同じ市場や同じテーマの指数なら、パフォーマンスはだいたい同じになるはず、という発想。
指数は市場平均を表す中立な物差し。
運用の違いはせいぜい手数料や誤差の問題。
そう考えるのは自然だ。指数という言葉が平均を連想させるから。
しかし、その理解は実務では通用しない。
指数は平均ではない。ルールブックだ。
何を採用するか。
どう重みづけするか。
いつ入れ替えるか。
この設計が、リターンとリスクの形を決める。
特に時価総額加重と均等加重は、同じ銘柄を見ているようで、中身は別の投資戦略になる。
ここだけ押さえる。
指数は中立な平均ではない。あらかじめ決められた設計図だ。
本記事の目的は、用語を暗記することではない。
指数ルールがパフォーマンスにどう影響するかを、因果で説明できる状態にすること。
読後にできるようになる判断は二つ。
第一に、指数は中立ではなく、ルールの偏りを持つと見抜けるようになること。
第二に、同じ市場を追っているように見えるETFやファンドでも、ルール差で別物だと判断できるようになること。
なぜこの仕組み/ルールが存在するのか
指数は、投資家が市場エクスポージャー(その市場の値動きを丸ごと受け取る立場)を買うための設計図だ。
市場には銘柄が無数にある。
価格は常に動く。
その世界で市場全体を買ったと言える状態を、誰がやっても同じ手順で作れるようにする。
それが指数ルールの役割。
指数ルールが解決している問題は3つ。
まず再現性。
今日の市場全体と、明日の市場全体の定義が変わったら、同じものを買ってると言えなくなる。
次に運用可能性。
理屈では完璧でも、現実に売買できない内容なら指数は使えない。
最後に公平性。
採用・除外が人の裁量だらけだと、恣意性が入る。
それだと投資家が信用できなくなる。
だから指数提供会社は、誰が読んでも同じ結論になるルールを公開する。
そのルール通りに、機械的に構成比まで決める。
ここで加重方式が出てくる。
銘柄リストだけでは指数は完成しない。
それぞれを何%ずつ持つか。
この重みの決め方が必要になる。
構造の全体像を描く
登場主体は四者で足りる。
指数提供会社はルールを設計し、指数値と構成比を計算する。
運用会社はその指数に連動する商品を作り、実際に売買してポートフォリオを組む。
投資家は指数商品を買い、ルールを丸ごと買う。
市場は、その売買を受け止めて価格を動かす。
重要なのは、指数のルールと実際の売買が分かれている点。
指数提供会社は売買しない。
ルールを示すだけ。
運用会社がそのルールを実装する。
実装には売買が伴う。
売買にはコストがかかる。
需給、つまり買い手と売り手のバランスにも影響する。
つまり指数とは、ルールが運用会社の取引を通じて市場に作用し、その結果が価格とパフォーマンスとして投資家に返ってくる装置。
この装置の中で、時価総額加重と均等加重は重心の置き方を変える。
重心が変われば保有比率が変わる。
保有比率が変わればリバランスの売買が変わる。
リバランスとは、決めた比率に戻すための売買のこと。
売買が変われば、リターンの源泉も変わる。
同じ銘柄集合でも、結果が似るとは限らない理由はここにある。
構造の全体像を描く
指数提供会社は、指数のルールを作る。
指数の数字と、各銘柄の比率も計算する。
運用会社は、その指数に連動するETFやファンドを作る。
そして現実の市場で売買して、ポートフォリオを組む。
投資家は、その商品を買う。
つまり中身のルールごと買う。
市場は、運用会社の売買を受け止めて、価格が動く。
指数はルールを作るだけ。売買するのは運用会社。
指数提供会社は売買しない。
ルールを配るだけ。
運用会社がルールを実装する。
実装は売買になる。
売買にはコストが出る。
買いが増えれば上がりやすいし、売りが増えれば下がりやすい。
需給、つまり買い手と売り手のバランスに跡が残る。
つまり指数は、こういう装置だ。
ルール → 運用会社の売買 → 市場価格 → 投資家の成績。
この中で、時価総額加重と均等加重は、重心の置き方が違う。
重心が変わると、持つ比率が変わる。
持つ比率が変わると、比率を戻す売買も変わる。
リバランスは、決めた比率に戻すための売買。
放っておくと比率がズレるから、定期的に直す作業だ。
で、売買が変わると、儲け方も変わる。
同じ銘柄集合でも、結果が似るとは限らない理由はここにある。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
時価総額加重は、会社の大きさに比例して比率を決める方式。
時価総額は株価×発行株数。
大企業ほど指数の中で重くなる。
均等加重は、採用銘柄を全部同じ比率にする方式。
100銘柄なら各1%みたいに、サイズを無視して揃える。
なぜ2つあるのか。
時価総額加重は、市場全体の姿をそのまま写しやすい。
大企業を多めに持つのは、現実の資本市場がそういう形だから。
それに実務的にラク。
株価が動けば比率も自然に動くので、頻繁に売買して整える必要が少ない。
結果として取引コストが出にくく、巨大なお金でも運用しやすい。
均等加重は、別の弱点を潰す。
時価総額加重は、勝ち組が勝ち続けるほど比率がどんどん膨らむ。
気づくと少数の巨大株が支配する指数になる。
市場全体のつもりなのに、実態が巨大株の集合になる。
均等加重は、その集中をわざと弱める。
全員に同じ持ち分を与えて、偏り方を変える。
ここで誤解を潰す。
均等加重は公平だから中立、ではない。
均等を保つには、上がって比率が増えた銘柄を売る必要がある。
逆に、相対的に出遅れた銘柄を買う必要がある。
つまり均等加重は、機械的に勝者を売って敗者を買うルールを持つ。
ざっくり言うと、定期的な逆張りが内蔵される。
逆に時価総額加重は、上がった銘柄の比率が上がるのを許す。
相対的にトレンド追随っぽくなりやすい。
因果の流れを整理する。
原因は加重方式。
途中で効いてくるポイント
1つ目は集中度。
時価総額加重は集中しやすい。
均等加重は分散しやすい。
2つ目はサイズと流動性の偏り。
均等加重は大型株の比率を下げて、相対的に中小型株の比率を上げやすい。
中小型は売買しにくいことが多い。
だから売買コストが上がりやすい。
3つ目は回転率(ターンオーバー)。
回転率は、ポートフォリオの中身をどれだけ入れ替えているか、の目安。
均等加重は、比率を同じに保つために定期的な売買が避けられない。
だから回転率が高くなりやすい。
回転率が高いと、まず売買の回数が増える。
そのぶん手数料やスプレッドみたいな取引コストが積み上がる。
で、結果は単なる指数値の差じゃない。
巨大株が牽引する上昇局面だと、時価総額加重が強く見えやすい。
横並びの相場とか、勝ち負けが入れ替わる局面だと、均等加重が強く見えることがある。
ただし均等加重は、コストと需給の歪みを背負う。
理論上の強さが、そのまま商品リターンに落ちるとは限らない。
弱くなりやすい条件もはっきりしてる。
銘柄数が多い。
流動性が薄い。
リバランス頻度が高い。
この3つが揃うほど、均等加重は取引コストが効いてくる。
ここを無視して、均等だから分散で安全、と判断すると痛い。
殴ってくるのは値動きじゃなくて、コストとリバランス需給。
実際の市場シーンで考える
数社の巨大株だけがドカンと上がって、指数全体も上がって見える相場。
AIや半導体ブームみたいなやつ。
投資家はニュースとチャートを見て、市場が強いと思ってS&P500みたいな指数商品を買う。
ここで、時価総額加重と均等加重の違いがそのまま成績の差になる。
時価総額加重は「上がった主役をそのまま厚く持つ」
巨大株が上がると、その会社の比率が自然に増える。
運用会社はあまり売買しなくていい。
だから主役の上昇が、そのまま指数のリターンに乗りやすい。
均等加重は「上がった主役を売って、出遅れを買う」
均等を守るには、上がって比率が増えた銘柄を売る必要がある。
代わりに、上がってない銘柄を買って比率を揃える。
つまり、主役が少数に偏ってる相場だと、わざわざ主役を薄めにいく。
だから時価総額加重に負けることがある。
ここで大事なのは、均等加重がダメなんじゃない点。
均等加重は、巨大株に集中しすぎるリスクを減らす代わりに、巨大株だけの上昇は取りに行かないルール。
負けたのは能力じゃなくて、ルールの選択が違っただけ。
リバランスの日はブレやすい
均等加重は定期的に比率を戻すから、その日に売買が集中する。
売買しにくい銘柄だと、価格が一時的に歪みやすい。
その日の変なブレは、指数の中身の都合で起きてることもある。
指数の値動きだけ見てると、理由が分からない。
ルールを知っていれば、リバランスの売買が原因かも、と整理できる。
慌てる下げと、制度的なノイズを切り分けられる。
この理解がもたらす判断力
身につけたいのは、指数名じゃなくルールを見る癖。
名前が同じでも、中身の運転ルールが違えば別モノになる。
同じ市場でも別物だと言えるようになる
時価総額加重は、大きい会社に寄りやすい。
上がった主役が、そのまま重くなる。
均等加重は、比率を揃えるために定期的に売って買う。
勝者を売って、出遅れを買う動きが入りやすい。
回転率も上がりやすい。
だから、見た目が近いから同列、は危ない。
勝ち負けを「良い・悪い」で判断しなくなる
均等加重が負けたなら、巨大株だけの上昇を取りに行かないルールだっただけ。
均等加重が勝ったなら、広く上がる相場や入れ替わりが多い相場に合ってただけ。
あとから理由を作るんじゃなく、
ルールから得意不得意を先に読めるようになる。
コスト込みで商品を選べるようになる
均等加重を選ぶなら、次の4つを見る。
- 回転率(どれだけ売買が増えるか)
- リバランス頻度(どれだけ比率を戻すか)
- 銘柄数(多いほど作業が増えやすい)
- 流動性(売買しにくいとコストが出やすい)
この4つが揃うと、取引コストと需給の歪みが効いてくる。
ここを見ないと、指数を選んでるつもりで雰囲気で選ぶことになる。



