日経225に連動する国内ETFを比べると、3本ともかなり似て見える。だが、実際の比較では「日経225かどうか」だけを見ても足りない。1321と1329は配当込み指数に連動し、1346は価格指数に連動する。この違いに、分配回数、信託報酬、純資産、売買のしやすさを重ねて見ないと、選び方を誤る。
どれが一番優れているかではない。配当込みで長く持ちたいのか、年2回の分配を重く見るのか、純資産の厚みや売買の慣れやすさを優先するのかで、向く銘柄は変わる。
まず論点を整理する|何で比べるか
この3本は、全部「日経225に乗るETF」と言ってしまえばそこまでだ。だが、その整理は雑すぎる。見るべきなのは、何に連動しているか、持っている間に何のコストがかかるか、分配金をどう受け取る設計か、NISAで使えるか、為替の影響を受けるか、そして日本時間で円建てで売買できるかである。ここを先に並べると、比較の軸がぶれにくい。
| 論点 | 1321 NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 1329 iシェアーズ・コア 日経225 ETF | 1346 MAXIS 日経225上場投信 |
|---|---|---|---|
| 連動する指数 | 日経平均トータルリターン・インデックス | 日経平均トータルリターン・インデックス | 日経平均株価 |
| 信託報酬(税込・年率) | 0.10384% | 0.0495%程度 | 0.12% |
| 分配頻度・分配設計 | 年1回(毎年7月8日) | 年2回(毎年2月9日・8月9日) | 年2回(1月・7月の実績掲載) |
| NISA対応状況 | 成長投資枠対象 | 成長投資枠対象 | JPX一覧で長期投資向け表示あり |
| 為替リスク | なし | なし | なし |
| 上場市場・売買通貨 | 東証上場・円建て | 東証上場・円建て | 東証上場・円建て |
この表でまず見えるのは、為替や上場市場では差がほぼないことだ。3本とも東証で円建て売買ができ、日本株ETFなので為替リスクもない。つまり、この比較で本当に効いてくるのは「指数の違い」「分配回数」「コスト」「純資産の厚み」である。ここを無視して、名前の好みやなんとなくの知名度で決めるのは雑である。
配当込みか価格指数かの違いを読む
この比較でいちばん重要なのは、1321と1329が日経平均トータルリターン・インデックスに連動し、1346が日経平均株価に連動している点である。日経平均トータルリターン・インデックスは、日経平均株価に配当を加味し、その配当を再投資した前提の指数だ。一方で日経平均株価は、あくまで価格だけの指数である。
この差は、短期の値動きだけ見ていると分かりにくい。だが、長期保有では無視しにくい。なぜなら、日本株は配当を出す企業が多く、価格だけを見る指数と、配当込みで再投資した指数では、積み上がるリターンの見え方が違ってくるからだ。1321と1329は、その配当込みの値動きを基準にしている。長期で「実際の株主リターンに近い形」を意識するなら、この2本のほうが発想としては自然である。
では1346が不利かというと、そう単純でもない。日経平均株価はニュースや証券アプリで最も見慣れた価格指数であり、値動きの確認が直感的だ。価格指数にそのまま連動するETFのほうが、日々の比較や理解がしやすいと感じる人もいる。また、分配金を受け取る運用を前提にしていて、「配当を指数内で再投資した形の見え方」よりも「実際に受け取る分配と価格の動き」を分けて捉えたい人には、1346のほうが感覚に合うこともある。
要するに、配当込みで長期の実質リターンを意識するなら1321か1329が候補になりやすい。逆に、日経平均株価そのものへの連動や、価格指数ベースの分かりやすさを重く見るなら1346も選択肢に残る。ここを曖昧にして「どれも日経225だから同じ」と片づけるのが一番まずい。
コストの実態|信託報酬だけで判断しない
信託報酬だけを見れば、1329が年0.0495%程度で最も低く、1321が0.10384%、1346が0.12%で続く。数字だけなら1329がかなり有利に見える。実際、長期保有で運用コストを抑えたい人にとって、この差は無視しづらい。
ただし、ETFの実際のコストは信託報酬だけでは終わらない。買うときと売るときには、板の厚さや気配の狭さ、つまりスプレッドの影響を受ける。さらに、指数とのズレを見るなら乖離率も確認が必要だ。1321の公式ページでは乖離率推移も確認でき、JPXのETF一覧では3本ともマーケットメイカー表示がある。つまり、売買のしやすさはある程度支えられているが、約定時点の板の状態までは固定ではない。実務では、実際の注文画面で気配差を見て判断するほうが正確である。
さらに、純資産の厚みも見ておきたい。1321の純資産総額は2026年3月10日時点で約14兆5924.5億円、1329は2026年3月10日時点で約1兆6237.8億円、1346は商品ページの表示で約3兆3707.73億円である。純資産が大きいほど絶対安心とは言わないが、長く使われてきた主力ETFかどうかを見る材料にはなる。とくに大口で売買する人、長期で機械的に積み上げたい人にとっては、無視しにくい差である。
この3本には為替コストはない。全部東証上場の円建て商品だからだ。つまり、米国ETF比較で必要になるドル転コストや為替スプレッドの悩みはここでは基本的に発生しない。だからこそ、この比較では「信託報酬の差がそのまま効きやすい」と考えやすいが、それでも売買時のスプレッドと板の厚さは無視しないほうがよい。
目的別の使い分け
コアとして長期保有するなら、まず1329が有力候補になる。理由は明快で、日経平均トータルリターン・インデックス連動で、信託報酬が3本の中で最も低いからだ。長く持つほど、年率コスト差は効いてくる。反対に、純資産の圧倒的な厚みや長い定番性も重く見るなら1321も十分候補に残る。コア用途でも「低コスト優先」か「主力ETFとしての厚み優先」かで分かれる。
分配金を受け取りたいなら、年2回決算の1329か1346が見やすい。1321は年1回なので、受取頻度を重視する人にはやや物足りない可能性がある。逆に、分配回数が少ないほうが管理しやすい、再投資も年1回でよいと考えるなら1321でも困らない。分配金生活のような発想に寄せるなら、年2回のほうが実務では扱いやすい。
NISAの成長投資枠で使うなら、1321と1329は公式ページで対象表示が確認できる。1346もJPX一覧で長期投資向け表示があり、選択肢から外れる商品ではない。ただ、この3本の比較でNISA向きかどうかよりも重要なのは、NISA口座で何を優先するかだ。非課税口座で長く持つなら、やはりコスト差と指数の違いが後から効きやすい。
為替リスクを抑えたいなら、3本とも条件は同じである。ここでは優劣はつかない。全部日本株ETFで、東証上場・円建て売買である。為替を避けたいからこの3本から選ぶ、という考え方は正しいが、その条件では3本の差は埋まらない。つまり、この条件だけでは選べない。
取り崩し期に入っているなら、分配回数と売買のしやすさを重く見たほうがよい。現金化の頻度が増えるなら、年2回分配の1329・1346は候補になりやすい。一方、取り崩しは自分で必要額だけ売却すればよいと割り切るなら、分配回数よりも信託報酬の低い1329が使いやすい。取り崩し期だから高分配が正義、という発想は雑で、実際は「分配を受け取るか、自分で売るか」の運用ルール次第である。
どれを選ぶかの判断フロー
まず、「配当込み指数に連動していて、長期コストも抑えたい」と考えるなら1329が第一候補になる。日経225への基本的な投資目的が同じなら、この条件では1329を外しにくい。
次に、「配当込み指数がよく、なおかつ純資産の厚みや定番性も重く見たい」なら1321が候補になる。信託報酬では1329に譲るが、純資産規模では1321がかなり大きい。大きな主力ETFを好むなら、この差は無視しなくてよい。
そして、「日経平均株価そのものへの連動が分かりやすい」「年2回分配で整理しやすい」「価格指数ベースで考えたい」なら1346が候補になる。コストだけで見れば有利とは言いにくいが、理解しやすさや使い方との相性で残る銘柄である。
結局どれでもよいケースもある。たとえば、少額で長期保有し、売買頻度も低く、日経225への円建て投資ができれば十分という人なら、1321・1329・1346の差を過度に気にしなくても大勢に影響しないことはある。ただし、その場合でも「配当込み指数か価格指数か」だけは理解したうえで選ぶべきだ。ここを知らずに買うのは、同じに見える商品を中身を見ずに選んでいるだけである。
よくある誤解
「信託報酬が低い方が絶対に得だ」というのは半分だけ正しい誤解である。理由は、ETFでは保有コストのほかに、売買時のスプレッドや板の厚さ、指数とのズレも効くからだ。実際、1329は信託報酬でかなり有利だが、それだけで全員にとって即正解とは言えない。大きな資金を一度に動かす人、純資産の厚みを重く見る人、価格指数連動の分かりやすさを求める人では、評価軸が変わる。では何をするか。まずは信託報酬を起点にしつつ、次に連動指数、分配回数、純資産、実際の注文画面での気配差まで確認して決めるべきである。
まとめ
1321、1329、1346は、どれも日経225に乗るための東証ETFだが、同じように見えて比較の芯は違う。配当込み指数を重く見るなら1321か1329、コストを詰めるなら1329、純資産の厚みなら1321、価格指数の分かりやすさや年2回分配を重く見るなら1346という整理になる。最後は値動きではなく、保有前提が崩れていないかを各銘柄の継続条件記事で点検したい。



