itcareer40.jpコラムETFの目論見書
ETFを買う前に、私は目論見書と月次レポートを毎回読みます。
目論見書は、ETFが何を目指して、どう運用し、どんな費用がかかるのかを書いた資料です。月次レポートには、そのETFが実際にどう運用されているかが載っています。
システムの仕様書を読んできた私には、これがかなり馴染みます。
目論見書は、ETFの仕様書に近いものです。
名前だけでは分からないことも、元の仕様を読めば書いてあります。
最初に見るのは「何に連動するか」
私がまず見るのは、何に連動するETFなのか、そして、どうやって連動させているのかです。
連動とは、ETFの基準価額の変動率を、特定の指数の変動率に近づけることです。
何に、どう連動させるのかは、ETFの名前だけを見ていると意外と分かりません。
たとえば、200A、213A、221Aは、いずれも日経半導体株指数をもとにしたETFです。
ところが、200Aが連動を目指すのは「日経半導体株指数(トータルリターン)」で、213Aと221Aは「日経半導体株指数」です。
違うのは「配当」です。
トータルリターンは、株価の動きだけでなく配当も加味して計算します。
実際、2026年8月31日の月次レポートを見ると、指数の過去1年の騰落率は、
- 200A:155.7%
- 213A:152.72%
- 221A:152.7%
となっています。
213Aと221Aは同じ指数なので、ほぼ同じ数字です。一方、200Aは配当込みの指数なので、そもそも同じ条件の数字ではありません。
ETF名を眺めているだけなら、どれも「日経半導体のETF」です。
仕様を見ると、少し違います。
同じNASDAQ100系でも、中身の作り方は違う
もう一つ分かりやすいのが、1545と2840です。
1545は税引前配当込み、2840は税引後配当込みのNASDAQ100指数への連動を目指していて、どちらも為替ヘッジなしです。
ただし、2026年8月31日時点の資産構成を見ると、1545は株式98.0%です(このほかに指数先物が1.9%あります)。
一方の2840は、
- 外国株式:77.8%
- 外国投資信託:15.4%
- 外国株式先物:6.7%
という構成です。
外国投資信託の15.4%は「INVESCO QQQ TRUST, SERIES TRUST (ETF)」です。
つまり2840は、株を直接持つだけではなく、別のETFや先物も使っています。
先物とは、将来の売買について条件をあらかじめ決めて取引する仕組みです。
これも目論見書を読むと、ちゃんと書いてあります。
2840の交付目論見書には、
効率性の観点から、米国株式の指数との連動をめざすETF(上場投資信託証券)に投資する場合があります
とあります。
さらに、そのETFにかかる費用については、
上場投資信託証券は市場価格により取引されており、費用を表示することができません
と記載されています。
NASDAQ100系の指数への連動を目指すETFでも、裏側の実装は同じとは限りません。
このあたりは、システムでもETFでも妙に似ています。
表から見える機能が同じでも、中でどう作っているかは別の話です。
目論見書は「難しい資料」ではなく、仕様書だと思って読む
私は目論見書を、難解な金融資料とはあまり考えていません。
仕様書に近いと思っています。
仕様書なら、「いつの情報なのか」「単位は何なのか」「どの条件が適用されるのか」を確認します。
ETFの資料も同じです。
1545は2026年5月26日、受益権1口を200口に分割しました。
受益権の分割とは、一つの受益権を細かい口数に分けることです。現在の売買単位は10口です。売買単位とは、取引所で売買するときの口数の単位です。
ところが、2026年2月27日時点のJPX資料を見ると、「売買単位 1口単位」と書いてあります。
どちらかが間違っているわけではありません。
見ている時点が違います。
さらに月次レポートでは、1545、2840、200Aの基準価額や分配金が「100口あたり」で表示されています。
基準価額は、ETFの純資産を口数あたりで表した値で、信託報酬を差し引いたあとの値です。
つまり、
「1口」 「10口」 「100口」
という数字が、同じETFの資料の中に出てきます。
ここだけ切り取って見ればややこしく見えますが、それぞれ何の単位なのかは資料に書いてあります。
仕様書と同じで、単位を読めば分かります。
「30万口」が「6000万口」になる理由も書いてある
1545の交付目論見書には、償還条件として、
受益権口数が20営業日連続して30万口を下回った場合等
と書かれています。
ところが、そのすぐ後には、
なお、2026年5月26日付で、30万口を6000万口とする約款変更を予定しております
とあります。
約款は、ETFの運用や償還などについて定めたルールです。
運用会社の2026年2月17日のお知らせでは、この変更は「受益権分割に伴う約款変更」の一つで、適用日は2026年5月26日です。変更後の口数に関する条件は「受益権の口数が20営業日連続して6,000万口を下回った場合」です。
1口を200口に分けたので、30万口の200倍が6000万口です。
数字だけ拾えば「30万口なのか6000万口なのか」となりますが、時点と仕様変更まで読めばつながります。
私はこういうところも、かなり仕様書っぽいと思っています。
読むのは、仕事の癖です
目論見書を毎回読むのは、仕事の癖です。
元の仕様を見ないと気が済みません。
実際に買う前には、元の資料を読みます。
「目論見書なんて読まなくていい」と言われても
「インデックスETFなら中身はどれも同じ。目論見書なんて読まなくていい」
そう言われても、私は気にしません。
全部読むのが面倒なら、AIに要約させる
とはいえ、目論見書をそのまま読むと文章量はあります。
今なら、AIに要約させればかなり読みやすくなります。
私はETFを買う前に、目論見書と月次レポートを毎回読みます。
投資だから特別なことをしている感覚ではありません。
システムを見るときに仕様書を読むのと同じです。
元の仕様を見ないと、気が済まないからです。
それだけです。
このコラムは、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。例に出した銘柄は、筆者の保有を示すものではありません。
この記事で言えないこと
- 目論見書を読んで見落としに気づいた場面や、読んで買うのをやめた経験は、筆者の答えに含まれていないため書いていません。
- 例に出した銘柄の数字は資料の基準日時点のもので、その後の値は確かめていないため書いていません。
- AIに要約させたあとの読み方は、筆者の答えに含まれていないため書いていません。
数値の基準日
- 対象指標・売買単位(JPX 銘柄詳細資料)
- 2026年2月27日
- 騰落率・資産の内訳・100口あたりの表示(月次レポート)
- 2026年8月31日
- 1545 交付目論見書の使用開始日
- 2026年4月29日
- 2840 交付目論見書の使用開始日
- 2026年6月4日
- 1545 約款変更のお知らせ
- 2026年2月17日
- 資料を取得した日
- 2026年9月28日
次に読む
例に出した2組については、次の記事で扱っています。
出典
- JPX 銘柄詳細資料 200A(2026年2月27日基準)
- JPX 銘柄詳細資料 213A(2026年2月27日基準)
- JPX 銘柄詳細資料 221A(2026年2月27日基準)
- 日本経済新聞社「日経半導体株指数」算出要領(2025年7月24日)
- 野村アセットマネジメント 200A 月次レポート(2026年8月31日)
- アモーヴァ・アセットマネジメント 213A マンスリーレポート(2026年8月31日)
- 三菱UFJアセットマネジメント 221A 月次レポート(2026年8月31日)
- 野村アセットマネジメント 1545 月次レポート(2026年8月31日)
- 大和アセットマネジメント 2840 月次レポート(2026年8月31日)
- 大和アセットマネジメント 2840 交付目論見書(使用開始日 2026年6月4日)
- JPX 銘柄詳細資料 1545(2026年2月27日基準)
- 野村アセットマネジメント 1545 交付目論見書(使用開始日 2026年4月29日)
- 野村アセットマネジメント 上場投資信託(ETF)の受益権分割および売買単位変更に関するお知らせ(2026年2月17日)

