指数は中立ではない:指数は「投資ルールの集合」であり、リターンとリスクを作っている

初心者が抱きやすい誤解は一つ。指数=市場平均=中立だと思い込むこと。

指数連動と聞くと、個別の判断を捨てて平均に乗るだけに見える。だから指数同士の差も、誤差か細部の違いくらいに感じやすい。

でも、その理解は投資判断のいちばん大事なところで崩れる。同じ米国株でも、ある指数は大型株に寄る。別の指数は情報技術に寄る。別の指数は高配当を優先する。どれも市場平均の顔をしているけど、内側には別の投資方針が入っている。

指数は平均ではなく、ルールで作られた投資戦略。

中立ではないを感覚じゃなく構造で理解する。指数を見るときに、何に偏るか。どんな需給イベントを内蔵するか。どんなコストを呼び込むか。これをルールから逆算して見抜けるようになる。

なぜこの仕組み/ルールが存在するのか

指数の存在理由は、ランキング表を作ることじゃない。市場には銘柄が山ほどある。取引条件もバラバラ。企業行動も毎日起きる。増資、合併、上場廃止みたいなやつ。

この世界で、同じ条件で比較できるモノサシがないと困る。運用も評価も成立しない。

指数提供会社が解いている問題は三つ。

第一に再現性。誰が見ても同じ計算になって、同じ条件で追従できないと指数じゃない。
第二に運用可能性。理屈が正しくても、売買できない銘柄を大量に入れたら指数連動ファンドが回らない。
第三に公平性。人が恣意的に銘柄を選ぶと、指数じゃなくて裁量ポートフォリオになる。だから指数は、あえてルールで縛って恣意性を消す。

つまり指数は、市場を写す鏡じゃない。市場を測るために作られた定規だ。

定規には目盛りがある。目盛りの刻み方が違えば、同じ対象でも測定結果が変わる。これが中立ではないの正体。

メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか

指数は、投資対象を選び、重みを付け、入れ替えるルールの集合。
この定義が大事になる。

指数をただの価格チャートだと思うと、上がった下がったの理由探しで止まりやすい。
需給とか景気とか、そういう説明で終わる。

でも指数は、構成銘柄と比率が変わる。
だからリターンの中には、景気だけじゃなくルール由来の成分が必ず混ざる。
ここを分けて見ないと、指数投資の理解が毎回その場しのぎになる。

初心者がつまずきやすいのは、指数は市場をそのまま写していると思う点。
実際は逆で、市場の無限の現実を、指数が扱える形に削って整形している。
削った時点で偏りが発生する。

因果の流れはこうなる。

まず原因。指数が決めているルール。
どの銘柄を対象にするか。どの比率で持つか。いつ入れ替えるか。

次に途中経過。そのルールのせいで、持ち物の性格が決まる。
上位にどれだけ集中するか。どの業種に偏るか。大型株寄りか小型株寄りか。売買しやすい銘柄が多いか。入替でどれだけ売買が増えるか。

最後に結果。その性格が数字として出る。
リターンがどうなるか。リスクがどれだけブレるか。売買コストがどれだけ乗るか。入替日に価格が動きやすいか。

ここで特に効くルールは三つ。

ユニバース

ユニバースは、指数に入れる候補の集合。
そもそも誰を選考対象にするか、という入口のルール。

市場の全部を入れたい気持ちは分かる。
でも上場国、時価総額、流動性、浮動株比率みたいな条件でふるいにかけないと、連動ファンドが売買できなくなる。
そうなると指数が机上の正しさに落ちる。

ここでの誤解は、フィルタが安全を意味すると思うこと。
実際は、運用できるようにするための都合。
結果として小型株が消えたり、新興国が薄まったり、特定業種が濃く残ったりする。
この時点で中立は崩れている。

ウェイト方式

代表例は時価総額加重。
時価総額が大きい企業ほど比率が高くなる方式。

メリットは分かりやすい。
ルールが単純で、売買の整合性が高い。
巨大な資金でも追従しやすい。

誤解しやすいのは、これが市場の意思そのものに見える点。
実態は、上がった銘柄の比率が増えやすい構造を持つ。
結果としてトレンド追随っぽい性格が入り、上位銘柄への集中も強まる。

一方、均等加重なら定期的に上がった銘柄を売って、下がった銘柄を買う動きになりやすい。
どっちも方針。中立じゃない。

リバランスと入替ルール

リバランスや入替は、構成銘柄と比率をルールに従って更新すること。
企業は成長も衰退もするし、上場廃止もある。
更新しないと指数が現実からズレる。

誤解は、入替を静かな事務処理だと思うこと。
指数に連動する資金が大きいほど、入替日は強制売買の日になる。
この売買が価格の歪みとして出ることがある。

実際の市場シーンで考える(リバランス日)

場面は指数の定期リバランス日。
大手指数の銘柄入替が告知されて、引けで反映される日を想像すればいい。

最初に動くのは指数提供会社。
新規採用と除外を事前に公表する。
ここで出るのはニュースというより予定表だ。

次に運用会社が動く。
指数連動ファンドは、ルール通りに追従する必要がある。
だから採用銘柄を買い、除外銘柄を売る。
裁量はほぼない。
特に誤差を嫌う運用ほど、引けの価格で揃えにいく。

結果として、引けに向けて売買が集中する。
板が薄い銘柄だと買い気配が飛ぶ。
スプレッドも広がる。
価格が上がる理由が、企業価値の再評価じゃないこともある。
ルールに従う資金が、同じ時刻に同じ方向へ動くから上がる。
翌日以降、需給が落ち着けば反転することもある。
指数が中立じゃないのが、価格として見える瞬間だ。

初心者がやりがちな誤判断は二つ。

一つ目。急騰を見て材料が出たと思い込む。
二つ目。除外銘柄の急落を見て企業が壊れたと決めつける。

どちらも原因の読み違い。
必要なのは、入替という強制売買が背後にいるかを疑う視点。
指数のルールは、ときどきファンダメンタルズより速く、そして乱暴に価格へ出る。

この理解がもたらす判断力

指数をルールの集合として見ると、投資家のやることが変わる。
ラベルを見るんじゃなくて、中身のルールを見るようになる。

同じ名前でも中身が違うと分かる

米国株、テック、クオリティ、高配当。
こういう名前だけだと、似た商品に見えやすい。

でも見るべきはユニバースとウェイト方式。
どの銘柄を候補にして、どういう比率で持つか。
ここが違うと、集中の度合いもリスクの出どころも変わる。

市場平均のつもりで買ったのに、実は上位数社に強く賭けていた。
こういうズレを減らせる。

歪みやすい日を避けられる

入替やリバランスは、予定されている強制売買。
予定されている売買は、短期の価格を歪めやすい。

歪みが出やすい銘柄。時間帯。局面(流動性が落ちているとき)。
これを想定できると、売買をわざわざその日にぶつけずに済む。

中立という言葉で止まらなくなる

指数は運用商品で、偏りを必ず持つ。
偏り自体は悪じゃない。

問題は、偏りを知らずに持つこと。
知った上で持てば、それは意図したリスクになって戦略になる。

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