NISAで売ったら枠はどうなるか|復活額は簿価・再利用は翌年以降という2つの前提

保有している銘柄を売ろうか迷うとき、値段の話より先に引っかかることがある。売ったら、使った枠はどうなるのか。

新NISAでは、売却した商品の簿価の分だけ非課税保有限度額が復活する。ただし前提が2つある。復活する金額は時価ではなく簿価で、その復活分を再利用できるのは翌年以降である。さらに、復活分がその年の年間投資枠に上乗せされるわけでもない。

この3点を知らないまま売ると、想定と違う結果になりやすい。この記事では、売るかどうかで迷いやすい4つの場面ごとに、制度の側で先に決まっていることを整理する。売るべきかどうかの結論は置かない。

先に押さえておく3点

金融庁の資料には、次のように記載されている。

商品を売却した場合、売却した商品の簿価の分だけ非課税保有限度額が復活し、翌年以降に再利用することが可能。

再利用できる非課税保有限度額が、その年の年間投資枠に上乗せされるわけではない。

そして、復活する金額の考え方について、同じ資料は次の対比を置いている。

内容
非課税保有限度額の再利用が可能となる金額 購入時の金額(=簿価)
保有期間中の金額 その時点での価格(=時価)のため、保有期間を通じて変動します

復活するのは買ったときの金額に基づく。売ったときの金額ではない。 含み益が出ていても、含み損を抱えていても、復活する非課税保有限度額は購入時の金額(簿価)による。

場面1:保有銘柄を入れ替えたい

セクターETFを整理して全世界株に寄せたい、同じ指数でより低コストの銘柄に移りたい、といった入れ替えの場面。

ここで効いてくるのが「翌年以降」という条件である。売却による復活分は、同年中の年間投資枠には上乗せされない。同年中の買付けは、その年の年間投資枠と非課税保有限度額の範囲内で行うことになる。

年間投資枠は制度で決まっている。国税庁の資料には次の記載がある。

新NISAでは、その年に投資できる上限額(年間投資上限額)が定められており、その金額は、特定累積投資勘定で120万円、特定非課税管理勘定で240万円となっています〔注記略〕

特定累積投資勘定はつみたて投資枠、特定非課税管理勘定は成長投資枠のことである。同じ資料には次の注記も置かれている。

その年の投資額が、この年間投資上限額に達していない場合であっても、非課税保有限度額(1,800万円(うち特定非課税管理勘定は1,200万円))を超えて投資することはできません。

年間投資枠が余っていても、非課税保有限度額を超えては投資できない。 入れ替えを考えるとき、確認する数字は「その年の年間投資枠のうち使った額」と「非課税保有限度額に対する簿価残高」の2つになる。

なお制度の運用面について、金融庁は次の措置を記載している。

金融機関による「成長投資枠」を使った回転売買への勧誘行為に対し、金融庁が監督指針を改正し、法令に基づき監督及びモニタリングを実施

これは金融機関の勧誘行為に対する監督についての記載であり、引用文自体が利用者の売買回数を定めるものではない。

場面2:まとまったお金が要る

教育費、住宅関連、医療費など、現金が必要になる場面。

このとき効くのは「復活するのは簿価」という条件である。

売却時の時価が購入時の金額と異なっていても、復活する非課税保有限度額は購入時の金額(簿価)に基づく。値上がりしている場合も、値下がりしている場合も同じである。

売却時の金額と、復活する非課税保有限度額は算定の基準が異なるため、一致するとは限らない。

もう1点、NISA口座の損益の扱いについて金融庁の資料は次のように記載している。

NISA口座から得られた損益を、他の口座(一般口座や特定口座)と損益通算することは不可。また、損失を翌年以降に繰越することも不可。

現金が必要な場面では、NISA口座と特定口座のどちらから捻出するかという選択が生じることがある。その判断に関わる条件として、この損益通算の扱いがある。

場面3:方針を変えたい

個別セクターから全世界株へ、高配当中心から指数中心へ、といった設計そのものを変える場面。

入れ替えと違うのは、動かす金額が大きくなりやすいことである。その年にNISAで予定する新規買付額が、残っている年間投資枠を超える場合、その全額を同年中にNISAで買い付けることはできない。 売却による復活分は翌年以降の再利用となるため、同年中の買付けには使えない。

非課税保有限度額の管理方法も関わる。金融庁の資料には次の記載がある。

非課税保有限度額は利用者ごとに管理される(国税庁による一括管理)。複数金融機関に商品を保有する利用者については、その非課税保有限度額は全て合算して管理される。

上限は、つみたて投資枠と成長投資枠で合計1,800万円(簿価=取得金額)。ただし、成長投資枠のみを利用する場合には、1,200万円(簿価)が上限。

枠は口座単位ではなく利用者単位で合算される。 複数の金融機関にNISA商品を保有している場合も、非課税保有限度額は合算して管理される。

金融機関を変更する場合には、別の条件が加わる。

金融機関の変更を行い、変更前の金融機関において保有する商品を売却した場合、その枠を再利用できるのは、変更後の金融機関におけるNISA口座に限られる。

場面4:損が出ている銘柄を整理したい

含み損のある銘柄を整理したい場面で確認できるのは、次の記載である。

NISA口座から得られた損益を、他の口座(一般口座や特定口座)と損益通算することは不可。また、損失を翌年以降に繰越することも不可。

NISA口座の損益は、一般口座や特定口座との損益通算ができず、損失を翌年以降へ繰り越すこともできない。

一方で、復活する非課税保有限度額は簿価に基づく。値下がりしている銘柄を売却した場合も、復活額は購入時の金額による。時価が下がっていることは、復活する金額には影響しない。

「翌年以降」について確認できること

公表資料から確認できるのは、復活分を再利用できるのが翌年以降であるという点までである。金融庁のよくある質問も「翌年以降に再利用できることとなります」としている。

なぜ翌年以降なのかを説明した記載は、確認した資料の範囲では見つけられなかった。

関連する事務手続として、国税庁のQ&Aは【基準日】を「令和7年以後の各年12月31日」と定義し、金融商品取引業者等が基準日時点の残高情報(特定累積投資勘定基準額・特定非課税管理勘定基準額)を提供する手続を扱っている。同資料は「令和8年1月から始まる新NISAの基準額提供事項の提供」に係る手続を取りまとめたものとされ、注記に「このQ&Aは令和8年7月1日現在の法令に基づいて作成しています」とある。

ただしこの資料は金融商品取引業者等向けの事務手続を扱うもので、再利用の時期がこの基準日によって決まるとは記載していない。 本記事でも、両者を結び付けた説明はしない。

2023年までのNISAは別扱い

旧制度の残高については、金融庁の資料に次の記載がある。

2023年までのNISAにおける残高は、現行NISAの非課税保有限度額の外枠で管理される。

2023年までのNISA口座において保有している商品を売却しても、現行NISAの非課税保有限度額は再利用は不可。

旧制度の商品を売っても、現行NISAの非課税保有限度額は再利用できない。 つみたてNISA・一般NISAの残高が残っている場合、この点は分けて考える必要がある。

売る前に確認できること

制度の側で決まっていることから、確認できる項目を整理する。

  1. 復活する金額は簿価か、時価か … 購入時の金額(簿価)である
  2. 復活分を再利用できるのはいつか … 翌年以降である
  3. 復活分は年間投資枠に足されるか … 足されない
  4. 年間投資枠の上限と、自分の利用済額 … 上限はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円
  5. 非課税保有限度額の上限と、自分の簿価残高 … 上限は総枠1,800万円、成長投資枠は内数で1,200万円
  6. 売る対象は現行NISAか、2023年までのNISAか … 後者は現行NISAの非課税保有限度額を再利用できない
  7. 金融機関を変更したか … 変更後に、変更前の金融機関に保有する商品を売却した場合、その枠を再利用できるのは変更後の金融機関のNISA口座に限られる

これらは売るかどうかを決める材料であって、売るべきかどうかの答えではない。 手元にいくら必要か、設計をどう変えたいかは制度の外側の話になる。

よくある誤解

「売ったら、その分すぐに買い直せる」 金融庁の資料では「翌年以降に再利用することが可能」とされている。同じ年のうちに買い直す場合、その買付は年間投資枠から出る。

「値上がりしていたら、増えた分だけ枠も多く復活する」 再利用が可能となる金額は購入時の金額(=簿価)である。保有期間中の金額は時価で変動するが、復活する金額は購入時の金額に基づく。

「枠が復活すれば、その年にたくさん投資できる」 「再利用できる非課税保有限度額が、その年の年間投資枠に上乗せされるわけではない」と明記されている。年間投資枠の上限は変わらない。

「年間投資枠が余っていれば、いくらでも投資できる」 国税庁の資料では、年間投資上限額に達していない場合でも非課税保有限度額を超えて投資することはできないとされている。

「NISAで損が出たら、他の利益と相殺できる」 NISA口座の損益は他の口座と損益通算できず、損失の繰越もできないと記載されている。

「旧NISAの商品を売れば、新NISAの枠が復活する」 2023年までのNISA口座の商品を売却しても、現行NISAの非課税保有限度額は再利用できないと記載されている。

確認できなかったこと

一次情報にあたって記載を見つけられなかったものを記録しておく。

  • 復活した枠に使用期限があるか … 金融庁のよくある質問には該当する項目がなく、「翌年以降に再利用することが可能」という記載にとどまる
  • つみたて投資枠と成長投資枠で復活の扱いに違いがあるか … 両者で扱いが異なる旨の記載は見つけられなかった。国税庁の資料では特定累積投資勘定と特定非課税管理勘定それぞれの基準額が扱われているが、復活の要件に差があるとする記載はない
  • 翌年の具体的にいつから再利用できるか … 「翌年以降」という記載までで、月日を特定する記載は見つけられなかった
  • 金融庁資料の図に示された例示金額 … 簿価と時価の対比を示す図に金額が記載されているが、PDFからの読み取りで金額と項目の対応を確定できなかったため、本記事では引用していない

これらは推測で埋めていない。

まとめ

新NISAでは、売却した商品の簿価の分だけ非課税保有限度額が復活する。ただし復活額は簿価に基づきその復活分を再利用できるのは翌年以降であり、復活分がその年の年間投資枠に上乗せされることはない。

売るかどうかで迷う場面は、銘柄の入れ替え、まとまった出費、方針の変更、含み損の整理と分かれるが、どの場面でもこの3点は共通して効く。

制度の側で決まっていることは公表資料で確認できる。手元の残高と照らして、どの数字を見るかを先に決めておくと、値段の動きに引きずられずに判断しやすくなる。

NISAで買える商品の範囲そのものについては、ETFがNISAで買えるか確認する方法|成長投資枠の対象リストは2つあるで扱っている。

データの出典

本記事の数値・制度の記載は以下の一次情報に基づく。取得日は2026年8月18日。

  • 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」 … 非課税保有限度額(総枠1,800万円・成長投資枠1,200万円)、簿価による管理、国税庁による一括管理と複数金融機関の合算、売却時の復活と翌年以降の再利用、年間投資枠に上乗せされない旨、金融機関変更時の扱い、2023年までのNISAの外枠管理と再利用不可、損益通算・繰越不可、再利用が可能となる金額と保有期間中の金額の対比
  • 金融庁「NISAの抜本的拡充・恒久化のイメージ」 … 「簿価残高方式で管理(枠の再利用が可能)」、年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)、非課税保有期間の無期限化、口座開設期間の恒久化、成長投資枠を使った回転売買への勧誘行為に対する監督指針の改正
  • 金融庁 NISA特設ウェブサイト「よくある質問」 … 非課税保有限度額が「買付け残高(簿価残高)で管理されます」、売却分は「翌年以降に再利用できることとなります」
  • 金融庁 NISA特設ウェブサイト「新しいNISA」 … 「売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります」、つみたて投資枠と成長投資枠の併用可否
  • 国税庁「新NISAの基準額提供事項の提供に係る手続等についてのQ&A」 … 令和8年7月1日現在の法令に基づく。年間投資上限額(特定累積投資勘定120万円・特定非課税管理勘定240万円)、年間投資上限額に達していなくても非課税保有限度額を超えて投資できない旨、【基準日】=令和7年以後の各年12月31日、特定累積投資勘定・特定非課税管理勘定の定義

制度は改正される可能性がある。判断の際は、各資料の最新版を確認してほしい。個別の税務上の取扱いについては、所轄の税務署または税理士に確認する形になる。

Sho
Sho

システム開発歴15年/PMP

計画・リスク管理・数値設計を軸に、
ETFの情報整理から投資判断までをテンプレ化・自動化してきた。

新NISAの時代だからこそ、
感情よりも「仕組み」で迷わない投資を。

—— 焦らず、ブレず、仕組みで勝つ。

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