金融と公益、ITと必需品、景気敏感とディフェンシブ。
名前だけ見ると、動きが似そうな組と、逆に動きそうな組を作りたくなる。
過去チャートでも、そう見える期間はちゃんとある。
でも、その前提は肝心なところで崩れる。
相場が荒れた瞬間、普段は別行動なセクターまで一緒に崩れて、分散が消える。
逆に、ずっと同じ方向だったセクターが急に割れて、勝ち組と負け組の線引きが変わる。
このとき「相関が壊れたのは気まぐれ」と片付けるのは危ない。
相関が変わるのは、相場のルールが変わり始めたサインになりやすい。
相関はセクターの性格じゃない。
その時期に、市場が何をいちばん気にしているかで変わる。
やりたいことはシンプル。
- 相関が上がったら、「市場が何か1つの理由で動き始めた」と考える
- 相関が割れたら、「主役が別の要因に移った」と考える
そして原因の軸は、3つで十分。
- 金利(お金を借りるコスト)
- インフレ(コストと価格転嫁)
- 流動性(資金の回りやすさ)
このどれで説明するかを選べるようになると、
セクターの勝ち負けが変わる理由を追いやすくなる。
なぜこの仕組み/ルールが存在するのか
リターンだけ見ていると、「どんな崩れ方をするか」が分からない。
同じ年率10%でも中身は別物になる。
途中で大きく沈むタイプだと、精神的にも資金的にも続けにくい。
だから年金や機関投資家みたいに資産配分をする人は、組み合わせたときのブレを先に見積もりたい。
そのための道具が相関。
相関は「一緒に揺れる度合い」を数にしたもの
相関(相関係数)は、2つがどれくらい一緒に動くかを -1〜+1 で表す数字。
- +1に近い:だいたい同じ方向に動く
- -1に近い:だいたい逆方向に動く
- 0付近:別々に動きやすい
ここがポイント。
分散(リスクのブレ)を考えるとき、値動きの大きさ(ボラティリティ)だけ見ても足りない。
一緒に揺れるかどうかが、ポートフォリオの崩れ方を決める。
ここだけ押さえる:相関は固定キャラじゃない
相関はセクターの固定キャラではない。
その期間に市場を支配していた「共通の理由」がどれだけ強いかで決まる。
- みんな同じ理由で動くほど、相関は上がりやすい
- 理由が分かれてくるほど、相関は割れやすい
だから相関を「性格」だと思うと外しやすい。
もう1つ:期間で見え方が変わる
相関は、測る期間で表情が変わる。
- 短期(例:20日):変化の出始めを拾いやすい
- 長期(例:250日):大枠の傾向が見えやすい
相関を固定値だと思った瞬間、便利な道具じゃなくて足かせになりやすい。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
相関が変わる流れは、だいたいこの順番で説明できる。
原因(市場がいちばん気にし始めたテーマが変わる)
→ 途中で動くもの(値札の付け方、資金繰り、商品価格、資金の回り、ポジション調整)
→ 結果(セクターが一緒に動く/バラバラに動く)
ポイントはこれ。
セクターの性格が急に変わったわけじゃない。
市場の主役が変わると、同じニュースでも反応が変わる。
相関を動かす典型パターンは3つ
相関が動く原因は、だいたい3つにまとまる。
- 割引率(とくに実質金利)
- 信用(クレジット)と流動性
- インフレ要因(コモディティ、賃金、為替)
この3つのどれが主役かで、「一緒に動く」か「割れて動く」かが変わる。
割引率が主役になると「まとめて値札が動く」
実質金利が動くと、株の値札そのものが動きやすい。
将来の利益をどう割り引くかが変わるから。
成長期待が強いセクターも、配当利回りで買われやすいセクターも、まとめて影響を受けることがある。
この局面は、相関が上がりやすい。
ここで混同しやすいのが「ディフェンシブ=強い」というやつ。
ディフェンシブは需要が落ちにくい、という意味。
でも割引率が上がる局面は、値札が下がりやすい、という別の話。
値札の付け直しが主役になると、ディフェンシブでも普通に崩れる。
守ってくれるのは需要の安定であって、株価の安定ではない。
信用と流動性が主役になると「売れるものから売られる」
信用スプレッドが広がって資金繰り不安が出る。
すると投資家はまず現金化を優先しやすい。
このときは銘柄の良し悪しより「売れるものを売る」動きになりやすい。
ETFのバスケット売買も重なると、セクター単位で一斉に売りが出やすい。
結果として相関が上がって、全部いっしょに動きやすくなる。
ここで起きているのは、企業の中身が同時に悪化した、というより、リスク管理と換金ニーズが同時に走った、という状況。
インフレが主役になると「勝ち負けが割れやすい」
インフレが主役になると、勝ち負けが分かれやすい。
- 価格転嫁できるか
- 原価が刺さるか
- 規制で縛られるか
この差でセクターの動きが割れる。
だから相関は下がりやすい。分散は効きやすくなる。
ただし、そのぶんセクターの役割が入れ替わりやすい局面でもある。
昨日の勝ち組が、明日は負け組になることもある。
相関が当てになりにくいとき
便利だけど相関は使い方を間違えると事故る。
- 期間が短すぎるとノイズになりやすい
- 期間が長すぎると昔の相場も混ざってズレやすい
- 普段は低くても急落局面では一気に上がりやすい(非対称)
「相関が低いから安全」で安心すると危ない。
いちばん困る局面だけ、分散が消える。これはよくある落とし穴。
実際の市場シーンで考える
よくある場面を1つだけ置く。
インフレ指標が予想より強く出た週。
その直後、長期の実質金利が一気に上がる。
まず債券が動いて、株の「値札」が動く
最初に反応するのは債券市場。
金利が上がると、株の値札の付け方が変わる。
この時点で動いているのは、個別企業の業績というより、
ポートフォリオ全体の「リスク量」。
リスク管理が先に走ると、売りが広がる
リスクを一定に保つ運用は、
値動きの大きさ(ボラ)が上がり、相関まで上がると、機械的に株を減らしやすい。
株式市場が開く。
まず売られやすいのは、遠い将来の利益に期待が乗っているセクター。
ITやコミュニケーションが代表例。
ただ、そこで終わらないことがある。
配当利回りで買われやすい公益や不動産まで弱くなる。
ここでの勘違いは「景気が悪いからディフェンシブも崩れた」
ディフェンシブまで崩れた。景気が悪化した。
そう読んでしまいやすい。
でも、この時点で景気統計が崩れているとは限らない。
起きているのは需要の崩れじゃなく、割引率の上昇。
つまり、値札の付け直し。
その一方で「インフレに強い組」は別行動を始める
インフレがテーマになると、
エネルギーや素材が相対的に踏ん張ることもある。
すると市場は二手に分かれる。
- 金利に弱い組:まとめて下がる
- インフレに強い組:別行動を始める
ここで相関の形が変わる。
この理解がもたらす判断力
① 相関が上がったとき:まず原因を1つに絞る
相関が上がる=分散が効かない。
セクターの性格が似たんじゃない。市場が1つの理由で動いている。
このとき最初にやることは、銘柄選別じゃない。
何が市場の主役かを当てる。
見る順番はこれでいい。
- 実質金利が跳ねている → 値札の付け直しが主役
- 信用スプレッドが広がっている → 資金繰り・リスクオフが主役
- ドル高と商品が同時に動く → インフレの連鎖が主役
原因が分かったら、次にやるのは点検。
同じリスクを二重に持ってないかを見る。
分散のつもりで、似た因子を2つ持っている。
このパターンが、相関上昇でバレる。
② 相関が割れたとき:勝ち負けの基準が変わったと考える
相関が下がる=落ち着いた、とは限らない。
市場が一枚岩をやめて、勝ち筋のルールを更新したサインになりやすい。
このときは、セクター名を眺める前に中身を見る。
とくに当たりを付けるのはここ。
- 金利は安定しているのに相関が割れる
→ 企業の利益の差が出始めた可能性が高い
見るのはニュースの主語じゃない。
利益の部品を見る。
- マージン(利益率)が守れるか
- 数量(売れる量)が落ちてないか
- 規制やコストが刺さってないか
③ 相関をサインとして、売買の形を変える
相関が上がっているのに、分散のつもりで両建てを続けるのは危ない。
同方向に動くなら、実質は同じリスクを2回持っている。
やることはシンプル。
- 相関が上がる局面:ポジションを増やす前に、重複リスクを減らす
- 相関が割れる局面:無理に市場平均へ寄せず、勝ち筋側へ寄せる選択を持つ
相関は飾りの数字じゃない。
相場がいまどのルールで動いているかを知らせる、信号として使う。



