ETFのコストは経費率だけじゃない|40代が見落としやすい「見えないコスト」の全体像

ETFを選ぶとき、多くの人が最初に見るのが経費率(信託報酬)だ。VOOの0.03%とeMAXIS Slim米国株式の0.09372%を比べて「VOOの方が安い」と判断する。間違いではないが、これだけでは実際のコストの全体像は見えない。

この記事では、ETF投資にかかるコストを4つの層に分けて整理する。経費率はその1つにすぎない。40代で長期保有を前提にするなら、全体のコスト構造を理解した上で、「本当に安い選択肢はどれか」を判断してほしい。

ETFのコストは「経費率」「売買手数料」「為替コスト」「スプレッド(乖離率)」の4層構造。経費率だけを比べても実質コストは見えない。特に米国ETFと国内ETF・投資信託を比較するときは、為替コストと売買手数料を含めて判断する必要がある。

第1層:経費率(信託報酬)

経費率は、ETFの運用にかかる年間費用を純資産総額に対する割合で示したもの。保有しているだけで毎日自動的に差し引かれるため、「気づかないうちに払っているコスト」だ。

米国ETFは経費率が低い傾向にある。VOO(S&P500)は0.03%、VTI(全米株式)は0.03%、VT(全世界株式)は0.07%。一方、国内ETFは同じ指数に連動するものでも経費率がやや高くなることが多い。

ただし、経費率0.03%と0.10%の差は、1,000万円の投資に対して年間7,000円。20年間で14万円。長期で見れば無視できない金額だが、他のコスト要因と比べると相対的に小さい場合がある。経費率だけに注目して、他のコストを見落とすのは本末転倒だ。

第2層:売買手数料

ETFを買う・売るときに証券会社に支払う手数料。国内ETFと米国ETFで状況が異なる。

国内ETF:多くのネット証券で売買手数料が無料化されている。SBI証券や楽天証券では、国内ETFの現物取引手数料は0円だ。ただし、一部の証券会社やプランでは手数料がかかる場合があるため確認は必要。

米国ETF:SBI証券、楽天証券、マネックス証券などでは、買付手数料無料の対象銘柄が設定されている(VOO、VTI、VT、QQQなどが対象になっていることが多い)。対象外の銘柄は約定代金の0.495%(上限22ドル)がかかる。売却時は対象銘柄でも手数料がかかる証券会社がある。

積み立てで毎月少額を買う場合は手数料の影響が大きくなる。米国ETFを少額で頻繁に売買するとコスト負けする可能性があるため、まとめて買うか、手数料無料の対象銘柄を選ぶことが重要だ。

第3層:為替コスト

米国ETFを日本円から購入する場合、円→ドルの為替両替が必要になる。この両替時に発生するのが為替コスト(スプレッド)だ。

為替コストは証券会社によって異なるが、一般的にはSBI証券が住信SBIネット銀行経由で1ドルあたり6銭、楽天証券が25銭程度だ。1ドル150円として計算すると、SBI証券なら約0.04%、楽天証券なら約0.17%のコストになる。

100万円分のドルを買う場合、SBI証券なら約400円、楽天証券なら約1,700円。1回の取引では小さく見えるが、積み立てで毎月両替していると積み上がる。また、売却時にもドル→円の両替コストがかかるため、往復で考える必要がある。

国内ETFや投資信託なら、この為替コストは発生しない(ファンド内部で両替しているが、経費率に含まれている)。米国ETFの経費率の低さと、為替コストの追加負担を比べると、少額投資では国内商品の方がトータルコストで有利になるケースがある。

第4層:市場価格と基準価額の乖離(スプレッド)

ETFは株式と同じように市場で売買されるため、「買値と売値の差(ビッド・アスクスプレッド)」が存在する。出来高が少ないETFはスプレッドが広くなり、売買のたびに見えないコストが発生する。

米国ETFの主要銘柄(VOO、VTI、QQQなど)は出来高が非常に多く、スプレッドは0.01%未満と極めて小さい。一方、国内ETFの中には出来高が少なく、スプレッドが0.5%以上になるものもある。

特に国内ETFを選ぶ際は、経費率だけでなく出来高を確認することが重要だ。経費率が0.1%でもスプレッドが0.5%なら、売買するたびに実質的なコストは0.6%になる。長期保有を前提に1回だけ買うならスプレッドの影響は相対的に小さいが、リバランスや追加投資で売買頻度が上がるとコスト負けの原因になる。

投資信託とETFのコスト比較

「米国ETFが一番安い」と言われがちだが、実際にはケースバイケースだ。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の信託報酬は0.09372%以内で、売買手数料・為替コスト・スプレッドはすべてゼロ(100円から購入可能)。

一方、VOOは経費率0.03%だが、為替コスト(往復0.08%~0.34%)と売買手数料(銘柄によっては片道0.495%)が加わる。年間投資額が少額(年100万円以下程度)であれば、投資信託の方がトータルコストで有利になることが多い。

逆に、年間数百万円以上を投資し、為替コストの安いルートを使い、手数料無料の対象銘柄を選ぶ場合は、米国ETFの方がコスト効率が高くなる。「安い方」は投資額と投資方法によって変わるため、一概には言えない。

まとめ ― コスト比較は「全層」で見る

ETFのコストを正しく比較するには、経費率・売買手数料・為替コスト・スプレッドの4層すべてを見る必要がある。経費率0.03%の米国ETFが、為替コストと手数料を加えると実質0.15%を超えることもあるし、経費率0.10%の投資信託が他のコストゼロで実質0.10%のまま済むこともある。

40代で長期投資を前提にするなら、コストの差が20年間で累積した場合にどれくらいの金額差になるかを概算してみるとよい。年間コスト差が0.05%であっても、1,000万円を20年運用すれば数十万円の差になる。逆に、コスト差が0.01%以下なら、利便性や使いやすさで選んでも実害はほぼない。

コストは大事だが、コストの最適化に時間を使いすぎるのも非合理的だ。「致命的に高いものを避ける」ことができれば、それで十分な場合が多い。

Sho
Sho

システム開発歴15年/PMP

計画・リスク管理・数値設計を軸に、
ETFの情報整理から投資判断までをテンプレ化・自動化してきた。

新NISAの時代だからこそ、
感情よりも「仕組み」で迷わない投資を。

—— 焦らず、ブレず、仕組みで勝つ。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。
コスト・売買実務
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