ETF資金フローは何を映すのか――学術研究が示す「強み」と「落とし穴」

はじめに:フローを見るという発想は、学術的にも検証されている

ETFの資金フロー(お金の出入り)を見よう、という考え方は、個人投資家の思いつきだけじゃない。
学術研究でも、ETFの設定・解約で起きる資金の出入りが、価格の動き方に影響するかもしれない、と検証されている。

代表例が、Brown・Davies・Ringgenbergの研究(Review of Finance, 2021)。
題名を日本語にすると
『ETFの裁定取引、ファンダメンタルでは説明できない需要、そしてリターンの予測可能性』

この研究が言っているポイントは2つ。

まず1つ目。
ETFのフローは、非ファンダメンタル需要を映している可能性がある。

つまり、企業の業績が良くなったから買う、とかじゃない買いのこと。
たとえば、指数に連動して機械的に買う、テーマ投資で一斉にお金が集まる、リスク回避でみんな同じ方向に動く、みたいな需要。

そして2つ目。
相場が混乱しているときは、ズレを直す仕組みが動きにくい。
その結果、ETFの値段が中身の値段(理論上の価値)とズレたままになることがある。

ここだけ押さえる。

フローは役に立つ可能性がある。
でも、フローだけ信じるのは危ない。

なので、この先はフロー観測の強みと、落とし穴に分けて整理する。

① フロー観測の強み ―― 非ファンダメンタル需要を映す可能性

ETFの資金フローを見ると、市場の気分みたいな買いがどれだけ来てるかが分かるかもしれない。

ここで言う非ファンダメンタル需要は、企業の業績が良いから買う、みたいな動きじゃない。
指数に連動して機械的に買う。
テーマで一斉に集まる。
リスク回避でみんな同じ方向に逃げる。
こういうやつ。

本来、ETFの値段は中身(現物の株の集まり)と同じになるように作られている。
ズレたら裁定取引が入って、ズレが直るはず。

裁定取引は、ざっくり言うとズレ直し係。
割安を買って、割高を売って、ズレを埋める動き。

でも現実には、ETFにお金がドッと入ると話が変わる。
ETFを新しく作る手続き(設定)が増えて、そのために中身の株をまとめて買うことになる。
だから中身の株の値段も押し上げられやすい。

逆に、お金が抜ければ売りが出やすい。

価格は結果。
フローは原因になり得る。

研究では、こうしたフローが将来の値動きにヒントを出す可能性も示されている。
本質価値と関係ない買いで押し上げられた分は、あとで戻りやすいことがある、という話。

だからフローは、価格の裏にある需給の力を測る材料になり得る。

② 落とし穴 ―― 裁定(ズレを直す役)が動けないと、何が起こるか

この研究は、フローを神格化してない。
むしろ、ETFの仕組み上の弱点にも注意しろ、という話が大事。

ETFの値段は、本来は中身の値段(現物)に近づく。
ズレたら、指定参加者(ETFを作ったり壊したりできる金融機関)が裁定して、ズレを直す。

指定参加者は、いわばズレ直し係。

でも市場が荒れると、このズレ直し係が動きにくくなる。

市場が荒れるとは、たとえばこういう状態。
・売買が混みすぎて注文が通りにくい
・買い手が減って、売りたいのに売れない
・値動きが激しくて、やる側のリスクが急に上がる

流動性が低い、というのは「売りたいときに売れない」「買いたいときに買えない」が起きやすい状態。

こうなると裁定が止まりやすい。
その結果、ETFの値段だけが先に動いて、中身の値段とズレたままになることがある。

フローと価格の動きだけ見ても、理由は2通りある。
本質価値と関係ないお金の移動なのか。
それとも、仕組みがうまく動かずに値段が歪んでるだけなのか。

普段はフローがヒントになる。
荒れてるときは、そもそも価格が歪んでる可能性がある。

この違いを忘れてフローだけ信じると、読み違えるリスクが出る。

③ フロー観測をどう位置づけるか

この研究が言っているのは、極端に寄るな、ということ。

フローは意味がない。
フローだけ見れば勝てる。

どっちも違う。

実際はその中間。
フローは役に立つけど、単独だと危ない。

フローは、価格を動かしている需給の一部を見える化できる。
ただし前提がある。
市場の仕組みがちゃんと動いているかも一緒に見る必要がある。

たとえば、ここをチェックする。

・ズレを直す裁定が回っているか
・売買が詰まってないか(流動性はあるか)
・相場がパニックっぽくなってないか(市場ストレス)

このへんが普通なら、フローはかなり参考になる。
逆に荒れているなら、フローや価格が歪んで見えることもある。

ここだけ押さえる。

価格が表の数字。
フローは裏で押している力。
ただし、その力がちゃんと表に反映されてるかは別で確認する。

まとめ ―― フローは万能じゃない。でも見ないのも損

ETFのフロー研究が教えてくれることは2つある。

1つ目。
フローは、業績や景気と関係ない買い(非ファンダメンタル需要)を映していて、値段を動かす力になることがある。

2つ目。
相場が荒れて裁定が回らないと、ETFの値段が中身の価値からズレたままになることがある。

この2つはセットで覚えるのが大事。

フローは、ただのテクニカル指標じゃない。
市場の仕組みが今どう動いてるかを読む材料になり得る。

価格の裏で何が起きているのか。
その動きは続くのか。
それとも一時的な歪みなのか。

フローを見るのは、その問いを持つための手段。

万能ではない。
でも、無視するには重要すぎる。

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