代表配分(100/0・80/20・60/40・バーベル)の思想と欠点

株式と債券をどんな比率で持つかは、ポートフォリオの土台になる判断だ。ここでは代表的な4つの配分モデルについて、背景にある考え方と、見落とされやすい欠点を整理する。どれが正解かではなく、どれが自分の状況に合うかを判断するための材料として使ってほしい。

配分モデルは「何を優先するか」の宣言であって、リターンを最大化する公式ではない。欠点を知らずに採用すると、想定外の局面で方針がぶれる。

100/0(株式100%)の思想と落とし穴

「長期投資なら株式100%でいい」という考え方には、それなりの根拠がある。過去の長期データを見ると、株式は債券を上回るリターン(今の値段に対する受け取り割合)を残してきた。時間が長くなるほど、値動きの大きさ(ボラティリティ)は相対的に薄まっていく。40代からのNISA運用であれば、20〜30年という運用期間が確保できる可能性があり、理論上は株式集中を支持できる。

ただし、この考え方が崩れるのは「精神的な耐久力」と「引き出し時期が重なる暴落」の2点だ。

株式100%のポートフォリオは、ピークからの下落率(ドローダウン)が50%を超えることがある。リーマンショック時の全世界株は1年半で約50%下落した。数字で知っていても、実際に資産が半分になったときに売らずにいられるかどうかは別問題だ。投資継続できなければ長期リターンの恩恵は受けられない。

また、退職直前・直後に大きな下落が重なると、回復を待たずに資金を取り崩さざるを得なくなる(「配列リスク」と呼ばれる)。40代後半以降で運用を始めた場合や、10〜15年後に使う資金を運用している場合は、この点の影響が相対的に大きくなる。

株式100%を選ぶとしたら、「30年以上の運用期間がある」「途中で引き出す予定がない資金だけを対象にしている」「50%以上の下落でも売らない自信がある」という条件が全部揃っている場合に限定して考えるのが現実的だ。

80/20・60/40の「緩衝材」としての役割

株式と債券を混ぜる配分モデルの出発点は、株式と債券の値動きが逆方向に動きやすい(負の相関)という性質にある。株が下がるときに債券が上がれば、ポートフォリオ全体の落ち込みが小さくなる。80/20は株式偏重を保ちながら緩衝材を入れる構成、60/40はその緩衝材を厚くした構成、と理解するといい。

問題は、この「逆方向に動く」という前提が常に成立するわけではない点だ。2022年はその典型で、インフレが急加速する局面では株式も債券も同時に下落した。60/40ポートフォリオは同年に約15〜20%の下落を記録している(米国市場ベース。国内においても同様の傾向が確認されている)。「株が下がれば債券が支える」という安心感が、そのまま想定よりブレる可能性(リスク)の過小評価につながることがある。

もう一つの欠点は、債券部分の選び方だ。国内で債券ETFを保有する場合、東証上場の国内債券ETFは信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)が比較的低い一方、利回りが低く、為替リスクなしで高い分配金(ETFが出す受け取り)を得にくい。外国債券ETFを使えば利回りは上がるが為替リスクが加わる。「緩衝材として債券を入れる」と決めたあとに、具体的にどの債券ETFを選ぶかが別の判断になる。

80/20は「リターンはなるべく確保したいが、暴落時に全力で耐えられるか不安」という状況に合いやすい。60/40は「資産を守る優先度が高まってきた」「10年以内に使う可能性がある資金を含む」場合に検討しやすい。

バーベル戦略の思想と現実的な難しさ

バーベルとは、両端に重りをつけた形の重量器具から来た名前だ。投資では「超安全資産」と「高リスク・高リターン資産」に二極化し、中間の資産を持たない戦略を指す。具体的には、国債・現金等で60〜70%を固め、残り30〜40%を個別株・小型株ETF・コモディティ等に集中させる、といった構成になることが多い。

この戦略が支持される理由は、中間的なリスク資産(例えば投資適格社債や先進国株インデックス)は「リスクは取っているがリターンの上限もある」という点にある。バーベルは、下落耐性を安全資産で確保しつつ、リターンの伸びしろを高リスク部分で狙うという思想だ。

ただし国内の個人投資家にとって、この戦略には実行上の難しさがある。「高リスク部分」に何を置くかが自由度が高すぎて、かえって迷いやすい。また、安全資産側に国内短期国債ETFや個人向け国債を使うとしても、利回りが低い局面ではその部分の機会費用が大きくなる。バーベルは戦略の概念は整理されているが、「具体的に何のETFで実装するか」という段階で検討コストが高い。

すでに株式インデックスETFをある程度持っていて、「守りをどう足すか」を考えている段階なら、バーベルの発想は参考になる。一方、これからポートフォリオを組み始める段階でバーベルを採用しようとすると、構築の複雑さが障壁になりやすい。

4モデルの比較と選び方の軸

4つのモデルを整理すると以下のようになる。

モデル株式比率主な思想主な欠点
100/0100%長期なら株式が最も報われる大幅下落時の精神的・タイミング的リスク
80/2080%リターンを保ちつつ緩衝を入れる株式との相関が高まる局面で緩衝が効きにくい
60/4060%株式と債券の分散(複数に分けてリスクを薄める)効果を活かすインフレ局面では株・債券が同時下落する
バーベル様々中間リスクを避け、安全と攻めに特化実装の複雑さ、高リスク部分の選択が難しい

どのモデルが自分に合うかを判断する軸は2つだ。

一つ目は「いつ使うお金か」。20年以上先が対象なら100/0〜80/20の検討余地がある。10〜15年以内に引き出す可能性があるなら60/40かバーベルの安全側を厚くする方向になる。

二つ目は「下落をどこまで受け入れられるか」。これは性格の問題ではなく、実際に下落が起きたときに配分を変えずにいられるかという行動の問題だ。過去の暴落時に何をしたかを振り返れると判断材料になる。

よくある誤解

「60/40は古い」という言い方が広まっている。2022年の株・債券同時下落を受けて、特に海外の投資メディアで「60/40は死んだ」という表現が増えた。そう感じてしまうのも理解できる。ただし、これは「特定の局面では機能しなかった」という事実であって、「常に機能しない」という根拠にはならない。

60/40が前提にしているのは「株式と債券の相関が長期的には低い」ということであり、インフレ急騰という特殊局面での一時的な相関上昇を理由に全否定するのは論理の飛躍だ。

では何をするかというと、「60/40は特定の局面で機能しにくい」という弱点を知った上で採用するかどうかを判断することだ。欠点を踏まえた上で「それでも自分の状況には合っている」と判断するのと、欠点を知らずに使うのでは、暴落局面での行動がまったく変わってくる。

まとめ

配分モデルは「最適解」ではなく、「自分の運用期間・引き出し計画・下落耐性に対して、どこまで整合しているか」で選ぶものだ。欠点を知っておくことは、局面が変わったときに方針をぶらさないための土台になる。次は、具体的にどのETFで各配分モデルを実装するかを扱った「国内ETFで組む株式・債券配分の実装例」を参照してほしい。

資産配分の「黄金比」を解剖する

株式と債券の「黄金比」を解剖する

代表的な4つの配分モデル:その思想と見落とされやすい欠点。
どれが正解かではなく、どれが「あなたの状況」に合うかを探る旅へ。

01. 配分モデル詳細探求

ポートフォリオの土台となる4つの代表的な配分モデルを切り替えて確認できます。 各モデルの円グラフ(資産配分)と、その背後にある「思想」および潜んでいる「欠点」を比較してください。 配分モデルはリターン最大化の公式ではなく、「何を優先するか」の宣言です。

100/0 ポートフォリオ

※比率は概念的な目安です

💡 思想(メリット)

長期(20〜30年)であれば、株式は債券を上回るリターンを残す歴史的傾向がある。時間が長くなるほどボラティリティは相対的に薄まるため、理論上は株式集中が最も合理的とされる。

⚠️ 欠点・リスク

精神的な耐久力が試される。50%以上のドローダウン(下落)も起こり得る。また、退職直前などの「出口」で暴落が重なると、回復を待てずに取り崩す「配列リスク」の影響が甚大になる。

適したシナリオ

運用期間が30年以上あり、途中で引き出す予定がなく、資産半減でも売却しない自信がある場合。

02. 4モデル性能比較

各モデルのリターン期待値、リスク(変動幅)、下落時の耐性、そして管理の複雑さを比較します。 「最強のモデル」は存在せず、トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあることがわかります。

※各項目は記事内容に基づく相対的な評価スコアです

モデル リターン期待 下落耐性 特徴的な弱点
100/0 最高 最低 精神的限界・配列リスク
80/20 低〜中 同時下落時のクッション不足
60/40 中〜高 インフレ局面での同時安
バーベル 変則的 変則的 実装・選択の難易度が高い

用語解説:

  • リターン期待: 長期保有時の資産増加期待値。
  • 下落耐性: 暴落時に資産価値を守る力。
  • バーベル戦略: 超安全資産と高リスク資産を組み合わせ、中間(社債など)を持たない戦略。

03. あなたに合うモデルは?

モデル選びの軸は「時間軸(いつ使うか)」と「下落耐性(行動できるか)」の2点です。
以下の質問に答えて、検討の出発点を見つけましょう。

ここに結果が表示されます

左の質問に回答してボタンを押してください。

誤解:「60/40は死んだ」のか?

2022年、インフレ急騰局面で株式と債券が同時に下落したため、「60/40ポートフォリオはオワコン(死んだ)」という言説が広まりました。

しかし、これは「特定の局面(急激なインフレ)では機能しなかった」という事実であり、「常に機能しない」わけではありません。長期的に見れば、株式と債券の相関は低く推移することが多いです。

重要なのは、60/40を盲信するのではなく、「インフレ局面では弱点がある」と理解した上で採用することです。

まとめ

配分モデルに「万人に共通する正解」はありません。

重要なのはリターンの最大化ではなく、「自分の運用期間・引き出し計画・下落耐性」との整合性です。

欠点を知り、納得して選んだモデルこそが、暴落時にあなたの資産を守ります。

© Asset Allocation Guide. Based on Source Report.

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