2631・2632・534Aは、どれも東証で円で買えるNASDAQ100系ETFである。だが、中身は同じではない。2631は無ヘッジ、2632は為替ヘッジあり、534Aは無ヘッジに加えて配当込み指数へ連動する設計で、しかも2026年3月19日上場予定の新顔である。比較の軸を間違えると、選び方が一気に雑になる。
為替の振れを抑えたいなら2632、為替込みでNASDAQ100を持ちたいなら2631か534Aが候補になる。ただし、2631と534Aは「どちらも無ヘッジ」だけでは片づかず、指数仕様と上場後の売買実績まで見て決めるべきである。
まず論点を整理する|何で比べるか
この3本は、ぱっと見ではかなり似ている。だが、実務で効く論点は6つある。指数の仕様、保有コスト、分配の出し方、NISAで使えるか、為替の影響を受けるか、そしてどの市場でどの通貨で売買するかである。ここを先に揃えないと、あとで「安いから」「新しいから」で誤る。
以下は2026年3月13日時点で公開されている各社資料・JPX・投資信託協会の情報をもとにした整理である。534Aはまだ上場前なので、売買実績や実際のスプレッドはこの時点では確定していない。
| 論点 | 2631 | 2632 | 534A |
|---|---|---|---|
| 連動する指数 | NASDAQ100指数(円換算ベース) | NASDAQ100指数(円ヘッジ・円換算ベース) | NASDAQ100指数(配当込み、当社円換算ベース) |
| 信託報酬 | 年0.22%税込 | 年0.22%税込 | 年0.11%税込 |
| 分配頻度・分配設計 | 年2回、毎年6月8日・12月8日 | 年2回、毎年6月8日・12月8日 | 年2回、毎年4月15日・10月15日、配当等収益の全額分配を原則 |
| NISA対応状況 | 成長投資枠対象 | 成長投資枠対象 | 2026年3月19日から成長投資枠取扱可能予定 |
| 為替リスクの有無 | あり | 抑える設計 | あり |
| 東証上場か米国上場か | 東証上場・円建て売買・日本時間 | 東証上場・円建て売買・日本時間 | 東証上場予定・円建て売買・日本時間 |
この表でまず見るべきは、3本とも「NASDAQ100系」ではあるが、2631と2632はMAXISの既存2本、534Aは新規上場の低コスト商品だという点である。つまり、今回は単純な横並び比較ではなく、「ヘッジの有無」と「指数仕様と上場実績」をどう扱うかが核心になる。
参照:MAXISナスダック100上場投信(商品ページ)、MAXISナスダック100上場投信(為替ヘッジあり)(商品ページ)、NZAM 上場投信 NASDAQ100(為替ヘッジなし)(商品ページ) 。
為替ヘッジと指数仕様の違いを読む
いちばん重要なのはここである。3本とも投資対象の大枠はNASDAQ上場の非金融大企業100社だが、2631は円換算ベースの無ヘッジ、2632は円ヘッジ付き、534Aは無ヘッジで、しかも「配当込み、当社円換算ベース」の指数に連動する。見た目は似ていても、比べているベンチマークが完全に同一ではない。
2632が向くのは、円で生活し、円ベースの値動きをできるだけ安定させたい人である。NASDAQ100そのものの値動きは大きいが、さらに円高で評価額が削られるのが嫌なら、ヘッジありを選ぶ理由はある。逆に、長期で見てドルも含めて持つ前提なら、2631や534Aの無ヘッジを外す理由はない。
ただし、2631と534Aは「どちらも無ヘッジだから同じ」とは言えない。534Aは配当込み指数連動で、信託報酬も低い。一方で、2026年3月19日上場予定の新規ETFであり、現時点では実際の売買のしやすさや乖離の出方を確認できない。2631は既に上場実績があり、比較の土台がある。この差は小さくない。
要するに、為替を消したいなら2632、為替を受け入れるなら2631か534Aで、その先は「既存実績を取るか、新しい低コスト設計を取るか」の分岐になる。ここを曖昧にすると、比較記事を読んでも結局決められない。
参照:JPXの2631銘柄概要、JPXの2632銘柄概要、NZAM新規上場資料 。
コストの実態|信託報酬だけで判断しない
数字だけ見れば、2631と2632は年0.22%税込、534Aは年0.11%税込で、534Aが半分である。ここだけ切り取れば534Aが有利に見える。だが、それだけで決めるのは雑である。ETFの実際の負担は、信託報酬だけでは終わらない。売買時のスプレッド、基準価額とのズレ、売買手数料、そしてヘッジ商品の場合はヘッジに伴うコストや追随のズレも見る必要がある。
実績面では、MAXISの2本はすでに規模がある。2026年3月13日時点で、2631の純資産総額は約286.23億円、2632は約179.67億円である。一方の534Aは3月19日上場予定で、まだ売買実績がない。つまり、コストの見かけだけなら534A、実績込みの執行コストまで考えるなら2631・2632にも分がある。
2632については、ヘッジありだから安心とだけ言うのも危ない。為替変動を抑える代わりに、ヘッジの維持に伴うコストや、ヘッジ付き指数への追随差を受ける可能性がある。円資産としての見やすさを買う代わりに、何も払わずに済むわけではない。
結論として、信託報酬は入口にすぎない。まず方針を決め、そのうえで実際に買う段階では板の厚さ、iNAVとのズレ、売買代金を確認する。特に534Aは上場直後の実売買データを見てから評価した方が安全である。焦って最安だけで飛びつく必要はない。
参照:MAXISの基準価額一覧、JPXのiNAV解説、NZAM ETF一覧 。
目的別の使い分け
コアとして長期保有するなら、まず「NASDAQ100をコアにしてよいのか」を先に疑うべきである。NASDAQ100は米国の非金融大型株100社に寄る指数で、広く世界全体を持つ商品ではない。ここを理解したうえでなおNASDAQ100を中核に据えるなら、為替を受け入れるなら2631か534A、円ベースの値動きを少しでもならしたいなら2632という順で考える。
分配金を受け取りたいなら、分配の回数と基準日を先に見る。2631と2632は毎年6月8日・12月8日、534Aは毎年4月15日・10月15日である。回数はどれも年2回なので、差が出るのは「いつ受け取りたいか」と「新規上場の534Aの実績をどこまで待てるか」である。
NISAの成長投資枠で使うなら、2631と2632は既に対象で、534Aは2026年3月19日から取扱可能予定である。したがって、2026年3月13日時点で今すぐ枠を使いたいなら、候補は実質的に2631か2632になる。534AをNISAで使う話は、上場後の売買実績を見ながらで遅くない。
為替リスクを抑えたいなら、これは2632でほぼ決まりである。2631と534Aはどちらも無ヘッジなので、NASDAQ100の値動きに加えてドル円も効く。円高で評価額が削られても持ち続けられるかが曖昧なら、無ヘッジを選ぶ理由は弱い。
取り崩し期に入っているなら、生活通貨が円である以上、2632の意味は大きくなる。評価額のブレを少しでも減らしたい局面では、ヘッジありが合う。一方で、ヘッジコストや純資産規模、売買条件もあるので、取り崩し期だから自動的に2632とはならない。円キャッシュの必要時期が近いかどうかで決めるべきである。
参照:投資信託協会の成長投資枠対象商品リスト、JPXの新規上場承認、NZAM 上場投信 NASDAQ100(為替ヘッジなし)商品ページ 。
534Aはどこで使うか
534Aの役割ははっきりしている。東証で円で買える無ヘッジNASDAQ100 ETFがほしい、しかも信託報酬はできるだけ下げたい、という人の受け皿である。商品設計だけ見れば面白い。だが、2026年3月13日時点ではまだ上場前で、実際の板・スプレッド・乖離は見えない。ここを無視して「半額だから乗り換え」と判断するのは早い。
逆に言えば、上場後に流動性が付き、乖離も落ち着くなら、2631に対する強い対抗馬になり得る。無ヘッジNASDAQ100を東証で持ちたい人にとって、2631は実績、534Aは低コストという住み分けになる可能性がある。現時点では、可能性はあるが確定ではない。ここは見誤らない方がよい。
参照:534AのJPX特集ページ、NZAM新規上場資料 。
どれを選ぶかの判断フロー
まず、円高・円安まで抱えてよいかを決める。抱えたくないなら2632である。ここが曖昧なまま無ヘッジを買うと、下がった理由を相場のせいにしやすい。実際には為替で削られているだけ、ということが起こる。
次に、無ヘッジでよいなら、既存実績を取るか、新規低コストを取るかを決める。すぐ買いたい、流動性の確認が取れている方がよいなら2631。上場後の売買条件を確認したうえで、低コストの534Aを評価したいなら534Aである。2026年3月13日時点では、534Aを2631と完全に同列には置けない。まだ上場していないからである。
NISAの成長投資枠で今すぐ使うなら2631か2632、3月19日以降でよいなら534Aも候補に入る。結局どちらでもよいケースもある。たとえば、無ヘッジ・東証・円建て・NASDAQ100という条件だけが重要なら、2631と534Aは最終的にかなり近い選択肢になり得る。その場合は、上場後の実売買データを見てから決めればよい。無理に今日結論を出す必要はない。
参照:JPXの2631銘柄概要、JPXの2632銘柄概要、投資信託協会の成長投資枠対象商品リスト 。
よくある誤解
「信託報酬が低い方が絶対に得だ」という見方は、ETFでは半分だけ正しく、半分は間違いである。たしかに公表コストだけ見れば534Aは有利である。だが、ETFの現実の負担は、保有コストだけでなく、売買時のスプレッドや市場価格と基準価額のズレでも決まる。しかも534Aは2026年3月13日時点でまだ上場前で、そこを実績で点検できない。2632ならさらに為替ヘッジ由来のコストや追随差も無視できない。だから実際には、「信託報酬を見るな」ではなく、「信託報酬だけで終わるな」が正しい。やるべきことは簡単で、方針を決めたあとに、板・iNAV・売買代金を確認することである。
まとめ
2631・2632・534Aの比較は、単なる「安い高い」の話ではない。先に為替ヘッジの要否を決め、そのあとで指数仕様、上場実績、実売買コストを見るのが順番である。保有を続ける前提が崩れる条件は、2631・2632・534Aそれぞれの継続条件記事で個別に確認してほしい。




