV」として定義している。最後にタイミングが違う。価格が動けば利回りも動く。XLKは値動きが大きい側なので、同じTTMでも利回りが日々揺れる。
参照:XLK 分配履歴(Ex-Date/Pay Date/金額)
参照:XLK 公式ファンドページ(Distribution Yield / SEC Yield 定義含む)
税引後の手取りはいくらか
XLKは米国ETFなので、税金は「米国での源泉」と「日本での課税」の2段構えが基本になる。ここを曖昧にすると、毎月いくらの見積もりが確実に崩れる。
原則:課税口座だと二重課税、NISAでも米国側は残る
課税口座(特定口座など)では、米国で源泉(一般に10%)が引かれた後の金額に対して、日本で20.315%が課税される。外国税額控除を確定申告で使えば二重課税を調整できるが、上限や条件がある。NISA口座は日本側が非課税のため外国税額控除の対象外となり、米国源泉分は基本的に残る。
数値例:XLKを100口持っていて、分配が$0.21883だった場合(2025/12の分配実績を使用)
税引前受取:0.21883 × 100 = $21.883
A)NISA口座(日本非課税、米国源泉のみ) 米国源泉(10%):$21.883 × 0.10 = $2.1883 手取り:$21.883 × (1 − 0.10) = $19.6947
B)特定口座(源泉あり)で二重課税調整をしない場合(概算) 米国源泉(10%)後の金額:$21.883 × 0.90 = $19.6947 日本課税(20.315%):$19.6947 × 0.20315 = $4.0009 手取り:$21.883 × (1 − 0.10) × (1 − 0.20315) = $21.883 × 0.717165 ≒ $15.69
C)特定口座で外国税額控除がフルに効いた場合(上限等により満額にならない場合あり) 実務上は確定申告で調整する話であり、満額戻るとは限らない。目安として「最終的に日本課税(20.315%)相当に近づく」ケースを想定すると、手取り ≒ $21.883 × (1 − 0.20315) = $17.4375
押さえておくべき点は2つ。NISA=完全非課税ではなく米国源泉は残る。課税口座は外国税額控除を使わないと米国10%+日本20.315%が順に引かれ、手取りは約71.7%まで下がる。どちらが得かは、外国税額控除を使えるか(使える所得税額があるか)まで含めて決まる。
参照:SBI証券|外国税額控除について(NISAは対象外の注意)
参照:楽天証券|外国税額控除(NISAは適用外の注意)
参照:常陽銀行コラム|NISAと外国税額控除(米国10%源泉・NISAは控除不可の説明)
利回りの数字に惑わされないための読み方
利回りは「今の価格に対して、過去の分配がどれくらいか」を見ているだけで、将来の分配を保証しない。さらに、同じ利回りでも基準が2つある。
基準価額ベース vs 購入価格ベース
表示利回り(多くは現在価格 or NAVベース)は、いま買う人の目線だ。購入価格ベース(Yield on Cost)は、自分がいくらで買ったかの目線になる。
XLKのTTM分配が$0.78396として、たとえばSSGAが公表しているNAV $141.00(2026/2/26時点)で計算すると 0.78396 ÷ 141.00 = 約0.556%。仮に$100で買っていた人なら 0.78396 ÷ 100 = 約0.784%。同じETFでも見える利回りが変わるのは当然だ。
「利回りが高い=良い銘柄」ではない理由
利回りが上がる典型は「分配が増えた」ではなく「価格が下がった」である。セクターETFはテーマの逆風で価格が落ちやすく、利回りだけ見て飛びつくとトータルリターン(値上がり益+分配)が負ける。
また、分配の中身にも注意が要る。米国ETFの分配は、普通分配(Ordinary Income)に加えて、資本の払い戻し(Return of Capital)やキャピタルゲイン分配(Capital Gain Distribution)が混ざることがある。Return of Capitalは元本の切り崩しに近い性質を持つため、利回りの数字だけ見て判断するのは危うい。
分配金目的で確認すべき3つの数字(条件分岐)
毎回の入金額が目的なら、まずTTM分配金(過去12か月の合計)を出し、税引後で月割りする。その上で「過去4回の振れ幅」を見て、ブレに耐えられるかを確認する。
将来のペース感が知りたいなら、30 Day SEC Yield(直近30日から年率換算)も併記する。ただしこれは最近の状態を示す指標で、TTMとは役割が違う。
分配も欲しいが資産を増やすのが主目的なら、利回りより経費率(コスト)とトータルリターンを優先する。XLKの経費率は0.08%で、ここは強み側だ。
参照:XLK 公式ファンドページ(SEC Yield / Distribution Yield / 経費率)
参照:XLK 分配履歴(TTM計算に使用)
NISAでの受け取りと再投資の考え方
XLKをNISAで持つ場合、分配金は日本側の課税なしで受け取れる一方、米国源泉(10%)は残り、外国税額控除は使えない。分配金を生活費の足しにするより、再投資して複利を積むほうが構造として整合しやすい。
判断は二択でシンプルに考えられる。
再投資するなら、分配金を受け取ったタイミングでXLK(またはコアETF)へ回す。年4回の分配に合わせて買付のルーティンを作ればよい。
使うなら、XLK単体に入金の安定を期待しすぎないほうがいい。価格変動も分配変動もあるため、固定額の入金を設計したい場合は、分配以外の取り崩しルールもセットで持つ必要がある。
参照:SBI証券|外国税額控除について(NISAは対象外の注意)
参照:楽天証券|外国税額控除(NISAは適用外の注意)
よくある誤解
誤解:「権利落ち日に買えば分配金がもらえる」
理由:権利落ち日は、名前の通り権利が落ちた状態で取引が始まる日だ。分配を受け取る権利は、権利付き最終日までに保有していた人に付く。 実際:2026年3月のEx-Dateが3/23なら、3/23に買った人は対象外になる。目安は前営業日(3/20)引けまでの保有だ。 対処:分配を取りに行くなら、権利落ち日と自分の買付日を照合してから買う。迷うなら公式スケジュールをその都度確認する。
まとめ
XLKの分配は年4回で、権利落ち日より前に保有していないと受け取れない。実績はTTMで合計し、価格で割って利回りを出すのが基本だ。税引後はNISAでも米国源泉が残る点が落とし穴になる。次は「XLKを他の米国テックETFとどう使い分けるか」を整理する。
XLK 分配金・利回り解説ダッシュボード
1. 記事の概要と基本データ
テクノロジー株ETF「XLK」の分配金について、単なる表面上の利回りではなく、「いつ権利が確定し、いくら受け取り、税引後がいくら残るか」を正確に把握するためのインタラクティブリポートです。本ページを操作することで、計算と読み方を直感的に理解し、より精度の高い資産運用設計が可能になります。
2. 2026年 分配スケジュール
分配金を受け取るために最も重要なのは「タイミング」です。以下の表は2026年の予定スケジュールです。米国ETFは「権利落ち日(Ex-Date)」を境に受給権が分かれます。権利落ち日に買っても分配金はもらえません。必ず前営業日の引けまでに保有している必要があります。
| 回 | 権利付き最終日 (目安) ※この日までに買う! |
権利落ち日 (Ex-Date) ※この日では遅い |
支払予定日 (Pay Date) |
|---|---|---|---|
| 1 | 2026/03/20 (金) | 2026/03/23 (月) | 2026/03/25 |
| 2 | 2026/06/19 (金) | 2026/06/22 (月) | 2026/06/24 |
| 3 | 2026/09/18 (金) | 2026/09/21 (月) | 2026/09/23 |
| 4 | 2026/12/18 (金) | 2026/12/21 (月) | 2026/12/23 |
3. 利回り計算シミュレーター
表示されている利回りをそのまま信じるとズレが生じます。正しい利回りは「TTM(過去12か月合計)分配金 ÷ 現在価格 × 100」で計算します。以下のスライダーで株価を動かし、「価格が下がると利回りが上がる(増配とは限らない)」という逆相関のメカニズムを確認してください。
式: $0.78396 (TTM分配金) ÷ 選択価格 × 100
4. 税引後の手取り額シミュレーター
XLKは米国ETFのため、「米国での源泉税(10%)」と「日本での課税(20.315%)」の二重課税が基本となります。NISA口座でも米国の10%は引かれます。保有口数と口座タイプを選択し、実際に手元に残る金額(手取り)を計算してみましょう。
年間シミュレーション結果 (TTMベース)
※概算値です。為替や個人の所得状況により実際とは異なる場合があります。
5. 投資判断のための3つのポイント
NISAでの再投資が基本
NISAでも米国源泉税(10%)は回避できず、外国税額控除も使えません。分配金を消費するより、非課税枠を活かして再投資し複利を狙うのが構造的に合理的です。
高利回り=良い銘柄ではない
セクターETFはテーマの逆風で価格が落ちやすく、結果として利回りが高く見えることがあります。利回りだけでなく、トータルリターンと経費率(0.08%)を評価軸にしましょう。
権利落ち日の誤解をなくす
「権利落ち日に買えばもらえる」は間違いです。権利落ち日は「権利が落ちた状態」で始まる日です。必ず直前の営業日(権利付き最終日)の引けまでに買付を完了させましょう。



