株式ETF(全世界/S&P500/先進国)の選び分け

全世界株・S&P500・先進国株——この3つのどれを選ぶか、あるいは組み合わせるかで迷っている人は多い。地域分散・米国比率・コストの3軸を整理すると、「自分にとってどれが合うか」の判断軸が見えてくる。

3つのETFに優劣はない。米国集中か広い分散かという「どこまでリスクを薄めるか」の選択であり、正解はポートフォリオ全体の設計と自分の許容度によって変わる。

3つのETFは何が違うのか

「全世界株、S&P500、先進国株——どれも似たようなものでは」という感覚は、あながち外れていない。実際、長期リターンの傾向はかなり近い。ただ、中身の構造は明確に違う。

全世界株(世界中の株式を1本で持てるETF。MSCIオール・カントリー等の指数=ルールで作った成績表に連動)は、先進国・新興国を含む約50か国・3000銘柄前後を対象にする。時価総額加重(会社の規模が大きいほど多く持つ仕組み)で構成されるため、米国の比率は60〜65%程度になる。

S&P500は米国の主要500社に絞った指数。米国株だけで構成されるため、地域としての分散(複数に分けてリスクを薄める)は全世界株より狭い。ただし、アップルやマイクロソフトのような多国籍企業が含まれるため、「実質的な地域分散は別の話」という見方もある。

先進国株(MSCI ワールド等に連動するETF)は、新興国を除いた先進国23か国で構成される。米国比率は70%前後と、全世界株より高め。新興国を外した分、ボラティリティ(値動きの大きさ)はやや抑えられる傾向にある。

判断の出発点として、3つの米国比率の違いを頭に入れておくと整理しやすい。全世界株<先進国株<S&P500の順に、米国への集中度が上がる。

米国比率をどう考えるか

「S&P500に集中すべきか、全世界で分散すべきか」は、この記事で一番聞かれる問いかもしれない。これは「米国経済の優位性がこれからも続くかどうか」という予測の話でもあるが、正確に言うと「どの程度の集中リスクを取れるか」という設計の話だ。

過去20年のデータで見ると、S&P500は全世界株を上回るリターンを出してきた。米国テック企業の成長がその主因だ。ただし、2000年代の「失われた10年」(ドットコムバブル崩壊後)のように、S&P500が長期にわたって低迷した時期もある。その時期、新興国株やコモディティは上昇していた。

ここで重要なのは、リターンの高さではなく「自分がどのシナリオに対応したいか」という視点だ。米国の優位性が続くと見るなら、S&P500への集中は合理的な選択になる。一方、米国一極集中への不安が大きく、長期で地域の入れ替わりに備えたいなら、全世界株の方が構造的に対応しやすい。

先進国株はその中間に位置するが、「新興国リスクを取りたくないが、米国だけに絞るのも気になる」という人にフィットしやすい。たとえばすでに日本株や新興国ETFを別で持っているなら、先進国株をコアに置いて補完する設計もある。

コストと流動性——見落としやすい現実的な差

投資判断の話になると理念や思想が前に出がちだが、コストは無視できない変数だ。

信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)の目安を並べると、国内ETFでは全世界株が0.05〜0.07%程度、S&P500連動が0.05〜0.09%程度、先進国株が0.09〜0.10%程度という水準が多い(2024年時点の主要銘柄)。差は小さく見えるが、20年・30年の保有期間で複利的に積み上がるため、長期投資では無視できない差になる。

分類対象地域米国比率の目安信託報酬の目安
全世界株先進国+新興国(約50か国)60〜65%0.05〜0.07%
S&P500米国のみ100%0.05〜0.09%
先進国株先進国23か国(新興国除く)70〜75%0.09〜0.10%

表はあくまで目安であり、銘柄によって異なる。自分が候補にしている銘柄の目論見書で個別に確認するのが確実だ。

流動性については、国内上場ETFの場合はAUM(ETFが運用している資産の総額)とスプレッド(売値と買値の差)が目安になる。AUMが大きく、スプレッドが狭いものほど売買コストは低くなる。S&P500連動の大型ETFは流動性が高い傾向にあるが、全世界株もeMAXIS Slim等の主要銘柄は十分な流動性を持つ。

NISA口座での運用を考えているなら、課税されない分、コスト差の影響は相対的に小さくなる。それでも長期では積み上がるため、0.1%以上の差があれば選択肢の一つに挙げておく価値はある。

「組み合わせ」か「1本」か

3つのETFを組み合わせて持つ必要があるかという問いには、「必要はないが、設計によっては合理性がある」という答えになる。

S&P500と全世界株を両方持つと、全世界株の中にすでに米国が60%以上含まれているため、米国への実質的な比重が上がる。意図的にそうしているなら問題ないが、「分散のつもりで全世界株を買い足したら、実は米国集中が強まっていた」というケースは起きやすい。これはリバランス(配分比率を元の設定に戻す作業)を考えるときにも整理が必要になる点だ。

1本で完結させる場合の考え方はシンプルだ。地域の入れ替わりを自動で追いたいなら全世界株。米国の成長に集中したいならS&P500。新興国を外してやや安定感を求めるなら先進国株。この3択から出発して、別途日本株や債券ETFで補完するかどうかを考えると設計の見通しが立ちやすい。

複数のETFを組み合わせるのは、「全世界株のコアに小型株ETFを加えて露出を増やしたい」「先進国株に新興国をある程度足したい」などの意図がある場合に意味が出る。「なんとなく複数持った方が安心」という理由だけでは、管理コストが上がり、リバランスも複雑になる。

よくある誤解

「S&P500の方が全世界株よりパフォーマンスが良い」という認識から、全世界株を「劣ったもの」と見なすケースがある。過去20年のデータだけを見るとそう見えやすい。米国テック株の急成長がその差を作った期間が長かったためだ。

ただし、これは「これからもそうである」を意味しない。全世界株は米国の比重が下がれば自動的にリバランスされる構造になっており、特定の地域が長期低迷しても指数全体への影響が抑えられる。それを「分散のコスト」と見るか「リスク管理の仕組み」と見るかは、投資の目的と期間による。

では何をするか。「どちらが勝つか」を判断しようとするのではなく、「米国が長期にわたって他地域に負け続けるシナリオが来たとき、自分のポートフォリオは耐えられるか」という問いを先に立てる。その問いへの答えが自分なりに出れば、S&P500か全世界株かの選択は自然に決まる。

まとめ

3つのETFの違いは米国への集中度と、そこに含まれる新興国リスクをどう扱うかに集約される。コストは近年縮まっており、大きな選択理由にはなりにくい。判断の起点は「米国一極集中にどの程度の安心感を持てるか」という自分の設計思想にある。次は「債券ETFをポートフォリオにどう組み込むか」も合わせて読むと、コア設計の全体像が見えてくる。

投資の選択:全世界株 vs S&P500 vs 先進国株

全世界株 vs S&P500 vs 先進国株

3つの主要な投資対象、どれを選ぶべきか迷っていませんか?
「米国への集中度」「リスク許容度」「コスト」の3軸で、あなたの投資スタイルに最適な選択肢を見つけましょう。

3つのETFの構造的違い

これら3つは長期リターンの傾向は似ていますが、中身の構造、特に「米国の比率」が明確に異なります。 以下のタブを切り替えて、それぞれの地域構成と特徴を確認してください。

地域構成比率(米国への集中度)

約50か国に分散。米国比率は約60%。

全世界株 (MSCI ACWI等)

先進国と新興国を含む約50か国・3000銘柄以上に分散投資。時価総額加重により、世界の経済状況に合わせて自動的に比率が調整されます。

米国比率 60〜65%
信託報酬目安 0.05〜0.07%
主な特徴 究極の分散・メンテナンスフリー

分析: 米国一極集中への不安があり、長期的な地域の覇権交代(どの国が強くなるか不明な未来)に備えたい人に最適です。

あなたに合うのは? 簡易診断

「どれが一番儲かるか」ではなく、「どのリスクシナリオに対応したいか」が重要です。
2つの質問に答えて、設計思想の軸を見つけましょう。

Q1. 今後20年、米国経済の「一強」状態は続くと信じますか?

Q2. 新興国(中国やインドなど)の政治・経済リスクは許容できますか?

🇺🇸

あなたにおすすめ:S&P500

米国の成長力を信じる「集中投資」のスタンスが合っています。
過去の実績に基づき、最も高いリターン効率を狙う合理的な選択です。
ただし、「失われた10年」のような長期低迷リスクがあることは理解しておきましょう。

🌏

あなたにおすすめ:全世界株

将来の覇権国がどこになっても対応できる「最大分散」のスタンスが合っています。
米国がもし低迷しても、他の地域が伸びれば自動的にカバーされる「リスク管理の仕組み」を手に入れる選択です。

🏢

あなたにおすすめ:先進国株

新興国の不安定さを排除しつつ、米国一極集中も避けたい「バランス重視」のスタンスです。
米国比率を高めつつ(70%超)、法制度の整った国々に限定することで、心穏やかな運用を目指せます。

コストの現実:小さな差の積み重ね

信託報酬の差は0.1%未満の世界ですが、20〜30年の長期投資では無視できない差になります。 NISA口座なら税金がかからない分、コスト差の影響は相対的に小さくなりますが、それでも「安さは力」です。

信託報酬の目安 (主要銘柄)

「組み合わせ」の落とし穴

よくある誤解

「全世界株とS&P500を両方買えば、もっと分散できる?」

⚠️

重複による米国集中の加速

全世界株の中身の60%以上はすでに米国株です。S&P500を足すと、実質的な米国比率は80〜90%に達し、「分散」のつもりが「集中」になってしまいます。

1本で完結が原則

基本は1本で管理がシンプルになります。組み合わせるなら「全世界株をコアに、サテライトで小型株や特定国を足す」といった明確な意図がある場合のみにしましょう。

結論:正解は「自分の不安」の中にある

過去のデータだけを見ればS&P500が優秀に見えますが、未来もそうである保証はありません。
「米国が負け続けるシナリオが来たとき、自分は耐えられるか?」
この問いへの答えが、あなたが選ぶべきETFを決めてくれます。

※本コンテンツは提供された記事要約に基づき作成されたシミュレーションです。投資判断は自己責任で行ってください。

タイトルとURLをコピーしました