株式や債券だけのポートフォリオに「何か足りない気がする」と感じたとき、金やコモディティが候補に上がりやすい。この記事を読むと、それらを入れる目的と上限の考え方が整理され、自分のポートフォリオに必要かどうかを自分で判断できるようになる。
金・コモディティは「リターンを上げるもの」ではなく「株式との連動を下げるもの」として入れる。目的と上限を決めずに持つと、ただのノイズになる。
金(ゴールド)を入れる「意味」はどこにあるか
金はリターンを稼ぐ資産というより、他の資産が下落するときに値動きの方向が異なりやすい、という性質で評価される。株式との相関(値動きの連動性)が低い局面が多く、特にリスク回避ムードが強まったときに逆行するケースがある。
歴史的なデータを見ると、リーマンショック時や2020年3月のコロナショック時も、株式が大幅に下落するなかで金はショック後に比較的早く回復している。ただし、2022年の利上げ局面のように金利が急上昇する環境では株式と同時に下落したこともある。「常に株と逆に動く」わけではない。
この事実の解釈として重要なのは、金に期待できるのは「分散(複数に分けてリスクを薄める)効果」であって、「リターンの向上」ではない、という点だ。金は配当も利子も生まない。長期の実質リターンは株式を大幅に下回る。それでも入れる理由があるとすれば、「株式一本のポートフォリオが急落したときの心理的クッション」か「インフレが極端に進んだ局面での実物資産としての保全」に限られる。
自分のポートフォリオへの当てはめ方として考えると:株式比率が高く、下落時に狼狽売りしやすいと自覚している場合は、ボラティリティ(値動きの大きさ)を少し抑える目的で5〜10%程度を持つ選択肢はある。一方、積立投資を淡々と続けられる自信があり、長期でリターンを最大化したい場合は、金を入れる必要性は薄い。
コモディティは金と何が違うか
「コモディティ」と言うとき、金以外に原油・天然ガス・農産物・工業用金属(銅など)が含まれる。これらをまとめて持てるETFも存在するが、性質は金とかなり異なる。
コモディティ全般はインフレ(物価上昇)との連動性が金より高い局面がある。エネルギー価格が上昇すると物価全体が上がりやすいため、コモディティ指数が先行して動くことがある。2021〜2022年のエネルギー価格急騰局面では、コモディティ系ETFは株式が苦しむなかでプラスのリターンを出した。
ただし構造上の問題がある。先物(将来の価格を今決める契約)を使って運用するコモディティETFは、先物の乗り換えコスト(ロールコスト)が発生し、長期保有するほど実際の商品価格の上昇より低いリターンになりやすい。これは現物を保有する金ETFとは根本的に異なるコスト構造だ。
判断の分岐点は「インフレヘッジが目的か」にある。老後まで20年以上ある40代であれば、インフレへの対応は株式の実質リターンやREITでもある程度カバーできる。コモディティETFをあえて加える場合は「ロールコストを理解した上で、5%以内の小さな比率」が現実的な上限として機能しやすい。
国内ETFで金・コモディティをどう持つか
国内(東証上場)のETFで金にアクセスする方法はある。代表的なのは金の現物価格に連動するタイプで、純金上場信託(1540)などが流動性・コストの面でよく参照される。信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)は0.4%台で、米国のGLDやIAUより高いが、円建てで保有でき為替手数料が不要という点で、NISA口座での利用では合理的な選択肢になりうる。
コモディティ(金以外)については、国内ETFの選択肢が限られており、流動性(取引のしやすさ)が低いものが多い。この点については、米国ETFのDJPやGSGのほうが流動性・コスト面で明確に優れているケースがある——これが米国ETFに言及する理由だ。ただしNISA(成長投資枠)では米国ETFも購入可能なため、コモディティに比率を割くと決めた場合は米国ETFも選択肢に入る。
NISAで金ETFを持つ場合の注意点として、金ETFは「現物出資型」か「価格連動型」かによって税務上の扱いが異なる場合がある。証券会社の説明欄で確認してから買う、という手順を踏む価値はある。
比率の「上限」をなぜ決めるのか
金やコモディティに比率の上限を設定せず「なんとなく持つ」状態になると、リバランス(配分比率を元の設定に戻す作業)の基準がなくなり、結果的に相場感で動くことになる。
一般的なポートフォリオ設計の考え方として、金・コモディティ合計で10〜15%を超えると、長期リターンへの影響が無視できなくなる。株式は歴史的に年率4〜7%程度の実質リターンを出してきたが、金の超長期実質リターンは年率1〜2%程度とされる。15%を金に割り当てると、ポートフォリオ全体の期待リターンを1〜2%程度引き下げる効果がある。
具体的な比率の考え方として条件分岐で整理すると:
- 株式比率70%以上かつ下落耐性に不安がある → 金5〜10%で分散補助として入れる。コモディティは不要。
- インフレヘッジを強化したい(たとえば近い将来に現金化する資産が多い場合) → 金5%+コモディティ5%まで。合計10%を上限とする。
- 長期積立でリターン最大化が優先 → 金・コモディティは入れないか、入れても5%以下に抑える。
比率を決めたら、その比率が「何のために存在するか」を一言でメモしておく。「株式急落時のクッション」なのか「インフレヘッジ」なのかで、相場が動いたときの対応が変わる。目的が不明確なまま持つと、相場が動くたびに判断が揺れる。
よくある誤解
「金はリスクヘッジだから多めに持つほど安全」という思い込みがある。金の報道が増えると「安全資産」というフレーズが目に入りやすく、多く持つほど守られるという印象になりやすい。
実際には、金はあくまで株式との相関が低い局面がある資産であって、元本保証でも低リスク資産でもない。金自体のボラティリティは中程度あり、ドローダウン(ピークからの下落率)も過去に30〜40%を超えたことがある。「安全資産」というのは「有事に買われやすい」という文脈での表現であって、価格が下がらないという意味ではない。
では何をするかというと、金を加える前に「何を目的として、何%持つか」を先に決める。目的が「株式急落時の分散補助」なら上限10%、それ以上は必要ない。目的が決まれば、金価格が上昇しても「もっと増やしたい」という衝動に対して判断の根拠ができる。
まとめ
金・コモディティはリターンを稼ぐ資産ではなく、株式との分散補助として機能する局面がある資産だ。入れる場合は「何のために、何%まで」を先に決め、合計10〜15%を上限の目安にする。期待しすぎず、目的を明確にして比率を固定する——それがノイズにしないための条件になる。次は「債券ETFをコアに入れるかどうかの判断軸」の記事に進むと、コア資産全体のバランスが整理しやすくなる。
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「ノイズ」にしないための正しい目的と比率の上限を、ここで整理しましょう。
核心的な考え方
金やコモディティを入れる前に、その「役割」を明確に理解する必要があります。 曖昧なまま保有することは、長期的な資産形成においてリスクとなります。
目的は「分散」
リターンの最大化ではなく、株式との連動性(相関)を下げるために組み入れます。 株式が急落した際の心理的クッションや、インフレヘッジとして機能します。
「上限」を決める
金・コモディティは配当や利子を生まないため、長期リターンは株式に劣ります。 持ちすぎると資産全体の成長を阻害するため、明確な上限設定が必要です。
金とコモディティ:それぞれの役割
株式との相関が低い「守りの資産」
- ● 役割:株式急落時の心理的クッション、通貨価値下落(インフレ)への備え。
- ● 強み:リーマンショック時など、株価暴落時に早期回復する傾向がある。
- ● 注意点:配当を生まない。金利上昇局面では株式と共に下落することもある(常に逆行するわけではない)。
推奨スタンス
「下落時の狼狽売りを防ぐ」ために、ポートフォリオの5〜10%程度を保有するのが一般的。
投資配分シミュレーター
あなたの投資スタンスに基づいて、推奨される金・コモディティの配分比率を計算します。
以下の質問に答えてください。
判定ロジック
選択してください…
推奨ポートフォリオ配分
推奨アクション
目的のメモ
具体的な投資手段(ETF)
金は国内ETFが手軽でおすすめです。コモディティは国内ETFの選択肢が限られるため、本格的に組み入れる場合は米国ETFも視野に入ります。
金 (Gold)
純金上場信託 (1540) 等
円建てで取引可能。為替手数料が不要で、NISAでも使いやすい。
GLD, IAU
流動性は世界最大級だが、ドル転コストがかかる。
コモディティ (Commodities)
選択肢・流動性が限定的
取引のしやすさに難がある場合が多い。
DJP, GSG
流動性とコスト効率が良い。NISA(成長投資枠)で購入可能。
よくある誤解:「安全資産」の正体
「金は安全だから、持てば持つほどリスクが下がる」
現実:金は「元本保証」でも「低リスク」でもありません。過去には30〜40%の下落も経験しています。
「安全資産」とは「有事の際に買われやすい(株と違う動きをする)」という意味に過ぎません。
「目的と比率を決めて、あとは放置する」
正解:上限(10〜15%)を決めて固定することで、相場が動いても感情的な判断(ノイズ)を排除できます。
「株式急落時のクッション」という目的を忘れないことが重要です。

