銘柄選びが終わったあと、多くの人が「で、どう配分するか」で止まる。この記事では、配分を決めるための判断軸——リスク許容度、投資期間、NISA枠との兼ね合い——を整理する。比率の正解は出さないが、自分の答えにたどり着くためのフレームは渡せる。
配分の決め手は「何を買うか」ではなく「どれだけ値動きの大きさ(ボラティリティ)に耐えられるか」と「いつ使うお金か」の2軸だ。この2軸を先に固めれば、地域・資産クラスの配分は自然と絞られてくる。
地域配分より先に「自分の耐性」を決める
ETFのポートフォリオを組もうとすると、国内株・先進国株・新興国株・債券・REITといった選択肢が並び、「どの比率が良いか」という問いが最初に来やすい。だが比率を先に決めようとすると、根拠のない数字を当てはめることになる。
配分を決めるときに本当に必要な起点は、ボラティリティ(値動きの大きさ)に対する自分の耐性だ。ここでいう耐性は「暴落しても売らずに持ち続けられるか」という話ではなく、「どの程度の含み損が出たとき、日常の判断や精神に影響が出るか」という現実的な問いだ。
たとえば、全世界株(世界中の株式を1本で持てるETF。MSCIオール・カントリー等の指数に連動)に100%集中した場合、2008〜2009年のような局面では資産が4〜5割程度下落する時期が来うる。この「ドローダウン(ピークからの下落率)」を実際の生活文脈に置いてみる。運用額が500万円なら、200〜250万円の含み損が数ヶ月続くことを意味する。その状況で生活や仕事への影響がないか、という問いに正直に答えることが先決だ。
判断の補助として、自分のポートフォリオのドローダウン許容度を「−20%まで」「−30%まで」「−40%以上でも耐えられる」の3段階で仮に設定してみるとよい。−20%程度に収めたいなら株式比率は全体の50〜60%以下に抑え、残りを国内債券ETFや先進国債券ETFで補う構成が一つの出発点になる。−40%以上でも長期で持ち続けられるなら、株式比率を80〜100%にしてコスト効率を優先できる。
投資期間で「リスクの受け止め方」が変わる
リスク許容度と混同されやすいが、投資期間は別の軸として独立して考える必要がある。
株式は短期では大きく振れるが、20年・30年という期間で見ると、過去のデータでは大半の局面でプラスに収束している。一方で、5年以内に使う予定のある資金を株式100%で運用した場合、暴落のタイミングが重なれば回復を待てずに損失確定を迫られる可能性がある。
40代の投資家にとって、「老後資金」と「10年以内の使途がある資金」は性質が異なる。前者は投資期間が20年以上あるため、ボラティリティ(値動きの大きさ)リスクを取りやすい。後者は期間が短い分、下落後の回復を待てない。
では具体的にどう分けるか。資産を「20年以上使わないコア資産」と「10年以内に使う可能性のあるサテライト資金」に切り分け、前者には株式比率を高めたETFポートフォリオを、後者には低ボラティリティの構成(債券ETFや現金比率を高める)を当てる、という二層構造が一つの判断軸になる。
NISAを使う場合、非課税期間は恒久化されているため、コア資産の運用に充てることに優位性がある。短期で使う可能性のある資金にNISA枠を消費するのは、非課税メリットを活かしにくい。
地域・資産クラスの組み合わせ方
耐性と期間の2軸が決まったあとに、地域と資産クラスをどう組み合わせるかという問いに入る。
国内ETFで選べる主な資産クラスは、国内株式・先進国株式・新興国株式・国内債券・先進国債券・国内REIT(不動産投資信託)の6種前後だ。これらをどう配合するかは、以下のような特性の差を把握したうえで決める。
| 資産クラス | ボラティリティ水準 | 国内ETFでの選択肢 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 国内株式 | 中〜高 | 比較的豊富 | 国内景気への連動 |
| 先進国株式 | 中〜高 | 主要指数は対応あり | 分散(複数に分けてリスクを薄める)の中核 |
| 新興国株式 | 高 | 限定的 | 高成長期待・リスク高め |
| 国内債券 | 低 | あり | 安定・値動き抑制 |
| 先進国債券 | 低〜中 | 一部あり | 分散効果・為替リスクあり |
| 国内REIT | 中 | 流動性注意 | インカム(分配金)期待 |
株式比率が高い構成の場合、国内株と先進国株を組み合わせる形が基本になる。国内株だけに偏ると、日本経済の動向に運用成績が引っ張られすぎる。先進国株に偏ると、円安・円高の動きが大きく影響する為替リスクが増す。両者を組み合わせることで、どちらかの下落局面での影響を緩和しやすい。
新興国株式は、国内ETFでは銘柄数が少なく、流動性(売買のしやすさ)に偏りが出やすい。選ぶ場合は、AUM(ETFが運用している資産の総額)と1日の売買代金を確認してから判断したい。
国内ETFで組む場合の制約と補完
国内ETFで完結させようとすると、いくつかの制約に直面する。これは国内ETF固有の問題というより、市場規模と商品ラインナップの現実からくる構造的な話だ。
主な制約は2点ある。一つは、資産クラスによって銘柄数が極端に少ないこと。新興国株式や先進国債券のカテゴリは、国内ETFでは選択肢が数本程度しかない。もう一つは、流動性の偏りだ。スプレッド(売値と買値の差)が大きいETFは、買うたびに見えにくいコストが積み重なる。
これらの制約への補完手段として、まずNISA対応のインデックス型投資信託(つみたて投資枠対応商品)を組み合わせる方法がある。信託報酬(ETFを保有している間かかる年間コスト)が低く、積立設定で自動化しやすい。国内ETFより機動性は落ちるが、銘柄の選択肢と流動性の問題をカバーしやすい。
また、先進国株式インデックスへの投資において、国内に同等コストの選択肢が整備されていない資産クラスについては、米国ETFを検討する選択肢もある。ただし米国ETFは確定申告が原則必要になり、NISA成長投資枠の一部銘柄は非対応のものもある。利便性コストとのトレードオフを踏まえたうえで、国内ETFや投資信託では代替が難しい場合に限る、という判断が現実的だ。
リバランス(配分比率を元の設定に戻す作業)についても、国内ETFは売買単位が決まっているため、少額での調整がしにくい場合がある。投資信託と組み合わせることで、リバランスの柔軟性を補える点も覚えておきたい。
よくある誤解
「分散するほど良い」という考え方が広がっているため、できるだけ多くの資産クラスを組み込もうとする人は少なくない。ただ、資産クラスを増やすことと、リスクが適切に分散されていることはイコールではない。
似た動きをする資産(相関が高い資産)をいくら並べても、下落局面では同時に下がる。たとえば国内株・先進国株・新興国株の3本を等分に持っても、世界的なリスクオフ局面では3本同時に下落しやすい。真の意味での分散には、異なる値動きをする資産クラス(株式と債券など)の組み合わせが必要だ。
では何をするか。まず保有予定のETFそれぞれが「どんな局面で下がるか」を確認する。そのうえで、異なる局面で下落するものを組み合わせているかを確認する。組み合わせの数より、組み合わせの質を先に問う順序で設計すると、「なんとなく分散している」ポートフォリオを避けやすい。
まとめ
配分設計の起点は銘柄ではなく、自分のボラティリティ耐性と投資期間の2軸だ。この2軸を先に固めれば、地域・資産クラスの組み合わせは絞られてくる。国内ETFの制約は実在するが、投資信託との組み合わせで多くは補完できる。次のステップとして、「NISA成長投資枠と積立投資枠をどう使い分けるか」を整理した記事も参照されたい。
銘柄選びの前に、
「耐性」と「期間」を決める。
多くの人が「どの銘柄を買うか」から始めますが、それは順序が逆です。 まずはあなたのリスク許容度と投資期間を明確にし、揺るがないポートフォリオの骨格(アーキテクチャ)を作りましょう。
設計を始めるStep 1: 診断(2つの判断軸)
配分の正解は外にはありません。あなたの内側(耐性と期間)にあります。
以下の2つの質問に答えて、あなたの基準を設定してください。
軸1 ボラティリティ耐性
資産が暴落した際、どの程度の「含み損」なら生活や精神に影響が出ませんか? (例:500万円運用時)
軸2 投資期間
その資金を使うのはいつですか?期間によって「リスクの受け止め方」が変わります。
Step 2: あなたのポートフォリオ設計図
選択した「耐性」と「期間」に基づく推奨配分です。
この比率をベースに、具体的なETF銘柄を当てはめていきます。
資産配分の指針
診断を行ってください。
運用戦略の役割
診断を行ってください。
推奨アセットアロケーション
Step 3: 素材(資産クラス)を知る
設計図が決まったら、実際に組み込む「素材」の特性を理解しましょう。
国内ETFでアクセス可能な主要6資産の「リスクとリターン」の関係です。
※位置関係を示す概念図であり、将来の確定リターンを示すものではありません。
チャート上の点をクリック
各資産クラスの詳細、ボラティリティの目安、
ポートフォリオでの役割が表示されます。
Title
…
Step 4: 現実の制約と補完
国内ETFだけで理想の城を建てるには、いくつかの「建材不足(制約)」があります。
これらをどう補うか、現実的な解決策です。
銘柄数の少なさ
新興国株や先進国債券などは、国内ETFでは選択肢が数本しかなく、理想的な分散が難しい場合があります。
流動性の偏り
売買代金が少ないETFは「スプレッド(売値と買値の差)」が広く、隠れたコストがかさむリスクがあります。
リバランスの難しさ
ETFは売買単位(1口、10口など)が決まっているため、少額での比率調整(リバランス)がしにくいです。
まとめ:真の分散とは?
「銘柄数を増やす = 分散」ではありません。
似た動きをするもの(例:全世界の株)をいくら集めても、暴落時は一緒に下がります。
「異なる動きをする資産(株と債券)」を組み合わせる効果を確認しましょう。
シミュレーション操作
ボタンを押して、市場ショック時の動きを比較してください。

