指数は、入っている銘柄を全部同じ量で持つわけじゃない。
どの銘柄をどれくらいの比率で持つかを、最初から決めている。
この比率の決め方が、指数の性格を決める。
言い換えると、配分ルールが違うだけで、同じ中身でも別物になる。
たとえば、よくある指数は時価総額で配分する。
値段が上がって大きくなった会社ほど比率が増える仕組みだ。
これが世の中で一番よく見かける型。
一方で、別の型もある。
値段の大きさじゃなく、値動きの大きさを基準に比率を決める型だ。
値動きの大きさは、ボラティリティ(値動きの大きさ)と呼ばれる。
リスクは、想定よりブレる可能性、くらいの意味でいい。
ここだけ押さえる。
この型は安全にするための魔法じゃない。比率を動かすルールが違うだけだ。
そして重要なのはここ。
相場が荒れると、値動きの大きさが急に変わる。
するとこの型の指数は、比率を機械的に動かしにいく。
つまり、荒れた瞬間ほど売買が増える。
値動きの形も、普通の指数と変わってくる。
本記事では、この型の代表としてボラティリティ加重とリスクパリティを見る。
どちらも、値動きの大きさを見て配分を変える指数だ。
読後に目指す状態はシンプル。
同じ株式・同じテーマでも、配分ルールが違えば別物だと判断できること。
荒れ相場で起きる強制的な売買の匂いを嗅いで、無駄なエントリーを減らすこと。
なぜこの仕組み/ルールが存在するのか
時価総額加重(よくある株価指数)が抱える根本問題はシンプルだ。
値上がりしたものほど比率が上がり、値下がりしたものほど比率が下がる。
市場をそのまま映す一方で、投資家の体感リスクとはズレやすい。
上位数銘柄への集中が進むと、指数は市場全体の看板のまま、実態は集中ポートフォリオに近づく。
ここで困る主体が出る。
投資家は市場平均を買ったつもりでも、実は特定の要因に強く賭ける形になる。
要因は、巨大株、特定セクター、特定スタイルみたいなやつだ。
運用会社も、指数連動を名目にしても顧客が期待するリスク特性を満たせないことがある。
リスク特性は、値動きの荒さ、最大損失、下落への弱さ強さ、みたいな話だ。
指数提供会社も、同じユニバースで別の設計思想を出したくなる。
市場側から見ても、集中が進むほど売買が偏って需給が極端になりやすい。
リバランスのタイミングで、注文が片側に寄りやすい。
そこで生まれるのが、価格(時価総額)ではなくリスクを基準に配分を決める発想。
ポートフォリオ全体の揺れ方を設計する。
ボラティリティは値動きの大きさ、リスクは想定よりブレる可能性、くらいで十分。
揺れ方の設計は、そのまま運用のしやすさに直結する。
想定どおりのリスクで持てるか。ルールで機械的に追えるか。なぜこの比率か説明できるか。ここが全部つながる。
構造の全体像を描く
指数提供会社は、まず材料を決める。
どの銘柄を入れるか(採用ユニバース)。
比率をどう決めるか(配分ルール)。
どのタイミングで見直すか(見直し頻度)。
運用会社は、その設計図どおりに実物を作る。
指数に近づくように、株(現物)や先物で売買して再現する。
投資家は、指数ってだけで中立っぽいと感じやすい。
でも実際は、ルールしだいでクセが出る。
市場参加者は、そのクセを見て先回りする。
この指数はこの日に買いが出そう、売りが出そう、と売買フローを価格に織り込みにいく。
ここが一番大事。
指数のルールが決めるのは名前じゃない。いつ売買が発生するかだ。
時価総額加重は、価格が動けば比率も自然に動く。
基本は放っておいても、勝手にそれっぽい比率になる。
リスクベースは逆だ。
値動きの大きさ(リスクの測定値)が変わると、比率を目標に戻すために動き出す。
価格が動いたから比率が変わる、じゃない。
比率を目標に戻すために売買する。だから結果として価格にも影響が出る。
この順番が腹落ちすると見え方が変わる。
リスクベース指数は守りの指数というより、売買が起きる条件をはっきり持った指数。
メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか
ボラティリティ加重の定義
ボラティリティ加重は、配分の決め方がシンプルだ。
値動きが荒いものは少なめ。値動きが静かなものは多め。
ここでいう値動きの荒さが、ボラティリティ(値動きの大きさ)だ。
過去しばらくの値動きを見て、どれくらいブレたかを数字にする。
典型は逆ボラ(inverse volatility)。
ルールはこれだけ。
- ボラが大きい資産 → 比率を小さくする
- ボラが小さい資産 → 比率を大きくする
イメージは、暴れやすい犬は短いリード、落ち着いた犬は長いリード、みたいな感じ。
全体が振り回されにくくなる。
なぜこれをやるか。
時価総額が大きいから重くする、じゃなくて、揺れ方が大きいから軽くする、にしたいからだ。
一部の資産の暴れで、全体がジェットコースター化するのを抑えたい。
ただし、ここで誤解しやすい。
ボラはリスクの正体じゃない。過去の動きを測った温度計みたいなものだ。
将来の安全を保証する道具じゃない。
そして一番大事なのはここ。
ボラは平常時は低いのに、荒れた瞬間に急に跳ねる。
跳ねた瞬間、指数のルールが働く。
この資産は荒くなった → 比率を下げる → 売る。
だから売買が出る。
流れを短く書く。
- きっかけ:ボラが急に上がる
- ルール:比率を下げる必要が出る
- 行動:リバランスで売りが出る
- 結果:その資産に売り圧力が乗る。全体は低ボラ寄りになる。売買回数も増える
まとめるとこう。
ボラティリティ加重は安定を保証する仕組みじゃない。
荒れた瞬間に、売買を起こす仕組み。
リスクパリティの定義
リスクパリティは、こう考えると早い。
金額を平等にするんじゃない。
揺れの原因を平等にする。
たとえば、株と債券を持つとする。
金額を半分ずつにしても、揺れ方は半分ずつにならない。
株はよく動く。債券はあまり動かない。
だから実際の値動きは、株がほとんど作ってしまう。
リスクパリティはここを直しにいく。
株が揺れを作りすぎているなら、株を減らす。
債券が静かすぎるなら、債券を増やす。
目標はシンプル。
ポートフォリオの揺れに対して、株も債券も同じくらい影響する状態にする。
相場が荒れると、ボラも相関も急に変わる。
するとリスクのバランスが崩れる。
崩れたらどうなるか。
- 株が荒れた → 株を減らす
- 株と債券が同時に動き始めた → 両方を調整する
- 全体の揺れが大きくなりすぎた → 持ち高そのものを縮めることもある(デレバレッジ)
つまり流れはこう。
相場が荒れる
→ リスクのバランスが崩れる
→ ルールどおりに売買が出る
→ 下げ局面でさらに売りが重なることがある
実際の市場シーンで考える(もっと分かりやすく)
想像する場面はこれだけ。
株も債券も、同じ週にいっしょに荒れる。
まず何が起きたか
インフレ指標が強く出た。
市場は「金利が上がる」と読む。
長期金利が急に上がって、債券は下がる。
同時に株も下がる。
しかも両方とも値動きが荒くなる。
株のボラも、債券のボラも上がる。
さらに悪い。
株と債券が同じ方向に動く。
相関が上がって、分散が効きにくくなる。
ここまでは、ニュースでよくあるやつ。
時価総額指数の人は、どう見えるか
単純だ。
株が下がった。だから資産が減った。
売買ルールはあまり関係ない。
基本は下がったのを眺めるだけ。
リスクベース指数の人は、何が違うか
リスクベース指数は、価格より先にこう判断する。
今は荒れてるか。荒れてないか。
荒れてる判定になると、ルールが動く。
比率を変えるための売買が出る。
ここが大きな違い。
ボラティリティ加重(逆ボラ)の動き
荒いものは減らす。静かなものは増やす。
今回の週は、株も債券も荒くなった。
だから起きやすい動きはこれ。
- 株が荒い → 株を売る方向
- 債券も荒い → 債券も売る方向
つまり、下げている最中に売りが追加されることがある。
リスクパリティの動き
揺れの原因を、みんな同じくらいにする。
でも今回の週は、ボラも相関も動いた。
揺れの原因のバランスが一気に崩れる。
だから起きやすい動きはこれ。
- バランスが崩れた → 比率を直すために売買が出る
- さらに荒い → 全体の持ち高を減らす型もある(デレバレッジ)
これも、下げている最中に売りが追加される形になりうる。
ここが結論
初心者が勘違いしやすいのはここ。
リスク管理型だから下げに強いはず、と思い込む。
でも現実は逆のことがある。
荒れたから売買が増えるルールになっている場合がある。
下落中の売りを見て、底打ちの買い場と決め打ちすると危ない。
ただルールが売っているだけかもしれない。
この理解がもたらす判断力
同じ指数でも、動きは同じじゃないと分かる
同じ銘柄が入っていても、
どう配るかで、値動きは変わる。
- 大きい会社を重くする指数
- よく動く銘柄を軽くする指数
- 揺れの影響を均等にする指数
見た目は似ていても、
下げ方も、戻り方も、売買の多さも変わる。
これが分かるだけで、
「指数だから全部同じ」という思い込みが消える。
荒れている日に、無理に動かなくなる
リスク型の指数は、
相場が荒れたときに売買が増えやすい。
つまりこういうこと。
相場が荒れる
→ ルールが反応する
→ 自動的な売買が出る
→ さらに値動きが大きくなることがある
初心者はここで、
「怖いニュースが出たから下がった」とだけ考えがち。
でも実際は、
指数のルール売買が重なっていることもある。
これが分かるとどうなるか。
今日はルール売買が出ていそうだな
→ 今日は無理に入らなくていいか
こういう判断ができる。
「低ボラ=安全」という勘違いが消える
低ボラは、
最近あまり動いていなかった、という意味。
将来も安全、という意味じゃない。
しかも低ボラ型は、
特定のタイプの銘柄に偏りやすい。
たとえば守りっぽい業種ばかりになる。
金利に弱い構成になる。
流動性が低い銘柄が多くなる。
つまりこう。
リスクを減らしたつもり
→ 別のリスクを持っていることがある
まとめ
この理解で何が変わるか。
指数=安全、とは考えなくなる。
リスク型=守ってくれる、とも考えなくなる。
代わりにこう考える。
この指数は、
荒れたときに何を売る仕組みなんだろう?
この問いを持てるかどうか。
それが判断力の差になる。



