ETFを支える2つの仕組み:Creation Unit(設定単位)とin-kind(現物出し入れ)

ETFは、取引所の売買とは別に、口数そのものを増やしたり減らしたりできる。

ETFには、発行口数を増減させる裏側のルートがある。
ここが株式と決定的に違う。

その裏側を動かす鍵が、Creation Unit(設定単位)とin-kind(現物出し入れ)になる。
これが分かると、プレミアム/ディスカウントがなぜ生まれ、なぜ多くの場合はNAVに近づき、どんな局面で近づきにくくなるのかを、因果で説明できるようになる。

なぜこの仕組みが存在するのか

もしETFが「発行口数固定のまま」取引所だけで売買される商品なら、需給が偏った瞬間に価格が壊れやすい。
中身(保有資産の集合)の価値が1口100でも、買いが殺到すれば105、売りが殺到すれば95になり得る。

これは閉鎖型ファンドに近い世界。
つまり、価格が中身から離れても、直す仕組みが弱い。

ETFはそれを避けたい。
取引所の需給が偏ったときに、口数そのものを増減させて歪みを吸収する経路が必要になる。

この経路の中核が、裁定の回路。
市場価格がNAVから離れたら、そのズレを取りに行くプレイヤーが動けるようにして、価格をNAVへ寄せる。

ただし、その経路を誰でも自由に使えるようにすると、今度は市場が荒れやすい。
そこでAP(Authorized Participant、認定参加者)が登場する。

APだけが運用会社と直接やり取りし、巨大な単位でETF口数の増減を実行できる。
その巨大な単位がCreation Unit(設定単位)で、ざっくり言うと「まとめて作る/まとめて減らす最小ロット」だと思えばいい。

構造の全体像を描く

取引所の出来高=資金流入ではない。資金の出入りは、一次市場の口数増減で見る。

取引所で売買が増えても、それは持分が移っただけで、新しい資金がETFに入ったとは限らない。

資金の出入りを語るなら、一次市場でCreation Unitが増えたか減ったかを見る必要がある。
APがCreation Unit単位で「設定(作る)」や「解約(減らす)」をして、その対価としてバスケットが受け渡しされる。

このバスケットは、ETFの中身に近い銘柄のセット。
そして、その受け渡し方法の中心がin-kind(現物出し入れ)になる。つまり、現金ではなく、株や債券そのものをまとめて渡す/受け取るやり方だ。

次は、このin-kindがどうやって

  • 低コスト(売買コストや税の摩擦を減らす)
  • 価格収束(プレミアム/ディスカウントを縮める)
  • 税制優位(課税イベントを起こしにくい)
    を支えているのかを、設定と解約の流れでつなげる。

メカニズムの核心:Creation Unitとin-kindが何を動かすのか

Creation Unitとは何か

Creation Unitは、ETFを設定(作る)・解約(減らす)するときの最小単位。
個人が1口ずつ増減させられる仕組みではない。

SECの言い方に寄せるなら、APは指定バスケットの証券と現金を拠出してETF口を受け取る。
逆にETF口を渡して、バスケットを受け取る。

ここで押さえるのは、なぜ大口だけなのか。
裁定は、売買コストを差し引いても利益が残る必要がある。

小口だとコスト負けする。
だから最初から大口単位に設計されていて、それがCreation Unitになる。

in-kindとは何か

in-kindは、現金じゃなく現物(株式や債券など)をバスケットで受け渡す方式。
APが設定するときは創設バスケットを持ち込み、解約のときは償還バスケットを受け取る。

SEC資料でも、解約時にAPが個別証券のバスケット(または現金相当)を受け取る、と説明される。

ここが大事。
in-kindは美しい概念じゃなく、コスト対策。

現金で設定・解約を受けると、ファンド内部で現物の売買が発生する。
そのときのスプレッド(売値と買値の差)や市場インパクト(大口売買で価格が動く分)がコストとして残る。

in-kindにすると、その売買を外部(AP側)へ押し出せる。
ファンドは「売買する主体」より、「保有の器」に寄る。

価格が収束するロジック

価格収束は、APが「取引所価格」と「中身の価値(NAV)」のズレを利益機会として取りに行くから起きる。

プレミアム局面(市場価格>NAV)を考える。
ETFが取引所で100.20、NAVが100だとする。

APは中身のバスケットを揃える。
それを運用会社へin-kindで差し入れて、Creation UnitとしてETF口を受け取る。

そのETF口を取引所で100.20近辺で売る。
供給が増えるから価格は下がり、同時に利ざやも縮む。

利ざやが消えたら、APは動く意味がなくなる。
だから行動が止まり、価格はNAV近辺に落ち着く。

ディスカウント局面(市場価格<NAV)は逆。
APは取引所でETFを買い集める。

それを運用会社へ返して、in-kindでバスケットを受け取る。
受け取った現物を市場で売る。

流通口数が減るのでETF価格は上がり、ズレが縮む。
SEC資料も、APがETFと市場の両方で取引できることが裁定を可能にし、その結果として市場価格がNAVへ近づく、と整理している。

実際の市場シーンで考える:急落でディスカウントが広がるとき

「ETFはNAVに収束する」と聞くと、乖離は瞬時に消えると思いがち。
でも収束は条件付きの機能。

急落局面では、中身のスプレッドが広がる。
バスケットを揃えるコストが跳ね上がる。

さっきの利ざや(100.20−100)がコストに飲み込まれたら、APは動かない。
だからディスカウントが残る。

さらに、海外資産や社債みたいに、値付けが遅い・現物の流動性が薄いものだと話がややこしくなる。
取引所のETF価格のほうが先に動き、推計価値(IIV/iNAV)が追い付かないことがある。

SEC資料でも、取引時間中に推計価値(IIV)が配信される一方で、ETFの市場価格は需給など複数要因で変動し、プレミアム・ディスカウントが生じ得る、と説明されている。

この局面の誤判断はだいたい二つ。
ディスカウント=即売り、と短絡する。
必ず収束するから放置、と決め打つ。

見るべきは乖離そのものより、収束条件。
裁定コストが跳ねてないか。
in-kindで回るETFか。
現金化が必要な設計か。

この理解がもたらす判断力:価格・コスト・税制を同じ地図に置く

Creation Unitとin-kindは、ETFの裏側の配管。
ここが分かると、価格乖離を異常値じゃなく、裁定の採算の結果として扱えるようになる。

二次市場の出来高と、一次市場のフロー(設定・解約)を切り分けられる。
資金の出入りを誤読しにくくなる。

低コストと税制優位も、運用会社の姿勢だけじゃなく、in-kindという構造要因として説明できる。
ETFを理解するとは、価格だけで判断する習慣を捨てること。

口数の増減と現物の受け渡しまで含めて、因果で捉える。
Creation Unitとin-kindは、その因果をつなぐ最短の結節点になる。

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