新NISAは日本の税金がかからない点が強みだが、分配金の受け取り方の設定が違うだけで国内税が発生することがある(参考:金融庁 NISA特設サイト)
さらに米国ETFなどは、新NISAでも現地の税金が差し引かれる。この記事は、損を避けるための実務メモとして、最初に確認すべきポイントと手順をまとめる。読みながら証券会社にログインして確認すると早い。

結論 まず確認する3点だけ押さえる
結論はシンプルで、次の3点を押さえれば大半のトラブルは回避できる。
チェックリスト
- 配当金受取方法が株式数比例配分方式になっているか
- 保有商品が国内か海外かを切り分け、海外は外国税がある前提で理解する
- 投資信託の分配金コースが受取型か再投資型か、NISA枠の使い方と整合しているか
株式数比例配分方式とは NISAで非課税になる条件
国内上場株式や国内ETFの配当金や分配金は、受け取り方が複数ある。ここで重要なのは、単に入金先が違うのではなく、課税判定のルートそのものが変わる点である。
NISAで国内の税金をゼロにするには、配当金受取方法を株式数比例配分方式にしておく必要がある(参考:日本証券業協会 NISAと配当金等の受取方式)。この方式だと、配当金が証券会社の口座に入金される。入金の時点で、その口座がNISA預かりか課税口座かを証券会社が判定できるため、NISA分は国内源泉徴収が0円で処理される。
一方で、銀行口座で受け取る設定など、証券会社を経由しないルートでは、支払い側がNISA預かりかどうかを判別できない。その結果、原則どおり国内税20.315パーセントが差し引かれて入金されやすい(参考:国税庁 配当所得の課税関係)。ここが設定事故の中心である。
銀行受取が課税になる理由 ほふり連動の落とし穴
受取方法が連動する点も見落とされやすい。配当金の受取方式は、証券保管振替機構(ほふり。配当の受取設定を共通管理する仕組み)を通じて複数の証券会社にまたがって反映される。
つまり、どこか1社で銀行受取などに変更すると、別の証券会社で持っているNISAの国内ETFまで同じ受取方式に寄ってしまうことがある。逆に、どこか1社で株式数比例配分方式にしておけば、他社も同じ方式になりやすい。複数口座を使っている人ほど、この連動性を前提に行動したほうが安全だ。
タイミングにも注意が要る。権利確定の前に設定が反映されていないと、その回の配当だけ課税されることがある。銘柄を買う前、または権利付き最終日より前に、受取方式を先に確認するのが最短ルートである。
投資信託の分配金 受取型と再投資型の違い
投資信託は、国内ETFより誤解が増えやすい。分配金まわりは特に。
まず分配金の「中身」は、大きく2種類ある。
普通分配金は、運用で増えた利益から出る分配金。課税口座だと税金がかかるが、NISAなら日本の税金はかからない。
元本払戻金は、利益ではなく「自分の元本を返しているだけ」の分配金。これはNISAかどうかに関係なく、そもそも税金がかからない。
元本払戻金が多いと、NISAの節税効果は出にくい。
元本払戻金が多いファンドだと、「NISAだから得した」と感じても、実際は税金が元からかかっていない分配だった、ということが起きる。分配金をもらったら、内訳(普通分配金/元本払戻金)もたまに見ておくとズレにくい。
再投資で枠が減る 年間投資枠オーバーの回避策
投資信託の分配金コースには、現金で受け取る受取型と、同じファンドを自動で買い増す再投資型がある。再投資型は複利が効きやすい反面、新NISAでは別の落とし穴がある。
新NISAでは、つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円が基本の上限となる。分配金の再投資は新規の買付扱いになりやすく、枠の残りが少ないと年内に枠を超える。枠を超えた再投資分が、証券会社の仕様によって課税口座で買い付けられると、意図せず課税資産が増え、管理が複雑になる。
回避策は次のどれかになる。
・年の買付を上限ぴったりにしないで、少し余白を残す
・分配が出にくいタイプのファンドを選ぶ
・年末が近い時期は受取型にして、枠の計算を崩さない
再投資で枠が減る 年間投資枠オーバーの回避策
投資信託の分配金コースは2つある。
現金でもらう「受取型」と、分配金で同じ投信を自動で買い増す「再投資型」。
再投資型はラクだし、増えた分もまた運用に回る。いわゆる複利が効きやすい。
ただし新NISAだと、ここに落とし穴がある。
再投資は追加で買った扱いになりやすい。だからNISAの年間枠を勝手に消費する。
新NISAの年間上限は、
・つみたて投資枠:年120万円
・成長投資枠:年240万円
この範囲でしか、その年はNISAで買えない。
たとえば年240万円ギリギリまで買っていて、年末に分配金が出て再投資が走るとする。
この再投資分も「買付」なので、枠を超える可能性が出る。
そして枠を超えた分を、証券会社の仕様によっては
課税口座(特定口座など)で自動購入してしまうことがある。
結果として「新NISAで運用してるつもりだったのに、気づいたら課税資産が混ざる」。これが面倒の正体。
ここだけ押さえる:再投資型=NISA枠を自動で削る。枠が足りないと課税口座に着地することがある。
回避策は次のどれか。
・年の買付を上限ぴったりにしないで、少し余白を残す(再投資の分の席を空ける)
・分配が出にくいタイプのファンドを選ぶ(そもそも再投資が発生しにくい)
・年末が近い時期は受取型にして、枠の計算を崩さない(勝手に買われる事故を止める)
この整理で十分。
「再投資=自動で買付=枠を食う」を知ってるだけで、事故はかなり減る。
米国ETFの配当 外国税10パーセントと外国税額控除の関係
海外ETF、特に米国株ETFでは、入金額が想定より少なくて驚く人が多い。新NISAの非課税は日本の税金が対象で、現地の源泉税までは消えない。
一般に米国株や米国ETFの配当は、日米租税条約の軽減税率が適用されると米国で10パーセント程度が源泉徴収される。課税口座なら日本側でも課税されるため、確定申告で外国税額控除を使い、二重課税の一部を調整できることがある。
しかしNISAは日本側が非課税で、日本で課税が発生しないため、外国税額控除の出番がない。つまりNISAで米国ETFを持つ場合、外国税はコストとして残りやすい。この前提を知っているだけで、不要な不安や問い合わせが減る。
W-8BENの期限切れで30パーセントになるケースと対策
米国投資で重要なのがW-8BENである。これは米国の非居住者であることを示し、源泉税率を軽減税率にするための手続きだ(米国内国歳入庁 W-8BENの案内)。多くの証券会社ではオンラインで手続きが組み込まれているが、期限管理が盲点になる。
W-8BENは一定期間で更新が必要になり、期限切れや未提出の状態だと、配当の源泉税率が高くなり30パーセントが差し引かれる可能性がある。差額を取り戻す手続きは一般の個人には負担が大きい。対策はシンプルで、証券会社からの重要なお知らせを見落とさないこと、米国税務手続きのステータスが提出済みになっているかを定期的に確認することだ。長期保有ほど効いてくる。
失敗しやすい6パターンとチェックリスト
よくある失敗は、仕組みを知らないというより、設定が初期値のままというケースが多い。
失敗例
・口座開設時に受取方式を確認せず、銀行受取のまま始めた
・権利確定が近いのに慌てて買い、設定変更が間に合わなかった
・投信の再投資で枠が足りず、課税口座に自動で買われた
・米国ETFの配当が少ないと感じ、日本の税金と勘違いした
・W-8BEN更新通知を見落として税率が上がった
・サブ口座で受取方式を変えてしまい、他社のNISAまで連動して変わった
ここまで読んだ時点で、最初のチェックリスト3点をもう一度見て、該当しそうなものがあればすぐ確認したい。
まとめ 買う前と権利確定日前に確認する
新NISAの分配金でまず守るべき要点は次の3つである。
・国内ETFや国内株は、受取方式を株式数比例配分方式にする
・海外ETFは新NISAでも外国税が残る前提で、手取りを見積もる
・投資信託の再投資は枠を消費し、枠超過で課税口座が混ざることがある
面倒に見えるが、設定の確認は一度やれば効果が長く続く。買う前、または権利確定日前にチェックする習慣をつけると、無駄な課税を避けやすい。



