東証の金ETF8本を仕様で並べる|現物・器・信託報酬の二段構えを一次情報で確認する

東証で金に連動する商品を探すと、8本が並ぶ。1540・1326・1672・314A・424A・425A・447A・448A である。このうち314A・424A・425A・447A・448A の5本は2025年に設定されたものである。

JPXの銘柄詳細資料に載る信託報酬を横に並べると0.177%から0.44%まで開きがある。ただしこの数字は同じ性格の数字ではない。 424A・425A・447A・448A の4本では、表示されている料率が自ファンドと投資先の費用を合わせた概算値であり、314Aでは自ファンドの上限、残りの3本では注記のない掲載値になっている。

この記事では8本の仕様を一次情報から並べ、どこで違いが生まれているかを整理する。どれを選ぶべきかの結論は置かない。

8本の一覧

金額・比率はいずれも各資料の基準日時点のもの。基準日は項目ごとに異なるため、末尾の出典で個別に示す。

コード 銘柄名 信託報酬(税込・年率) 売買単位 分配
1540 純金上場信託(現物国内保管型) 0.440%(税抜0.40%・2026年6月30日現在) 1口 原則なし
1326 SPDRゴールド・シェア 0.40% 1口 一定の状況のみ
1672 WisdomTree金上場投資信託 0.39% 1口 なし
314A iシェアーズ ゴールド ETF 0.220%(税抜0.200%)以内 10口 年2回
424A グローバルX ゴールド ETF(為替ヘッジあり) 0.1775%程度(実質) 10口 年2回
425A グローバルX ゴールド ETF 0.1775%程度(実質) 10口 年2回
447A ステート・ストリート・スパイダー ゴールド ETF(為替ヘッジなし) 0.177%程度(実質) 10口 年1回
448A ステート・ストリート・スパイダー ゴールド ETF(為替ヘッジあり) 0.177%程度(実質) 10口 年1回

「以内」「程度」「実質」という但し書きが付く欄と、付かない欄がある。 ここが最初の分岐点になる。

器は3つに分かれる

8本は同じ「金ETF」として並ぶが、商品の作りは3種類ある。

1. 国内で金地金の現物を保管する信託(1540)

管理会社は三菱UFJ信託銀行。一定の受益権口数を保有していれば、受益権と引き換えに貴金属地金の現物を受け取ることも可能という設計を持つ。

対象指標については、JPXの銘柄詳細資料に次の記載がある。

指標価格は、国内の商品先物取引市場における金の先物価格から評価した、金地金の現在の理論価格です。具体的には、大阪取引所における金地金1グラムあたりの先物価格を、フォワードレート(先物価格と現物価格との値差を、現物価格を基準として年率換算し、百分率で表したものをいいます。)により現在価値に引き直し、金地金1グラムあたりの現在の理論価格を算出しています。

現物を保管する信託だが、連動の対象は大阪取引所の先物価格から算出した理論価格である。現物保管型という名称から連想する内容と、指標の算出方法は別のものとして書かれている。

現物との交換には費用が別に定められている。事務取扱手数料は申込み一回あたり5,500円(税抜5,000円)、金地金改鋳費用は金地金1kgあたり22,000円(税抜20,000円)、送料相当額は1kgで21,590円(税抜19,628円)である。これらとは別に、消費税等として転換価格の10%相当額が記載されている。

2. 外国の管理会社が管理する商品(1326・1672)

1326の管理会社はワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ・エルエルシー、対象指標は金地金価格(LBMA金価格)である。

1672は管理会社がウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッドで、JPXの資料に保管の仕組みが書かれている。

金の現物はHSBC銀行USAがカストディアンとして保護・預かりを行なっています。カストディアンが保管する金地金はすべて、ロンドン地金市場協会(LBMA)の規定を満たすロンドン金市場受渡適合品(グッド・デリバリー・バー)です。

この2本は管理会社が外国法人で、資産運用業協会の対象商品リスト(上場ファンド)にも掲載されていない。1326について確認できるのは、管理会社と対象指標が金地金価格(LBMA金価格)であることまでで、資産の保有形態は添付資料からは確認できなかった。

JPXの銘柄詳細資料では、この2本の信託報酬に「以内」「程度」の注記が付いていない。ただし注記が無いことをもって、将来にわたって変わらない率であるとまでは読めない。

3. 海外のETF・ETCに投資する国内籍の投資信託(314A・424A・425A・447A・448A)

2025年に設定された5本は、いずれも金地金を直接保有するのではなく、別のETF・ETCの受益証券に投資する形をとる。各資料の記載は次のとおり。

コード 資料に記載された主な投資対象 対象指数
314A ISHARES PHYSICAL GOLD ETC(2026年7月31日時点の保有比率98.95%・保有銘柄数1) LBMA金価格(円換算ベース)
424A オーストラリア籍の上場投資信託。主としてGlobalXGoldBullionETFの受益証券 MiraeAssetGoldBullionETFHedgedIndex
425A オーストラリア籍の上場投資信託。主としてGlobalXGoldBullionETFの受益証券 MiraeAssetGoldBullionETFIndex(円換算ベース)
447A 主としてSPDR®ゴールド・ミニシェアーズ・トラストの受益証券 LBMA金価格(円換算ベース)
448A 主としてSPDR®ゴールド・ミニシェアーズ・トラストの受益証券 LBMA金価格(円ヘッジベース)

425Aの交付目論見書には、投資先について「GlobalXGoldBullionETFは、実質的に金を裏付け資産とし、金現物価格への連動をめざすETFです」という記載がある。447A・448Aの投資先の資産保有形態については、確認した資料の範囲では記載を見つけられなかった。

この構造が、費用の表示に二段構えを生む銘柄を作っている。

信託報酬が二段構えになる

425Aと424Aの交付目論見書には、費用が次のように分けて記載されている。

投資対象とするETF 年率0.15%程度 投資対象ファンドにおける運用管理費用等です。実質的に負担する運用管理費用 年率0.1775%(税込)程度

447Aと448Aも同じ形をとる。

実質的な負担 純資産総額に対し年率0.177%(税抜0.17%)程度。SPDR®ゴールド・ミニシェアーズ・トラストの受益証券の管理費用等年率0.10%を含めた実質的な信託報酬率の概算値です(2026年5月末現在)。ただし、この値は目安であり、SPDR®ゴールド・ミニシェアーズ・トラストの受益証券の実際の組入れ状況等により変動します。

447A・448A自身の信託報酬は「年率0.077%(税抜0.07%)以内」と別に定められている。表に並ぶ0.177%は、この0.077%と投資先の0.10%を足した概算値である。

つまりこの4本では、表示されている料率が「決まった値」ではなく「見積もり」になっている。目論見書は「この値は目安であり」「実際の組入れ状況等により変動します」と明記している。

314Aはこの4本と表記が違う。 運用管理費用は「年0.220%(税抜0.200%)以内」という上限の形で書かれており、これは自ファンドの料率である。投資先ETCの費用を含めた実質値の記載は、確認した資料の範囲では見つけられなかった。314Aの0.220%を、424A・425A・447A・448Aの概算値と同じ性格の数字として並べることはできない。

なお314Aには、その他の費用・手数料として上場に係る費用と対象指数の商標の使用料が年0.0385%と記載されている。425A・424Aでも商標使用料が年率0.02%以内と別記されている。

信託報酬と総経費率の違い、および同じ「信託報酬」でも資料によって値が変わる理由は、信託報酬と総経費率の違い|ETFのコスト表示が資料で変わる4つの理由で扱っている。

為替ヘッジの有無で対になっている

2025年設定の5本のうち4本は、ヘッジあり・なしの対で用意されている。

ヘッジなし ヘッジあり 運用会社
425A 424A GlobalX Japan
447A 448A ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ

424Aの交付目論見書には為替ヘッジの区分が「あり(フルヘッジ)」と記載され、425Aは「なし」と記載されている。448Aの対象指数はLBMA金価格の円ヘッジベース、447Aは円換算ベースである。

本記事で扱う8本の中では、ヘッジあり・なしの対として確認できるのはこの2組である。1540・1326・1672・314Aには、8本の中に対になる銘柄が見当たらない。

なお424Aの交付目論見書には、ヘッジのための取引に関して次の記載がある。

ETFの組入総額と金先物取引等の買建玉の時価総額の合計額が、信託財産の純資産総額を超えることがあります。

NISAの成長投資枠は、8本のうち7本が対象

対象可否は公表資料で確認できる。ただし掲載先の分かれ方は、上で見た器の分類とは一致しない。

コード 掲載されている一覧
314A・424A・425A・447A・448A 資産運用業協会「成長投資枠対象商品リスト(上場ファンド)」
1540・1326 日本取引所グループ「特定非課税管理勘定(NISAの成長投資枠)対象銘柄一覧」
1672 どちらにも掲載なし

1540と1326は器が違うが同じ一覧に載り、器の近い1326と1672は別の扱いになっている。2つの一覧を見ないと確認が完結しない。 資産運用業協会のリストだけを見ると、1540と1326が対象外に見える。この確認手順はETFがNISAで買えるか確認する方法|成長投資枠の対象リストは2つあるで扱っている。

2025年設定の5本は、資産運用業協会のリストに設定日と成長投資枠取扱可能日が記載されている。

コード 設定日・設立日 成長投資枠取扱可能日 決算回数
314A 2025年1月14日 2025年1月16日 年2回
424A・425A 2025年9月24日 2025年9月26日 年2回
447A・448A 2025年11月17日 2025年11月19日 年1回

規模の差は大きい

JPXの銘柄詳細資料(いずれも2026年2月27日基準)による。

コード 純資産総額 受益権口数
1326 288,037億円 385,200,000口
1540 19,256億円 77,378,737口
314A 951億円 248,400,000口
425A 229億円 53,190,000口
424A 38億円 9,390,000口
447A 37億円 11,360,000口
448A 9億円 2,800,000口
1672 記載なし 記載なし

1672はJPXの資料に純資産総額と受益権口数の記載がなく、取得できなかった

1326の288,037億円は他の銘柄と桁が異なるが、この数字がどの範囲を集計したものかは、確認した資料からは分からなかった。 管理会社が外国法人である点も含め、他の銘柄と同じ基準で並ぶ数字として読めるかは確認できていない。

なお314Aについては、運用会社のファクトシートに純資産74,481.17百万円(2026年7月31日時点)という別基準日の値がある。基準日が違う数字を同じ表に並べると比較にならないため、上の表はJPX資料の基準日でそろえている。

分配の扱いは3通りある

  • 原則として支払いがない(1540)/支払いはない(1672)
  • 予め定める2つの状況に該当することとなった場合のみ(1326)
  • 決算日を定めて年1回または年2回(314A・424A・425A・447A・448A)

ただし後者も、分配が出ることを意味しない。JPXの銘柄詳細資料(2026年2月27日基準)では、8本すべての1口あたり分配金が0円と記載されている。314Aについては、運用会社のファクトシートに2025年8月9日・2026年2月9日の分配金実績がいずれも0.0000円と記載されている。

いずれも各資料の基準日時点の記載であり、全期間の実績を示すものではない。

決算回数が設定されていることと、分配金が支払われることは別である。

比べるときに見る軸

一次情報から確認できた範囲では、8本の違いは次の軸で整理できる。

  1. … 国内で現物を保管する信託か、外国の管理会社が管理する商品か、別のETF・ETCの受益証券に投資する国内籍の投資信託か
  2. 料率の性格 … 注記のない掲載値か、上限(「以内」)か、投資先を含めた概算値(「程度」「実質」)か
  3. 為替ヘッジ … 対になる銘柄が用意されているか
  4. NISA成長投資枠 … 掲載されている一覧はどちらか、掲載されていないか
  5. 売買単位 … 1口か10口か
  6. 規模 … 純資産総額と受益権口数。ただし基準や範囲が銘柄で異なる
  7. 分配の設計 … 決算日が定められているか。実績が0円かどうか

これらは優劣の軸ではない。 器が違えば料率の意味も違い、規模の数字も同じ基準では並ばない。

よくある誤解

「信託報酬が低いほうがコストが低い」 0.1775%(424A・425A)と0.177%(447A・448A)は投資先の費用を含めた概算値で、目論見書に「程度」「目安」と明記されている。314Aの0.220%は自ファンドの上限を示す「以内」の表記である。表記の性格が違う数字を大小で比べる形にはなっていない。

「現物保管型なら金の現物価格に連動する」 1540の対象指標は、大阪取引所の金先物価格から算出した理論価格である。現物を保管することと、何に連動するかは別に定められている。

「金ETFはNISAで買えない」/「金ETFなら買える」 8本のうち7本は成長投資枠の対象で、1672は2つの一覧のどちらにも掲載がない。一括りにはならない。

「決算日があるから分配金が出る」 314Aの直近2回の分配金実績は0.0000円である。JPXの資料でも8本すべての1口あたり分配金は0円と記載されている。

「純資産総額が大きいほうが安心」 1326の288,037億円は他の銘柄と桁が異なるが、集計の範囲が同じかどうかは資料から確認できなかった。1672は記載自体がない。同じ列に並んでいることが、同じ基準であることを保証しない。

取得できなかった項目

一次情報にあたって確認できなかったものを記録しておく。

  • 1672の純資産総額・受益権口数 … JPXの銘柄詳細資料に記載がない
  • 314Aの実質的な負担率 … 交付目論見書のPDFはテキストとして読み取れず、ファクトシートと上場承認資料には自ファンドの料率のみ記載。投資先ETCの費用を含めた率は確認できなかった
  • 1540の総経費率 … 信託報酬0.440%とは別に監査報酬・租税・借入利息相当額・売却手数料・上場維持費用が信託財産から支弁される旨の記載はあるが、具体的な料率は明記されていない
  • 1326の総経費率、実質的な負担率 … 確認した資料の範囲では見つけられなかった
  • 8本の総経費率 … いずれも一次情報では確認できていない

これらは推測で埋めていない。

まとめ

本記事で扱った8本は、器で3種類に分かれる。国内で現物を保管する信託(1540)、外国の管理会社が管理する商品(1326・1672)、別のETF・ETCの受益証券に投資する国内籍の投資信託(314A・424A・425A・447A・448A)である。

信託報酬として表示される数字は、注記のない掲載値・上限・投資先を含めた概算値が混在している。同じ列に並んでいるが、同じ性格の数字ではない。

ヘッジあり・なしの対として確認できたのは424A/425Aと447A/448Aの2組、NISA成長投資枠の一覧に掲載が無いのは1672のみ、JPX資料の基準日時点では8本すべての1口あたり分配金が0円である。

比べるときは、料率の数字の前に、その数字がどの器の、どの性格の値なのかを資料で確かめる形になる。

データの出典

本記事の数値・名称は以下の一次情報に基づく。取得日は2026年8月18日。

数値は各資料の基準日時点のものであり、その後の運用状況によって変動する。銘柄の追加・仕様の変更もあるため、確認する際は各運用会社および取引所の最新資料を参照してほしい。

Sho
Sho

システム開発歴15年/PMP

計画・リスク管理・数値設計を軸に、
ETFの情報整理から投資判断までをテンプレ化・自動化してきた。

新NISAの時代だからこそ、
感情よりも「仕組み」で迷わない投資を。

—— 焦らず、ブレず、仕組みで勝つ。

Shoをフォローする
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。
ETF銘柄ガイド日本ETF|コモディティ