景気の状態やニュースを見て、強そうなセクターに入れ替えればローテーション戦略になる、という発想。 回復期は景気敏感(景気がいいと上がる株)、後退期はディフェンシブ(守りに強い株)といった具合。 図解が用意されているから、これが戦略に見えてしまうのだろう。
この誤解が自然に見える理由もある。 セクターは箱であり、箱を入れ替える行為は分かりやすい。 後から振り返れば、出来事と勝ちセクターは綺麗に線でつながって見える。 だが、その理解だと実際の運用で破綻する。
いつ入れ替えるか。 何を根拠に入れ替えたと言えるか。 間違ったときにどう撤退するか。 ここが空白のままだから、判断が後付けになる。 これでは検証も改善もできない。
この記事の目的は、ローテ戦略を「それっぽい相場観」から切り離すこと。 入替ルールと撤退条件を文章で定義できる状態に持っていく。 読み終わる頃には、シグナルの条件、入れ替える量、負けを小さくする条件を、他人に渡せるレベルで書けるようになるはず。
なぜこの仕組み/ルールが存在するのか
ローテーション戦略にルールが必要な理由はシンプル。 市場が正解の物語を教えてくれないから。 市場にあるのは価格と出来高、それからニュースの断片だけ。 そこから正解を一つに絞り込むことはできない。
ルールがないと、まず再現性がなくなる。 同じ局面に見えても、判断が毎回違えば検証ができない。 次に、運用が続けられなくなる。 売買が増えればコストが積み上がり、利益が削られる。 最後に、自分に嘘をつくようになる。 都合よく記憶を書き換えて、改善が止まってしまう。
最終的に困るのは投資家本人。 勝っている間は自分の相場観が正しいと錯覚できる。 でも負けたときに、どの判断が悪かったかを切り分けられない。 ローテ戦略のルールは、この切り分けを可能にするための設計図といえる。
構造の全体像を描く
自分(戦略設計者)が、何を観測し、何を根拠に売買するかを決める。 市場参加者の資金移動が、セクターごとの強弱を作る。 運用商品(セクターETFなど)は、売買する際のスプレッド(売り買いの価格差)というコストを持つ。 価格形成の場では、荒れた相場になるとこのコストが支配的な変数になる。
ここだけ押さえる: 「価格が動くこと」と「中身を変えること」を分けて考える。
価格は毎日動くけれど、ポジションを毎日変える必要はない。 ローテ戦略は、価格変動の全部に反応するものではない。 資金の流れの変化が続く局面だけを拾う設計にする必要がある。 だから戦略は、観測・実行・保全に分けて文章化しなければならない。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
セクターローテーション戦略とは、同じ市場の中にある複数のセクターを、期待できるリターンやリスクの変化に応じて入れ替えるルールのこと。 なぜこれが必要かというと、市場全体の上げ下げを当てるのではなく、お金の移動という別の次元を取りにいくからだ。
ここで注意したいのは、ローテを「次に上がるセクターを当てるゲーム」と捉えないこと。 実態は、勢いの持続を利用して、勝っている側に寄り続け、負けている側から降り続ける設計になる。
変化の原因は、レジーム(相場の大きな空気感)の変化。 具体的には、お金を借りるコストの変化やインフレの期待、ボラティリティ(値動きの大きさ)などだ。 結果として、セクター間の超過収益(平均より多く得られた利益)が発生する。 戦略の設計とは、この間の変化をどう定義し、どの頻度で入れ替えるかを決める作業に尽きる。
混同しやすいのは、シグナルと理由の違い。 「金利が上がったから金融を買う」というのは理由であって、検証できるシグナルではない。 検証可能にするには、数値で定義する必要がある。 例えば「金融の成績が過去一定期間で上位に入り、その状態が2回継続した」といった条件に落とし込む。 理由は後から作れるが、シグナルは先に置いておかなくてはならない。
さらに、機能が弱まる条件も設計に入れておく。 セクターごとの差が消える局面では、入れ替えは無意味になる。 コストが膨らむ局面では、頻繁な入れ替えは負けに直結する。 撤退条件は、こうした弱点をルールとして埋め込む装置になる。
実際の市場シーンで考える
場面は四半期の初め。 長期金利が短期間で上がり、相場の話題が「成長期待」から「割安さ」に切り替わったとする。 投資家はニュースを見て、成長株が危ないと感じる。 ここで感覚で売買すると、数日後に金利が下がって反発したときに「読みが外れた」と後悔することになる。
同じ場面をルールで動かしてみよう。 自分が見るのは、金利が上がったという物語ではない。 例えば、セクター同士の順位を週に一度チェックする。 その順位が2回連続で上位に残ったものだけを採用し、入れ替えは月に1回に限定する。 もし順位が下に落ちたら、次のタイミングで外す。 これなら、途中の小さな反発で感情的に動かされることはない。
ここに撤退条件を加える。 資産が一番高いところからどれだけ減ったかというドローダウンが一定を超えたら、一時的に現金比率を上げる、と文章で決めておく。 ここまで書いておけば、相場が荒れても「何が起きたら逃げるべきか」を迷わずに済む。
この理解がもたらす判断力
一つ目は、ローテ戦略を当て物から設計物に変えられること。 核となるのは未来予測ではなく、観測できる数字を定義し、コストという制約を組み込むことだ。 これで、負けたときに何が悪かったかを言葉にできる。
二つ目は、撤退条件を弱さの定義として扱えるようになること。 撤退は負けを認めることではない。 戦略が効きにくい場面をあらかじめ決めておき、その通りに行動するだけだ。 これがない戦略は、ただの願望になってしまう。
三つ目は、他人に渡せるルールを書けるようになること。 最低でも、対象にする商品、シグナルの定義、頻度、撤退条件、例外の五つは含めたい。 これらが書けないものは、まだ戦略とは呼べないだろう。 自分の言葉で、淡々と書き出してみるといい。
セクターローテーション戦略の設計図
「それっぽい相場観」から脱却し、入替ルールと撤退条件を文章で定義する。
再現性のある運用のためのインタラクティブ・ガイド。
1. よくある誤解と本来の目的
初心者が陥りがちな「雰囲気ローテーション」と、プロが設計する「ルールベース戦略」の違いを比較します。
なぜ「強そうなセクターに入れ替える」だけでは破綻するのでしょうか?
❌ よくある誤解
🤔- ▪ 「景気が良くなったら景気敏感株、悪くなったらディフェンシブ」という単純な図式で考える。
- ▪ ニュースを見て感覚的に入れ替える。
- ▪ 結果:判断が後付けになり、検証も改善もできない。負けた原因が分からない。
✅ 本記事のゴール
📐- ▪ いつ入れ替え、いつ撤退するかを文章で定義する。
- ▪ 市場は「正解の物語」を教えてくれない。だからこそルールが必要。
- ▪ 結果:再現性が生まれ、コスト管理ができ、負けを小さく切り分けられる。
2. 構造とメカニズムの可視化
ローテーション戦略は「次に上がるセクターを当てるゲーム」ではありません。
資金の流れ(フロー)の持続を利用し、メカニズムとして運用するものです。
下の図の要素をクリックして、各プロセスの定義を確認してください。
上のボックスをクリックして詳細を表示してください。
3. 実践シミュレーション:金利上昇と「ダマシ」
ある四半期の初め、長期金利が急上昇し、成長株(テック)が売られる局面を想像してください。
「感覚派(感情的)」と「設計派(ルールベース)」で、結果がどう変わるか見てみましょう。
投資家タイプを選択
設計派の視点
「金利上昇」というニュース(物語)ではなく、週次の相対順位だけを見ています。
- ① 観測頻度外のノイズ(数日の反発)は無視。
- ② 順位が確定するまで動かない。
- ③ 結果、無駄な往復ビンタ(損失)を回避。
4. 戦略設計チェックリスト
他人に渡せるレベルで文章化できていますか?
以下の5つの要素が定義できていないなら、それはまだ「戦略」ではありません。
どのセクターETF、どの市場を使うかを固定する。
「なんとなく強い」ではなく、計算可能な定義にする。
コストとダマシを防ぐための制約。
「弱さの定義」。戦略が機能しない局面を事前に決めておく。
市場が極端に歪んだ時(スプレッド拡大など)の対応。



