指数の集中度とは?上位比率がリスクを増幅する仕組みと偏りの見抜き方

指数は何百銘柄も入っている。だから十分に分散されていて安全寄りだ。

この理解が自然に見える理由もある。
個別株は一社で吹き飛ぶ。一方、指数は束ねている。つまり、リスクが薄まっているように見える。
そのため「銘柄数=分散」という直感が働く。

ただ、この理解は肝心な局面で破綻する。
指数のリスクは、銘柄数だけでは決まらない。重要なのは重み(ウェイト)だ。
どの銘柄にどれだけ配分されているか。この偏りでリスクは決まる。

たとえば100社あっても、上位数社が指数の大部分を握っているなら、実態は数社への依存になる。
見た目は分散。中身は集中。こういうことは普通に起きる。

指数の分散は銘柄数じゃない。上位比率で見る。

本記事の目的は、指数の偏りを感覚ではなく数値で捉えることだ。
上位比率が高い指数を、「分散に見える集中」として見抜ける状態をつくる。

読後には、指数を買う前にこう動けるようになる。
どの指標で集中を測り、どこまで許容するか。
これを自分の判断手順として持てるようになる。

なぜこの仕組み/ルールが存在するのか

まず押さえるべきは、指数が解こうとしている市場の問題だ。
指数は「公平な平均」を作るために存在しているわけではない。再現可能で、運用可能で、説明可能な物差しを作るために存在する。

市場には、企業規模の差が極端に大きいという現実がある。
巨大企業もあれば小企業もある。もし全社を同じ比率で扱えば、指数は市場のサイズ感を失う。実態とかけ離れた数字になる。

一方で、規模を反映させればどうなるか。
指数は運用上の再現性を得る。多くの資金は、規模が大きく流動性の高い銘柄ほど売買しやすい。ここが現実だ。

つまり、指数提供会社が直面する課題はシンプルだ。
市場全体を表したい。しかし、実際に運用できる形でなければ意味がない。

この両立のために、いくつかの仕組みが導入される。
たとえば、時価総額が大きいほど比率が高くなる「時価総額加重」。さらに、市場で実際に売買されやすい株数を基準にする「フリーフロート調整」。加えて、一定の流動性や規模を求める採用基準も設けられる。

その結果、副作用が生まれる。
勝ち続けた銘柄の比率は膨らみ、指数の集中度が上がる。つまり、集中は偶然ではない。ルールに内蔵された現象だ。

では、誰が困るのか。
分散のつもりで指数連動商品を買う投資家だ。

投資家は銘柄数を見て安心する。
しかし、実際に背負うリスクは上位比率で決まる。
ここに認知の罠がある。

構造の全体像を描く

指数提供会社は、採用・除外・ウェイト方式・定期見直しのルールを決める。
運用会社は、その指数に追随するために売買し、ポートフォリオを指数構成に合わせ続ける。
投資家は、指数を分散の器として買う。しかし、集中度の変化を見落としやすい。
採用銘柄(企業)は、株価や発行株式数、フリーフロートの変化を通じてウェイトを増減させ、結果として指数の形を変える。

ここで重要なのは、「価格が動く場所」と「中身が変わる場所」を分けて見ることだ。
価格は市場で動く。
一方で中身(構成比)は、ルールと価格変化の合成で変わる。

つまり、指数は静止画ではない。
ルールに従って形が変わる。

メカニズムの核心:何がどう動いて結果が出るか

ここは「原因 → 途中 → 結果」で見ると早い。

原因:時価総額加重が「勝者を太らせる」

指数の多くは時価総額加重だ。
時価総額が大きい銘柄ほど、指数の中での比率(ウェイト)が大きくなる。

では、株価が伸び続ける勝ち組が出るとどうなるか。
勝ち組の時価総額が増える。
すると指数の中での比率も勝手に増える。
これが時価総額加重の仕様だ。

途中:比率が寄る=集中度が上がる

比率が上位に寄っていく。これを「集中度が上がる」と呼ぶ。
集中度が上がると、指数の値動きは上位銘柄の値動きで決まりやすくなる。

指数が何百銘柄あっても関係ない。
上位が動けば、指数も動く。

ここだけ押さえる。
銘柄数が多いことと、値動きが分散していることは別だ。

よくある勘違い:銘柄数=リスク分散、ではない

よくある勘違いはこれだ。
銘柄数が多い=リスクが均される。

でも、均されるのは「各銘柄がだいたい同じ比率で効いているとき」だけだ。
上位が握っているなら、見た目は分散でも中身は集中になる。

結果:リターンもリスクも「上位」に寄る

結果は2つある。

1つ目。リターンが偏る。
指数が強い時期は、上位が強い時期になりやすい。
言い換えると、指数の勝ちは上位の勝ちに寄る。

2つ目。リスクも偏る。
上位が同時に崩れると、指数全体が想像以上に沈む。
銘柄数が多くても、このタイプの下落は止められない。

集中度って何

集中度は、指数の値動きが少数銘柄にどれだけ依存しているか、の度合いだ。
市場全体に薄く乗りたいつもりでも、集中度が高い指数は少数への依存を内蔵してしまう。

ここも勘違いが出やすい。
銘柄数やセクター数で代用してしまうことだ。
ラベルが散っていても、ウェイトが偏っていれば同じことが起きる。

集中度を見る代表的な数字(最小限)

上位比率
上位5社、上位10社の合計ウェイト。直感的で分かりやすい。
ただし、上位を何社にするかで見え方は変わる。

HHI(各ウェイトの二乗和)
各銘柄ウェイトを二乗して足したもの。大きいほど集中が強い。
二乗にするのは、でかい銘柄の影響を強調するためだ。
難しそうに見えるけど、支配の強さを一発でまとめられる。

実効銘柄数
均等配分なら何銘柄分の分散か、を表す。
よく 1 /(二乗和) で計算できる。
100銘柄でも実効が20なら、体感は20銘柄に近い。

集中が本当に効いてくる条件:相関が上がるとき

集中度が危なくなるのは、上位が同じ理由で同時に動くときだ。
規制、金利、為替、同じ需給イベント、同じ投資家のリスクオフ。
こういう局面は相関(同じ方向に動きやすさ)が上がる。

相関が上がるほど、集中はリスクを増幅する。
逆に、上位がそれぞれ別の材料で動き、相関が低い局面では痛みが見えにくい。
そして、この「見えにくい時期」が誤解を強化する。

実際の市場シーンで考える

シーン:米国大型株ETFを積み立てている個人投資家

個人投資家が、国内で買える「米国大型株に連動する指数ETF」を積み立てている。

狙いはシンプル。
米国市場全体に、広く薄く乗りたい。

投資家はまず銘柄数を確認する。
構成銘柄は数百社ある。だから分散は十分だ、と安心する。

数年後:上位銘柄が膨らむ

数年が経つ。
指数の上位数社の株価が突出して伸びる。

すると何が起きるか。
時価総額が増え、ウェイトが膨らむ。
その結果、指数の中身は徐々に上位へ寄っていく。

しかしニュースは「指数最高値」を報じる。
積立は成功に見える。だから違和感は生まれにくい。

ショック発生:同じ因子で同時に崩れる

ある日、上位銘柄群に同じ方向のショックが入る。
たとえば、規制強化。金利上昇の再加速。決算での期待剥落の連鎖。

ここで起きているのは、個別企業の崩壊ではない。
同じリスク因子で、まとめて評価が切り下がっている。

その結果、指数は大きく沈む。

投資家の解釈と実態のズレ

投資家は「市場全体が崩れた」と解釈しがちだ。
しかし実態は違う。

指数の値動きの多くを、上位が握っていた。
だから、上位が崩れた=指数が崩れた、が起きただけだ。

この局面での誤判断

ここで起きやすい誤判断は、
「銘柄数が多いから分散されているはずだ」という前提にしがみつくことだ。

見るべきは、下落ニュースの量ではない。
事前に把握していた集中度だ。
さらに、上位銘柄間の同時性、つまり相関の上昇だ。

集中が高い指数は、こういう日に「市場平均」としては振る舞わない。
実態は、上位バスケットに近い動きになる。

この理解がもたらす判断力

銘柄数ではなく「支配構造」で指数を判定できる

指数を銘柄数で判断しなくなる。
見るのは支配構造。

上位比率・HHI・実効銘柄数。どれか一つでも見ればいい。
それだけで「分散に見える集中」を剥がせる。

さらに、指数が強かった理由も分解できる。
上位に追い風が吹いていたのか。広い上昇だったのか。
ここができないと、後付けのストーリーに飲まれる。

同じテーマでも「別物」を数値で切れる

同じ国、同じ大型株でも中身は変わる。
ウェイト上限(キャップ)の有無、均等加重、セクター調整、フリーフロート調整。
この扱いで集中度は動く。

銘柄一覧が似ていても油断しない。
上位比率が違うなら、リスクの出どころが違う。

比較軸は信託報酬だけじゃない。
まず集中の差を見る。そこから選ぶ。

想定外のリスク源を事前に特定できる

集中が高い指数を買うなら、前提を言い切る。
上位銘柄群にベットしている。そう理解した上で持つ。

逆に最悪なのはこれ。
分散したつもりで持つこと。ここで事故が起きる。

一方で、分散を目的にするなら選択肢もある。
集中が抑えられた指数を候補に入れる。
キャップ型、均等加重、分散制約付き。こういう実装ができる。

タイトルとURLをコピーしました