1306、1475、2524はいずれも日本株市場全体を映す「配当込みTOPIX」への連動を目指すETFである。だから、最初に押さえるべきなのは「どれが強いか」ではない。比較の本丸は、中身の優劣ではなく、保有コスト、分配の出し方、売買のしやすさ、そして自分の使い方に合うかどうかである。
3本とも指数はほぼ同じなので、どれを選ぶかは「年1回か年2回か」「少しでも低コストを優先するか」「売買のしやすさを重視するか」次第である。
まず論点を整理する|何で比べるか
この3本は、名前が違っても、見ている指数は実質同じである。1306はNEXT FUNDS、1475はiシェアーズ、2524はNZAMという違う運用会社の商品だが、いずれも配当込みTOPIXへの連動を掲げている。つまり、「日本株全体への広い分散投資をしたい」という目的そのものは、どれでもほぼ満たせる。比較するなら、指数の違いより、器の違いを見るべきだ。
| 論点 | 1306 | 1475 | 2524 |
|---|---|---|---|
| 連動する指数(カバー範囲の違い) | TOPIX(配当込み) | TOPIX(配当込み) | 配当込みTOPIX |
| 信託報酬 | 税込0.0543%前後。段階料率で変動 | 税込0.045%以内 | 税込0.055% |
| 分配頻度・分配設計 | 年1回(7月10日) | 年2回(2月9日・8月9日) | 年2回(2月15日・8月15日) |
| NISA対応状況 | 成長投資枠対象 | 成長投資枠対象 | 成長投資枠対象 |
| 為替リスクの有無 | 直接の為替リスクなし | 直接の為替リスクなし | 直接の為替リスクなし |
| 東証上場か米国上場か | 東証上場・円建て | 東証上場・円建て | 東証上場・円建て |
表を見ると分かる通り、3本の違いは「何を持っているか」より、「どう持つか」に寄っている。特に差が出やすいのは、信託報酬、分配の回数、そして実際の売買で感じる取り回しである。ここを見ずに、名前だけで選ぶと雑な比較になる。
参照:NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(1306)/iシェアーズ・コア TOPIX ETF(1475)/NZAM 上場投信 TOPIX(2524)
同じ指数を追う3本で、差が出るのは「器」の部分
この比較で最重要なのは、カバー範囲ではない。そこはほぼ横並びだからだ。実務上の差を生むのは、運用の器、つまりコスト体系と分配設計、そしてファンド規模の違いである。1306は純資産総額が非常に大きく、段階料率で信託報酬率が下がる仕組みを持つ。2026年2月末時点では税込0.0543%で、巨大な残高を背景に安定した運用基盤を持つ。一方の1475は信託報酬が税込0.045%以内と3本の中では最も低い水準で、コストを強く意識する人にとっては有力候補になる。2524は2025年末の約款変更で信託報酬が税込0.055%へ引き下げられ、年2回分配を維持しながらコスト面も改善している。
分配の考え方も分かれ目になる。1306は年1回、1475と2524は年2回である。分配金を定期的に受け取りたい人にとっては、年2回のほうが管理しやすい。一方で、分配回数が多いこと自体が有利とは限らない。再投資前提なら、回数の差より、総コストと売買のしやすさのほうが効く場面が多いからだ。だから、受け取り重視なら1475か2524、再投資中心なら1306も十分に候補になる、という見方が自然である。
参照:1306の信託報酬率の水準/1475ファクトシート/2524マンスリーレポート
コストの実態|信託報酬だけで判断しない
ETFの比較でありがちな失敗は、信託報酬だけ見て終わることだ。これは浅い。実際の保有・売買コストには、信託報酬のほかに、売値と買値の差であるスプレッド、基準価額と市場価格のずれである乖離、そして注文を出す時間帯による約定条件が絡む。JPXの一覧では3本ともiNAVやマーケットメイクの対象として整備されているが、それでも実際の板は常に同じではない。特に成行で雑に買うと、見かけの低コストを自分で潰す。
ここで重要なのは、低い信託報酬がそのまま最終コストの低さを意味しないことだ。長期で毎月積み増す人なら、信託報酬の差は効いてくる。だが、一度に大きく売買する人や、板が薄い時間に取引する人は、スプレッドの影響を強く受ける。逆に、何年も持つ前提なら、数bpの差は無視できなくても、分配の回数や売買単位の扱いやすさのほうが体感差になることもある。コストは「年率何%か」ではなく、「自分の売買の癖まで含めて何が安いか」で判断すべきだ。
参照:JPX ETF一覧/1306商品詳細/ブラックロック商品一覧
目的別の使い分け
コアとして長期保有するなら、まず候補になるのは1306か1475である。どちらも配当込みTOPIXを低コストで押さえられる。少しでも信託報酬を抑えたいなら1475、規模の大きさや実績、定番性を重視するなら1306という分け方がしやすい。
分配金を受け取りたいなら、年2回の1475か2524が考えやすい。年1回の1306は再投資型の感覚に近く、受取タイミングを分散したい人にはやや合いにくい。分配の回数を生活資金の補助や心理的な管理に使うなら、1475か2524のほうが扱いやすい。
NISAの成長投資枠で使うなら、3本とも対象なので、この論点では差がつきにくい。したがってNISAだから1475、NISAだから1306という話にはならない。NISA口座で何を優先したいか、つまりコストか分配か、売買のしやすさかで選ぶべきである。
為替リスクを抑えたいなら、この3本は全部条件を満たす。いずれも東証上場の円建てで、日本株を対象としているので、米国ETFのようにドル転コストや為替変動を直接気にする必要はない。為替を避けて日本株コアを置きたい人には、3本とも土俵に乗る。
取り崩し期に入っているなら、年2回分配の1475か2524がやや使いやすい。もっとも、取り崩し期であっても自分で定率売却するなら年1回の1306でも問題はない。ここは商品の良し悪しではなく、受け取り方法を自動化したいか、自分で売却管理するかの差である。
参照:iシェアーズ・コア TOPIX ETF/NZAM 上場投信 TOPIX/NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信
どれを選ぶかの判断フロー
判断を雑にしないために、こう整理するとよい。まず、「配当込みTOPIXに連動する日本株コアが欲しい」という前提があるなら、この3本はどれも候補になる。その上で、最初の分岐は分配回数である。年2回受け取りたいなら1475か2524、年1回でもよく、規模や定番性を重視するなら1306が残る。
次に、信託報酬を最優先するなら1475が見やすい。段階料率による変動を理解したうえで規模の大きさを取りたいなら1306も有力である。2524は「年2回分配が欲しいが、極端にニッチな商品は避けたい」という人に置きやすい中間案になる。
そして最後に、正直に言えば「結局どちらでもよい」ケースもある。配当込みTOPIXを長期で積み立て、分配金は気にせず、板を見て指値で買う人なら、1306と1475の差は決定打にならないことがある。そういう場合は、すでに使っている証券会社での買いやすさや、保有銘柄を増やしすぎない管理のしやすさで決めてよい。無理に勝者を作る比較は不要である。
参照:JPX ETF一覧/1475ファクトシート/1306信託報酬率の水準
よくある誤解
「信託報酬が低い方が絶対に得だ」という見方は、半分だけ正しい。理由は、ETFでは保有中の年率コストだけでなく、買う瞬間のスプレッドや市場価格と基準価額のずれも実コストになるからだ。実際、3本とも低コスト帯に入っているが、どれが有利かは保有期間と売買の仕方で変わる。数年単位で持つなら信託報酬差は効くが、短期で出入りしたり、板が荒い時間に成行で買ったりするなら、その差は簡単に吹き飛ぶ。では何をするか。答えは単純で、信託報酬だけで決めず、分配回数、売買のしやすさ、注文方法まで含めて選ぶことだ。比較はスペック表ではなく、自分の使い方に引きつけて終わらせないと意味がない。
まとめ
1306、1475、2524は、どれも配当込みTOPIXを押さえるための有力な東証ETFである。違いは中身の優劣より、コスト体系、分配回数、売買実務の相性にある。定番性なら1306、低コスト重視なら1475、年2回分配とのバランスなら2524、という整理が出発点になる。保有を続ける前提が崩れていないかは、それぞれの継続条件記事で確認したい。




