指数の成績が良ければ、相場の勢いは続き、投資は安泰だという思い込み。 S&P500やNASDAQが高値を更新しているから買い、下げているから売り。 チャートが一本で済むから、とても分かりやすく見える。
自分から見れば、その理解は「相場の内部」が崩れる局面で通用しなくなる。 指数は上がっているのに、多くの銘柄は上がっていない状況がある。 あるいは、安値を更新する銘柄がひっそりと増えていることもある。 指数の上昇が「参加者全員の合意」ではなく「一部の銘柄への偏り」で起きている。
指数という成績表が良くても、中身の銘柄がボロボロなことがある。
この記事では、新高値・新安値(NH/NL)を解説する。 これは上がった・下がったという事実を確認するための道具ではない。 相場の勢いがいつ折れるかを事前に推し量るための、内部指標だ。 指数の更新を見たときに、それが健全な上昇か、脆い上昇かを区別できるようになろう。
代表値の錯覚を知る
市場では「代表値の錯覚」という問題が繰り返し起きる。 指数は市場を代表するように見えるけれど、実態は少し違う。 多くの指数は、規模が大きい株の影響が強い仕組み(時価総額加重)を採用している。 少数の巨大な銘柄が、全体の成績を無理やり塗り替えてしまう。
この錯覚を放置すると、投資判断の再現性が壊れる。 再現性とは、同じやり方で何度も勝てる可能性のこと。 指数が上がっているから買ったのに、自分の持っている株は下がる。 あるいは指数が少し崩れた瞬間に、内部が弱っていた分だけ一気に下落が広がる。
この問題に対処するには、相場の内部が本当に強いのかを測る必要がある。 内部とは、構成銘柄の分布や、足並みが揃っているかどうかのこと。 NH/NLは、その内部の状態を一つの数字へ落とし込むための装置になる。
相場を動かす四つの要素
この仕組みを理解するには、四つの存在を想定すればいい。
第一に、普通の投資家。 投資家は指数チャートを見て、今の勢いを信じ込みやすい。 第二に、機関投資家。 プロの運用者は指数だけでなく、特定の分野への偏りや、想定よりブレる可能性(リスク)に敏感だ。
第三に、市場を構成する銘柄たち。 ここが相場の「体温」であり、指数はただの体温計の目盛りに過ぎない。 第四に、指数そのものだ。 指数は価格という表面を示すけれど、中身がどれだけ均一かは教えてくれない。
NH/NLが切り分けるのは、価格の表面と、中身の広がりの二層だ。 表面が強くても、中身が冷えていればその勢いは長く持たない。 外部からショックがなくても、自重で折れる余地が増えていく。
NH/NLが示すメカニズム
まずは定義を確認しよう。
新高値(NH)とは、ある期間(一般的には1年)で高値を更新した銘柄の数。 新安値(NL)とは、同じ期間で安値を更新した銘柄の数だ。 この二つの数字を比べたり、引き算をして内部の強弱を測る。
勢いが続くかどうかは、参加者が同じ方向を向いているかで決まる。
広い範囲の銘柄が高値を更新する時期は、買いの裾野が広い。 一時的に下がっても、すぐに買い戻しが起きやすい。 一方で、指数が上がっているのにNHが減り、NLが増える時期は危ない。 内部で既に売りが始まっている証拠だ。
上昇を支えるエンジンが一部の銘柄に集中し、相場は片足立ちになる。 すると、どうなるか。 少数の大型株に資金が集中し、他の銘柄は下げ止まらなくなる。 結果として、指数は見かけ上持ち上がるけれど、中身はとても脆くなる。 少しのきっかけで指数の下落が加速する準備が整ってしまう。
初心者は「NHが多いから上がる、NLが多いから下がる」と考えがちだ。 けれどNH/NLは、未来の価格を予言する魔法ではない。 今見えている勢いが、どれだけ広い支持を持っているかを示す品質検査だ。 表面が強く見えるときほど、この中身の検査には価値がある。
指数が強く、内部が冷える時
実際の市場でよくある場面を考えてみよう。
ある月、S&P500が連日のように高値を更新し続ける。 ニュースは強気な言葉で溢れ、みんなが「指数についていけばいい」と言う。 個人投資家も、少し下がったところで買い増していく。 一方で、冷静な運用者は内部指標の異変に気づく。
高値を更新する銘柄(NH)はピークを過ぎて、むしろ減り始めている。 安値を更新する銘柄(NL)は、ゼロ近辺からじわじわと増え始めている。 特定の分野や、小さな会社の中には、すでに安値を叩いているものが目立つ。 取引の量も一部の大型株に偏り、他の株の反発は弱々しい。
ここで起きているのは、資金がごく一部の銘柄に逃げ込んでいる状態だ。 内部が弱い相場は、見かけ上の押し目が浅いほど危ない。 少数の銘柄だけで支えているから、そこが崩れたら連鎖が止まらなくなる。 すでに弱っていた銘柄たちが、待機していたかのように一緒に崩れ落ちる。
中身が伴わない上昇では、買うタイミングや分散の仕方を慎重に見直す。
このとき大事なのは、慌てて売ることではない。 「指数が強い=全体が強い」という思い込みを捨てることだ。 中身が冷えているなら、利益を確定する準備を早めてもいい。
この知識をどう行動に変えるか
第一に、指数の高値更新を無条件で信じなくなる。 指数が上がるほど内部が壊れていく局面があることを知っておこう。 NH/NLで上昇の品質をチェックすれば、不必要に高いリスクを取らずに済む。
第二に、相場を「勝ち組」と「沈んでいる組」に分けて見られるようになる。 NHが広がる時期は全員で上がっているけれど、NHが縮む時期は一部への資金集中だ。 ここを見抜ければ、上昇の後半戦で大怪我をする可能性を減らせる。
第三に、相場が崩れたあとの「底の質」も読めるようになる。 価格が下げ止まっても、安値を更新する銘柄(NL)が高止まりしているなら要注意だ。 中身のダメージがまだ深い可能性がある。 逆に、NLが減り始めてNHが少しずつ芽を出してきたなら、本物の回復が近い。
自分や私たちが向き合っているのは、数字の羅列ではなく、生身の銘柄の集合体だ。 たまには体温計(NH/NL)をチェックして、相場の健康状態を確かめてみるといい。
📊 相場体温計 NH/NL分析アプリ
「指数」が上がるほど、
危ない局面がある。
S&P500やNASDAQが最高値を更新している時、市場は本当に健全でしょうか?
このアプリは、相場の「表面(価格)」ではなく「内部(体温)」を測る指標、
新高値・新安値(NH/NL)のメカニズムを体験的に学ぶツールです。
📢 初心者が陥る誤解
「指数(S&P500など)が上昇トレンドなら、相場全体が好調で、どれを買っても大丈夫」と思い込んでしまうこと。これこそが、暴落に巻き込まれる原因です。
1. 代表値の錯覚を知る
なぜ指数が良いのに、自分の持ち株は上がらないのか? それは多くの指数が「時価総額加重平均」だからです。一部の巨大企業の成績が、全体の姿を塗り替えてしまいます。ここでは、その「見た目」と「実態」のギャップを可視化します。
🔍 表面(指数)
少数の大型株(マグニフィセント7など)が牽引し、指数チャートは綺麗な右肩上がりを描きます。「相場は強い」と錯覚します。
🧬 内部(実態)
しかし、中小型株やその他のセクターは既に下落しているかもしれません。これが「再現性」を破壊します。
表向きの姿:指数は最高値更新中 📈
2. 相場を動かす4つの要素とNH/NL
相場の「体温」を測るためには、誰が参加し、何を測るべきかを知る必要があります。NH/NLは、相場の参加者が「同じ方向を向いているか」を示す指標です。
普通の投資家
指数チャートだけを見て「勢いがある」と信じやすい。押し目で買い増しを行う。
機関投資家
リスクに敏感。「内部」の悪化をいち早く察知し、資金を動かす。
構成銘柄(体温)
ここが本質。新高値(NH)と新安値(NL)の数で、相場の真の健康状態が決まる。
指数(目盛り)
あくまで表面的な価格。内部がバラバラでも、数値だけは上がることがある。
📝 用語の定義:NH/NLとは?
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新高値(NH: New Highs)
過去52週間で高値を更新した銘柄数。「買いの勢い」の広がりを示す。 -
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新安値(NL: New Lows)
過去52週間で安値を更新した銘柄数。「売りの圧力」の広がりを示す。
💡 つまりこういうこと
NHが多く、NLが少ない=全員参加
NHが減り、NLが増える=内部崩壊
📉 崩壊の予兆シミュレーター
「指数は上がっているのに、内部が崩れる」とはどういう状況か?
下のボタンで時間を進めて、ダイバージェンス(逆行現象)を目撃してください。
フェーズ 1: 健全な上昇 🚀 指数は上昇中。新高値(NH)も多く、新安値(NL)はほぼゼロ。多くの銘柄が買われており、トレンドは強い。「買い」の裾野が広い状態です。
📈 S&P500指数 (価格)
🌡️ 内部体温 (NH – NL)
※データは教育用シミュレーションであり、特定期間の実数ではありません。
3. 行動に変える:投資判断チェック
「指数が高値更新した!」というニュースを見たら、飛びつく前にこのチェックリストを使いましょう。
Q1. 指数が高値を更新している時、新高値銘柄数(NH)は増えていますか?
Q2. 新安値銘柄数(NL)の動きはどうですか?



