指数は時価総額が大きい企業ほど重みが大きい。だから指数は市場の実態をそのまま写す、という発想だ。
この理解は自然に見える。
株価×発行株式数で企業の大きさが出る。大きい企業ほど市場への影響が大きい。なら指数の比率も大きくなるはず、という考え方になる。
だが実務ではここが破綻する。
指数は市場の全株を理論的に足し上げた平均ではない。実際に運用できる形に整形したルールブックに近い。
市場に存在する株式のうち、市場で買えない株が一定量ある。
そこを無視すると、机上では再現できても現場では再現できない指数になる。
本記事の目的は、フリーフロート調整と投資可能性が、なぜ指数に組み込まれるのかを因果で整理すること。
読後には、同じ時価総額指数でも買える市場をどの程度反映しているかを見抜けるようになるはず。
なぜこの仕組みが存在するのか
指数の設計者が直面する問題は単純。
指数を買う人が増えるほど、指数そのものが壊れかねない。
インデックスファンドやETFの運用会社は、指数の比率通りに買う。
ここで発行済株式ベースの時価総額をそのまま使うと、現場では事故が起きる。
第一に、買えない株を前提にしてしまう。
創業家、親会社、政府、事業会社同士の持ち合いなどで長期固定されている株は、市場に出てこないことがある。
ここだけ押さえる。
指数は「存在する株」ではなく「市場で売買できる株」を基準にしないと再現できない。
第二に、流通している株の量に対して買いが過大になり、価格が歪む。
流通株が少ない銘柄に大きな比率を与えると、指数連動の資金が価格を押し上げやすい。
第三に、再現性が崩れる。
指数と商品のリターンのズレ、つまりトラッキングエラーが拡大する。売買コストも増える。
この問題を避けるために導入されるのがフリーフロート調整。
フリーフロート調整とは何か
フリーフロートとは、市場で実際に売買されうる株式の割合のこと。
固定株を除いた、流通している部分だけを見る考え方だ。
フリーフロート調整とは、
時価総額にこの流通割合を掛けて重みを計算する仕組みを指す。
式で書けばこうなる。
調整後時価総額 = 株価 × 発行株式数 × フリーフロート比率
発行株式数の全部ではなく、実際に市場で取引できる分だけを使う。
それがポイント。
たとえば時価総額1兆円でも、流通しているのが50%なら、指数上は5000億円相当として扱う。
指数は理論上の大きさではなく、買える大きさを基準にしている。
実際の指数でどう使われているか
代表的な時価総額指数の多くは、フリーフロート調整を採用している。
たとえば S&P 500。
米国の大型株500社で構成される指数だが、重みはフリーフロート調整後の時価総額で決まる。
同様に TOPIX もフリーフロートベースで算出される。
以前は全株ベースだったが、段階的に移行された。
つまり、主要指数の多くはすでに投資可能性を織り込んだ設計になっている。
この理解がもたらす判断力
指数の順位=会社の強さ、とは限らないと分かる
指数の重みは、時価総額が大きい順に並べただけじゃない。
市場で買える株がどれだけあるか(フリーフロート)で、重みが削られることがある。
つまり、上位にいる=企業規模が大きい、だけじゃなくて、
上位にいる=流通株が多くて買いやすい、も混ざってくる。
ここが分かると、指数を見たときに
これは企業ランキングじゃなくて、買える市場ランキング寄りだな、と判断できる。
イベントの値動きが「中身」か「需給」か分けられる
大株主の売出し、ロックアップ解除、持ち合い解消。
こういうニュースが出たら、まず疑うのは業績じゃなくてフリーフロートの変更だ。
フリーフロートが増える
→ 指数の重みが上がる可能性がある
→ 指数連動のファンドが買い増す
→ リバランス前後に買いが寄って、株価が動く
この流れを先に置けるようになる。
需給が原因なら、売買タイミングをずらすとか、別のETFに逃げるとか、手が打てる。
指数連動の「見えないコスト」が見える
信託報酬だけがコストじゃない。
指数のルール変更に追随する売買が多いと、売買コストが積み上がる。
フリーフロートが低い銘柄が多い指数は、特にやっかい。
流通が薄いところに無理やり売買が入って、コストとズレが増えやすい。
地味だけど、長期だと効く。



