XLIの中身を見る目的は、「何となく工業株に分散しているはず」で済ませないことだ。本記事のデータは2026年3月時点のもの。上位銘柄、業種配分、入替ルールを押さえると、このETFが自分のポートフォリオに何を足し、何を足さないのかが見えてくる。
ここだけ押さえる XLIは「米国の広い産業全体」ではなく、S&P500のうち資本財・輸送など工業系に属する大型株中心の束だ。上位10銘柄で約39.7%を占め、航空宇宙・防衛と機械の比重がかなり大きい。(2026年3月5日時点)
データの取得日と一次情報の確認場所
本記事のデータは2026年3月時点。断面データとして読む前提なので、「この日にどういう顔ぶれだったか」を把握するために使う。日々の微差を追う記事ではない。
XLIの公式ページでは、基準価額、純資産総額、総経費率、組入上位銘柄、業種別構成比率まで確認できる。State Streetの日本語ページには、2026年3月5日現在の組入上位銘柄と業種別比率、2026年3月6日現在の基本情報が掲載されている。
確認場所は3つで十分だ。
S&P Dow Jones Indices「Industrials Select Sector」
なお、XLI自体はNYSE Arca上場の米国ETFで、東証上場ETFではない。そのためXLIを調べる際は、東証ページを探し回らず、State StreetとS&Pの一次情報を見ることになる。探す場所を混同すると、そのまま迷子になる。
上位10銘柄と集中度
上位10銘柄は次の通り。
| 順位 | 銘柄 | 組入比率 |
|---|---|---|
| 1 | GE Aerospace | 6.54% |
| 2 | Caterpillar | 6.27% |
| 3 | RTX Corporation | 5.19% |
| 4 | GE Vernova | 4.20% |
| 5 | Boeing | 3.30% |
| 6 | Uber Technologies | 2.97% |
| 7 | Union Pacific | 2.93% |
| 8 | Honeywell International | 2.87% |
| 9 | Deere & Company | 2.82% |
| 10 | Eaton Corp. | 2.61% |
上位10社の合計は39.70%。1社依存が極端に強いETFではないが、上位数社が値動きにかなり影響する水準ではある。79銘柄保有という数字だけ見て「かなり分散している」と判断するのは雑で、上位10社で約4割を占めるという事実と合わせて読む必要がある。
なぜこの顔ぶれになるのか。理由は指数ルールにある。XLIの連動対象は、S&P500採用銘柄のうちGICSでインダストリアルズに分類される企業群だ。米国市場の工業株すべてではなく、S&P500に入る大型株の工業セクターが母集団になる。だからGE Aerospace、CAT、RTXのような時価総額の大きい銘柄が自然に上位に来る。中小型の産業株や、S&P500に未採用の企業を幅広く拾う設計ではない。
判断の軸はこうなる。工業セクターの大型主力企業にまとめて乗りたいなら、XLIの設計は素直に合う。中小型まで含めた産業セクターの厚みがほしい、あるいは上位集中度をもっと薄めたいなら、XLIだけでは役割が足りない。銘柄数ではなく、上位集中度と母集団の狭さで判断する。
S&P Dow Jones Indices「Industrials Select Sector」
セクター(業種・分野)比率と偏りの読み方
業種別構成比率は以下の通り。State Streetの表示はGICSのサブ業種寄りの粒度なので、ここではそのまま読む。
| 業種 | 比率 |
|---|---|
| 航空宇宙・防衛 | 27.26% |
| 機械 | 20.58% |
| 電気設備 | 10.85% |
| 陸上運輸 | 9.74% |
| 建設関連製品 | 5.52% |
| 商業サービス・用品 | 5.36% |
| 専門サービス | 4.64% |
| コングロマリット | 4.45% |
| 航空貨物・物流サービス | 3.78% |
| 建設・土木 | 3.07% |
| 商社・流通業 | 3.00% |
| 旅客航空輸送業 | 1.77% |
注目すべきは、航空宇宙・防衛と機械だけで47.84%を占める点だ。XLIは見た目よりかなり「防衛・設備投資・産業機械」の色が強い。景気敏感セクターの中でも、消費よりは設備投資、物流、インフラ更新、航空防衛予算の影響を受けやすい構成になっている。
この偏りの意味ははっきりしている。景気拡大局面や設備投資回復、インフラ需要、防衛関連支出が追い風になりやすい一方、景気減速や企業の設備投資抑制、輸送需要の鈍化には弱くなりやすい。XLIはS&P500の工業株なので、景気敏感でも超小型の高リスク株よりは大型優良株寄りだ。これは長所でもあり、取りこぼしでもある。
ポートフォリオへの影響で考えると、XLIを足すのは「米国株コア」に対して景気敏感な資本財・輸送の厚みを加える行為だ。すでにS&P500連動や全米株を厚く持っている人がXLIを加えれば、工業セクターの比率を意図的に上乗せする形になる。防衛や機械への偏りを自覚せずに「分散のため」と入れると、ただのセクターベットになる。そこを曖昧にしたまま持つのは避けたい。
入替ルールと構成が変わるタイミング
XLIの中身は、運用者の裁量で自由に入れ替わるわけではない。S&P500採用銘柄のうちGICSでインダストリアルズに分類される企業で構成される仕組みなので、親指数であるS&P500の採用・除外と、GICSの分類変更が主な変化要因になる。
ウェイト面では、Select Sector系指数は修正時価総額ベースで組まれ、四半期ごとにリバランスが行われる。普段は大型株の値動きで比率が動き、四半期の節目で比率が整えられる、そのくらいのイメージで見ておけばいい。
注意したいのは、「構成が変わった=悪化」と短絡しないことだ。上位銘柄が入れ替わった場合、確認すべきは順に3点ある。S&P500側の採用・除外なのか。GICS分類変更なのか。時価総額や株価変動で自然に順位が変わっただけなのか。この順で見れば、ETFの設計思想が崩れたのか、設計通りに動いたのかを分けられる。
実務上の確認手順は固定でいい。まずState Streetの組入上位銘柄ページで顔ぶれを確認する。次にS&Pの指数ページで、対象セクターと分類ルールを確認する。大きな違和感があれば、四半期のリバランス時期と親指数の変更有無を当たる。これで大半は説明がつく。
S&P Dow Jones Indices「Industrials Select Sector」
よくある誤解
「取得日が2026年3月時点と書いてあるなら、すぐ古くなるから価値がない」と思う人は多い。これは半分だけ正しい。確かに組入比率の小数点は時間とともに動く。だがこの記事の価値は今日の小数点そのものではなく、XLIが何を母集団にして、どの業種に偏り、どういうルールで中身が変わるかを理解できる点にある。そこを掴めば、次に自分で一次情報を見たときに迷わない。
確認手順は固定だ。まずState Street XLI公式ページ(日本語)で組入上位銘柄と業種別構成比率を見る。次にS&P Dow Jones Indices「Industrials Select Sector」で、対象がS&P500のインダストリアルズであることを確認する。東証ページを探し回らず、State StreetとS&Pだけ見る。この順番を守れば、情報の迷子にならない。
まとめ
XLIの中身は、米国工業株を広く全部持つ設計ではない。S&P500の工業セクター大型株を、航空宇宙・防衛と機械に厚めで持つETFだ。2026年3月5日時点では上位10銘柄で39.70%、業種では航空宇宙・防衛と機械でほぼ半分を占める。確認先はState Streetの組入ページとS&Pの指数ページ、この2つで十分。次は分配金の受け取り方まで整理した(分配金/利回り)へ進む。
XLI(資本財セレクト・セクター SPDR)
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「何となく工業株に分散している」という誤解を解く。巨大企業と特定のセクターに集中する、このETFの本当の姿を可視化します。
💡 データの読み方と一次情報
本ダッシュボードは、XLIが特定の日にどのような顔ぶれであったかを把握するための断面データ(2026年3月時点)です。XLIは米国上場ETFであるため、日本の証券取引所の情報ではなく、以下の一次情報を直接確認することが正確な分析の第一歩です。
State Street 公式ページ
基準価額、純資産総額、組入上位銘柄、業種別比率の確認元。日本語版と米本国版が存在します。
S&P Dow Jones Indices
連動指数「Industrials Select Sector」の算出ルールや、構成銘柄の母集団(S&P 500)の定義を確認する場所です。
上位10銘柄の集中度分析
XLIは「工業セクター全体を広く薄く持つ」ETFではありません。約79銘柄を保有していますが、S&P 500の時価総額加重平均ルールにより、上位10社だけで全体の約4割を占めるトップヘビーな構造を持っています。下のグラフのバーをクリックして、詳細を確認してください。
S&P 500に属する大型株が母集団となるため、時価総額の巨大な企業が自然と上位にランクインします。中小型株の動きは全体のパフォーマンスにほとんど影響を与えません。
セクター(業種)の偏りを読み解く
資本財・工業といってもその内訳は様々です。XLIの最大の特徴は、「航空宇宙・防衛」と「機械」の2大セクターへの極端な偏りです。この偏りが、どのような経済環境で強み・弱みとなるかを理解することが重要です。
二大分野の突出
47.84%航空宇宙・防衛(27.26%)と機械(20.58%)でほぼ半分を占めます。XLIは見た目以上に「防衛・設備投資・産業機械」の色が濃いETFです。
インフラ・物流の基盤
20.59%電気設備(10.85%)と陸上運輸(9.74%)がそれに続きます。インフラ更新や大規模な物流網の動きに連動しやすい構造です。
⚠️ 景気感応度への影響
消費者の動向よりも、**「企業の設備投資」「物流需要」「インフラ更新」「国家の防衛予算」**の影響を強く受けます。景気拡大期やインフラ投資策には強い一方、景気減速時の企業の投資抑制には極めて脆いという特徴があります。
運用ルールとポートフォリオへの活用
XLIの中身が変化するメカニズムを理解することで、単なる「工業株のパック」ではなく、意図を持った投資ツールとして活用できるようになります。タブを切り替えて詳細を確認してください。
機械的なリバランス
XLIの構成銘柄は運用者の主観で選ばれるわけではありません。インデックスの厳格なルールに基づき、以下の条件で機械的に決定・調整されます。
-
✔️
S&P 500の構成銘柄であること 米国を代表する大型株のみが対象。
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✔️
GICS分類が「インダストリアルズ(資本財)」であること 世界産業分類基準に基づく厳密なセクター分け。
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四半期ごとのリバランス 修正時価総額ベースで四半期の節目に比率が再調整されます。
中身が変わる3つの理由
構成銘柄や比率が変化した際、「ETFが悪化した」と短絡的に判断せず、以下の3つのどの要因によるものかを確認する手順を癖づけましょう。
S&P500の入替
親指数であるS&P500への新規採用、または除外による直接的な影響。
GICS分類変更
企業の事業内容変化に伴う、情報技術や一般消費財セクター等からの移動。
時価総額の変動
日々の株価変動により、自然と上位・下位の順位が入れ替わる現象。
ポートフォリオ戦略の結論
XLIは「米国を代表する資本財・防衛・機械の大型エリート集団」です。自身のポートフォリオの目的に合致しているか確認してください。
⭕ 適合するニーズ
米国株コア(S&P 500等)を既に保有しており、意図的に景気敏感な「資本財」「設備投資」「防衛」セクターの厚みを上乗せしたい場合。
❌ 注意すべき活用法
防衛や機械への極端な偏りを自覚せず、単なる「リスク分散」の目的で追加すること。中小型株への分散効果も期待できません。



