指数連動なら機械的に同じ銘柄を持つだけ。リバランスが四半期でも年次でも、手数料が同じなら大差ない。
この考え方は自然に見える。
指数はルール通りで、裁量が入らない。だからコストも安定して見える。
しかしここで理解が止まると危うい。
指数連動でも、リバランス頻度が違うだけで売買回数は変わる。売買が増えれば摩擦コストは増える。摩擦は価格表に見えない形でリターンを削る。
経費率が同じでも、売買回数が違えば最終リターンは変わり得る。
本記事の目的は、回転率とコストの関係を因果で整理すること。
読後に持ち帰ってほしい判断軸は二つ。
同じテーマの指数でも、頻度が違えば別物だと見抜けること。
ETFやインデックスファンドを選ぶとき、経費率の外側にあるコストを自分で点検できること。
なぜこの仕組みが存在するのか
リバランスは気分で作られた予定表ではない。
市場構造から必然的に生まれる仕組みだ。
指数は市場を写す鏡ではない。
再現可能な運用ルールそのもの。
指数は常に矛盾を抱える。
市場価格は毎日動く。しかし指数の構成比は目標を持つ。
価格が動けば、構成比は自然にズレる。
ズレを放置すると、指数が意図した性格が変質する。
サイズ、セクター比率、ファクターの露出。
ファクターとは、割安株や高成長株など特定の特徴への偏りのこと。
誰が困るのか。
指数提供会社は説明責任を持つ。
この指数はこういう性格だと言っている以上、放置はできない。
運用会社は指数に追随する商品を売っている。
追随できなければ商品としての信頼が崩れる。
投資家はこの指数に投資しているつもりで資金を出している。
中身が変質すれば前提が崩れる。
だからリバランスが必要になる。
ズレを意図した状態へ戻す復元操作だ。
そしてここに設計変数がある。
それが頻度だ。
頻度は単なる運用都合ではない。
指数の性格をどれだけ厳密に守るかと、どれだけ売買を許容するかのトレードオフを示している。
構造の全体像を描く
リバランス頻度は、売買イベントが起きる回数を決める。回数が増えれば、摩擦コストが増えやすい。
流れを一本にするとこうなる。
まず、指数はルールで構成比を決めている。
市場価格は毎日動くので、放っておくと構成比はズレる。
ズレを戻すタイミングがリバランス。
四半期なら年4回、年次なら年1回。戻す回数そのものが違う。
戻すには売買が必要になる。
比率が増えすぎた銘柄は売る。比率が減りすぎた銘柄は買う。新規採用は買い、除外は売りになる。
この売買が市場に出た瞬間にコストが生まれる。
見えやすいのはスプレッド。買値と売値の差だ。これが取引のたびに効く。
もう一つは、板が薄い銘柄で大口の売買をすると価格が不利に動くこと。
つまり同じ量を買うだけでも、回数が多いほど少しずつ削られる。
結果として、頻度が高いほどこうなりやすい。
構成比のズレは小さく保てる。指数の性格は守りやすい。
その代わり売買回数は増え、回転率も上がり、摩擦コストが積み上がる。
頻度が低いほどこうなりやすい。
売買回数は減るので摩擦は抑えやすい。
その代わりズレは長く放置され、指数が意図した姿から離れやすい。
結局、リバランス頻度は二つのバランスを決めている。
指数の性格をどれだけ厳密に守るか。
売買の摩擦をどれだけ許容するか。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
リバランスは、目標の構成比に戻すための定期的な売買だ。価格が動くと比率はズレる。放置すると指数の性格が変わる。だから戻す。
なお、銘柄入替だけがリバランスではない。入替がなくても、比率を戻すだけで売買は発生する。
回転率は、一定期間にどれだけポートフォリオを動かしたかの目安だ。ざっくり言えば、期間中の売買金額を平均運用資産で割ったものとして捉えればいい。
回転率が重要なのは、売買が増えるほど摩擦が増えやすく、実際のリターンが削られやすいからだ。これはアクティブだけの話ではない。指数が売買を命じるなら、パッシブでも回転率は上がる。
原因の中心はリバランス頻度だ。四半期か年次か。
ここで効いてくる変数は二つある。
- どれだけズレを放置するか
- 売買がいつ、どれだけまとまって起きるか
結果として表に出るのも二つだ。
- 回転率が上がるか下がるか
- 摩擦コストが増えるか減るか
四半期リバランスは、ズレを短い周期で戻す。指数の性格は守りやすい。一方で、戻す回数が増えるので売買イベントが増え、回転率は上がりやすい。
年次リバランスは、ズレを長く放置する。戻す回数が少なく、売買イベントも減るので回転率は下がりやすい。ただし放置が長いぶん、戻すときのズレが大きくなりやすく、1回あたりの売買量が塊になりやすい。
摩擦コストは手数料だけではない。主役は二つある。
ひとつはスプレッド。買うときは高く、売るときは安い。その差を取引のたびに払う。
もうひとつは市場インパクト。大量に買えば上に押し上げ、大量に売れば下に押し下げる。指数連動の売買は同じ方向に同時に動きやすいので、インパクトが出やすい場面がある。
重要なのは、「頻度が高いほど常にコストが悪化する」という単純話ではない点だ。
頻度が高いと回数が増え、スプレッドを払う回数が増える。
頻度が低いと回数は減るが、1回の売買が塊になり、市場インパクトが大きくなる場合がある。
つまり「四半期は高コスト、年次は低コスト」と決め打ちすると外す。頻度は回転率だけでなく、売買の形そのものを変える。
このメカニズムが弱まる条件もある。
大型株中心で流動性が厚い指数なら、売買は市場に吸収されやすく、インパクトは出にくい。逆に小型株や出来高が薄い銘柄が多い指数だと、同じ回転率でもインパクトは重くなりやすい。
加えて、運用会社が変更日に全量を一気に売買するとは限らない。先物で一時的に調整したり、複数日に分散したり、最適化で完全複製を少し崩して摩擦を減らす場合もある。
ここが、指数ルールとコストが機械的に一致しない理由だ。とはいえ、完全に無効化できるわけでもない。どこかでは現物の売買が必要になる。
実際の市場シーンで考える
四半期リバランスの指数に連動するETFを買う場面を想像する。四半期末が近いと、指数は比率のズレを直すために「上がった銘柄を少し売り、下がった銘柄を少し買う」。この売買を運用会社が行い、引け(終値付近)に寄りやすい。終値は指数計算に使われやすく、終値に寄せるほど指数との差を小さくしやすいからだ。
引け前には同じ方向の注文がまとまって出る。売られる銘柄は売りが増え、買われる銘柄は買いが増える。短時間に需給が偏るぶん、値段は普段より動きやすい。売られる側は買い手が薄くなり、買われる側は上の値段まで買いに行きやすい。結果としてスプレッドが広がることもある。
ここで大事なのは、値動きが「情報」なのか「リバランスの需給」なのかを切り分けること。需給由来なら、翌日に歪みが戻って続かないこともある。対策はシンプルで、成行で突っ込まない、指値で入る、時間を分けて買う。気持ち悪いならリバランス日を避けて翌営業日に回す。指数連動は市場に影響しない、と決めつけるのがいちばん高くつく。
この理解がもたらす判断力
同じテーマでも、指数は別物だと気づける。
見るのは銘柄リストの見た目じゃない。
リバランス頻度と、入替・比率修正のルールだ。
四半期でこまめに戻す指数は、姿を保つ代わりに売買が増えやすい。
年次でまとめて戻す指数は、売買は少なめになりやすい代わりに、途中で性格がズレやすい。
回転率を、運用会社の腕じゃなく、指数の設計の結果として読める
回転率が高いと、経費率が低くても実質コストが増えやすい。
回転率が低いと、コストは抑えやすいが、指数の性格がじわじわ変わりやすい。
このズレをドリフトと呼ぶ。
意図した姿から、時間をかけて寄っていく現象だ。
ここは善悪じゃない。
何を優先している設計か、の違い。
売買タイミングを、需給イベントとして扱える
リバランスは予告された売買。
急な値動きを見たら、ニュースより先に、リバランスのタイミングを疑う。そんな場面がある。



