itcareer40.jpETFの基礎318A
318Aが連動を目指すのはVIX指数そのものではなく、VIXの先物を毎日乗り換える指数で、その乗り換えでも損益が出ることがあります。
318A(VIX短期先物指数ETF)は、名前にVIXと付くETF(証券取引所に上場する投資信託)です。けれども2026年10月30日の月次レポートで、組入銘柄の欄にあるのはUS T-BILLの1銘柄だけで、比率は56.40%でした。
同じ資料の資産構成比では、外国債券が同じ56.40%で、VIXの先物(将来の決めた期日に、今決めた価格で売買する約束の取引)は101.22%です。どちらも純資産総額(資産の総額から費用を差し引いた額)に対する比率で、先物は資産の内訳とは別に並びます。
VIXの名前が付いたETFなのに、組入銘柄の欄にVIXの文字が1つも無いのは、資料を開いて意外でした。
318Aが連動を目指すのは、VIX指数そのもの?
VIX指数は、S&P500指数が、この先30日間にどれだけ変動すると市場が考えているかを測る指数です。318Aは、このVIX指数そのものへの連動を目指すETFではありません。
VIX指数は、S&P500指数のオプション取引(決めた価格で買ったり売ったりできる権利を売買する取引)の価格から計算します。VIXの先物は、このVIX指数を対象にした先物です。CBOE先物取引所に上場しています。
318Aの対象指標は、S&P 500 VIX短期先物指数超過リターンです。JPXの銘柄詳細資料によると、318Aは「円換算した対象指標に連動する投資成果を目指す商品」です。
その指数は、満期日が隣り合う2つのVIXの先物を使います。期間の短いほうから長いほうへ、買いを毎日乗り換える取引の値動きを測ります。318Aは、外国の金融商品取引所に上場する先物を使います。
318Aは、基準価額(1口あたりの資産の価値)の動きを、円に換算した指数の動きに合わせることを目指します。対象は、VIX指数そのものの動きではなく、先物を乗り換える指数の動きです。
318Aの為替ヘッジ(外貨建ての資産の、為替の動きの影響を小さくする手法)について、交付目論見書は外貨建ての資産に「原則として為替ヘッジを行いません」と書いています。
JPXの銘柄詳細資料によると、VIX指数への連動を目指した場合と比べて、318Aの価値は下回るおそれがあります。
下の図1は、VIX指数から先物、乗り換える指数を経て、318Aが連動を目指す値までのつながりを示します。
318Aが連動を目指すのは、満期日が隣り合う2つのVIXの先物の買いを毎日乗り換える指数を、円に換算した値で、VIX指数そのものではありません。
参照:JPXの銘柄詳細資料・用語集、シンプレクス・アセット・マネジメントの交付目論見書・商品ページ、資産運用業協会の用語集
VIXの先物を、毎日少しずつ次の限月へ乗り換える
先物は、限月(先物を取引できる期限の月)ごとに商品が分かれています。
318Aの指数では、満期の早いほうの第1限月の買い建て(先物を買って、その取引をまだ終えていない状態)を売ります。そして、次の第2限月を買い建てます。この乗り換えを、取引所の営業日ごとに少しずつ行います。
交付目論見書には、1ヵ月を30日と仮定した乗り換えの説明があります。これは「概念を説明するためのもの」で、指数の正確な計算方法ではありません。
- 1日目は、第1限月が100%です。
- 2日目は、第1限月が29/30、第2限月が1/30です。
- 3日目は、第1限月が28/30、第2限月が2/30です。
- 30日目は、第2限月が100%です。
最後の時点では、それまでの第2限月が第1限月になります。下の図2は、この説明に沿って、次の限月へ少しずつ割合を移す様子を示します。
先物の価格は、限月によって違います。コンタンゴ(先の限月の先物ほど価格が上回る状態)では、価格が下回る第1限月を売り、上回る第2限月を買います。
反対の並びは、バックワーデーション(満期の近い先物の価格のほうが上回る状態)です。この場合は、価格が上回る第1限月を売り、下回る第2限月を買います。乗り換えでは、この価格の並びによって損益が出ることがあります。
交付目論見書では、第2限月の価格が上回る形で「他のすべてが変わらない場合」、乗り換えは損失になります。日がたつと、買った価格を下回る価格で売ることになるためです。
一方で交付目論見書は、VIX指数が急騰し、価格の並びの傾向が「反転することが多いときには、短期的に利益をあげます」とも書いています。
JPXの説明では、日経VI先物など、予想される変動の大きさを表す指数の先物は「コンタンゴになることが多くなる傾向」があります。交付目論見書の説明では、318Aの指数は長期にわたり右肩下がり傾向を示してきました。
その推移の図は、2005年12月20日から2024年9月30日までのものです。
JPXの銘柄詳細資料では、限月の間には通常、価格差があるため、318Aは「一般的には長期間の投資には向かず」とされています。
下の図3は、コンタンゴとバックワーデーションで、売る先物と買う先物の価格の並びがどう違うかを示します。
乗り換えは第1限月を売って第2限月を買う形で、第2限月の価格が上回るコンタンゴのまま、ほかが変わらなければ、乗り換えは損失になります。
参照:シンプレクス・アセット・マネジメントの交付目論見書、JPXの銘柄詳細資料・先物型ETFのリスクの説明・用語集
318Aの資産の中身と、決算・NISAの扱いは?
2026年10月30日の月次レポートでは、外国債券が56.40%です。組入銘柄の欄に載るのは、US T-BILLの1銘柄だけです。
交付目論見書の「運用実績」の欄(2026年7月31日現在)では、資産の配分の債券の内訳は、米国債(米国が発行する債券)です。
「コール・ローン等、その他」は43.60%です。外国債券と合わせると100.00%になります。同じ資産構成比の欄に、VIX指数先物が101.22%と並んでいます。
「コール・ローン等、その他」のうちコール・ローンは、ごく短い期間(通常1日)の資金の貸し出しです。月次レポートには、この区分の内訳は書かれていません。
比率は、どれも純資産総額に対するものです。外国債券と「コール・ローン等、その他」は持っている資産の内訳で、VIX指数先物は、それとは別に買い建てている先物の比率です。
交付目論見書の「運用実績」の欄でも、「資産の配分」と「商品先物取引の状況」は別の表です。下の図4は、資産の内訳と、同じ欄に並ぶVIX指数先物の比率を示します。
交付目論見書によると、VIXの先物の買い建ての総額は、純資産総額とほぼ同額になります。ただし、正確に同じになるわけではありません。純資産総額を上回ることも、下回ることもあります。
先物の取引では、証拠金(先物の取引で預ける保証金)を預けます。交付目論見書には、VIXの先物にかかる取引証拠金の説明があります。株価指数の先物の取引証拠金に比べて、大きな金額とされています。
交付目論見書の2026年7月31日現在の内訳では、2026年8月限が66.3%です。2026年9月限は29.8%でした。満期の違う限月を同時に買い建てていたことが分かります。
先物の合計の表示は96.0%ですが、内訳を足すと96.1%です。差は0.1ポイントで、合計と内訳はそれぞれ資料の表示のままです。
下の図5は、満期の違う2つの限月を同時に買い建てていた内訳と、資料に表示された合計を示します。
決算は、原則として毎年1月15日の年1回です。分配金(運用で得た収益を、決算ごとに分けて支払うお金)は、配当や利息などの収益から経費を引いた額を全額分配するのが原則です。
ただし、分配金がゼロになる場合もあります。交付目論見書には「売買益が生じても、分配は行いません」とあります。2026年1月の決算では、分配はありませんでした。
NISAについて、JPXの銘柄詳細資料では成長投資枠が「対象外」です。交付目論見書にも「NISAの対象ではありません」と記載されています。
信託報酬(運用と管理の対価として支払われる費用)は、税込で年率0.979%です。
総経費率(運用と管理にかかった費用の、年率の割合)は、2025年1月14日〜2026年1月15日の期間で1.23%でした。
1.23%は、運用管理費用(信託報酬)の比率0.97%と、その他費用の比率0.26%の合計です。購入時手数料や売買委託手数料などは、原則として含みません。
割合は、費用の総額を、対象期間の平均の口数に平均の基準価額を掛けた額で割って出します。
318Aの資料の要点を、項目ごとに並べると次のとおりです。
| 項目 | 318Aの資料の記載 |
|---|---|
| 連動を目指す指数 | S&P 500 VIX短期先物指数超過リターン(円に換算) |
| 使う先物 | CBOE先物取引所のVIXの先物(満期日が隣り合う2つ) |
| 主な資産 | 短期の米ドル建ての公社債(外国債券が56.40%) |
| 為替ヘッジ | 原則として行わない |
| 決算と分配 | 原則として毎年1月15日(年1回)。売買益が生じても分配しない |
| NISAの成長投資枠 | 対象外 |
| 信託報酬(税込) | 年率0.979% |
| 総経費率 | 1.23%(2025年1月14日〜2026年1月15日) |
| 売買単位 | 10口単位 |
| 上場日 | 2025年1月15日 |
資産は2026年10月30日の月次レポート、NISAの欄はJPXの銘柄詳細資料、それ以外は交付目論見書の記載です。
2026年10月30日の318Aの資産は外国債券と「コール・ローン等、その他」で、VIXの先物は純資産総額とほぼ同じ額を買い建て、決算は年1回、NISAの成長投資枠は対象外です。
参照:シンプレクス・アセット・マネジメントのマンスリーレポート・交付目論見書、JPXの銘柄詳細資料・ETF全銘柄一覧・用語集、資産運用業協会の成長投資枠の対象商品リスト・用語集
VIX指数が同じ水準でも、乗り換えで指数の値は下がりうる
ここからは、確かめた資料の記載を並べて言える範囲で、318Aのこれからの値動きや、売り買いの判断を示すものではありません。
もとにした事実は、次の4つです。
- 318Aは、VIX指数ではなく、円に換算したVIXの先物の指数への連動を目指します。
- その指数は、第1限月を売って第2限月を買う乗り換えを、毎日少しずつ行います。
- 交付目論見書は、第2限月の価格が上回る形で、ほかのすべてが変わらなければ、乗り換えは損失になると説明しています。
- JPXは、コンタンゴのまま先物価格が変わらないと仮定すると、VIXの先物の指数はVIX指数に対して下がり続けると説明しています。
下の図6は、交付目論見書の説明をもとに、第2限月の価格が上回り、ほかのすべてが変わらないときの乗り換えを描いたものです。
第2限月の価格が上回り、ほかのすべてが変わらないという資料の仮定では、乗り換えのたびに損失が出ます。この仮定のもとでは、VIX指数の水準が同じでも、先物の指数(円に換算する前の値)は下がっていきます。
資料から言えるのは、第2限月の価格が上回り、ほかのすべてが変わらないという仮定のもとでは、VIX指数の水準が同じでも、乗り換えで円に換算する前の先物の指数が下がるところまでで、これからの値動きは言えません。
参照:シンプレクス・アセット・マネジメントの交付目論見書、JPXの銘柄詳細資料・先物型ETFのリスクの説明
この記事で言えないこと
- 指数の名前にある「超過リターン」が何を表すかは書いていません。確かめた範囲の資料には、その説明が無いためです。
- VIXの先物の証拠金に、外国債券と「コール・ローン等、その他」をどれだけ充てているかは書いていません。確かめた範囲の月次レポートと交付目論見書には、その内訳が無いためです。
- いまの先物の価格の並びが、コンタンゴかバックワーデーションかは書いていません。JPXの説明にある価格の例は過去の日付のもので、いまの限月ごとの価格は確かめていないためです。
数値の基準日
- マンスリーレポート(資産構成比)
- 2026年10月30日
- 交付目論見書の運用実績の欄(先物の内訳)
- 2026年7月31日
- 交付目論見書(表紙の日付)
- 2026年10月16日
- JPXの銘柄詳細資料(NISAの欄・信託報酬)
- 2026年2月27日
- 用語集・成長投資枠の一覧・商品ページを取得した日(この記事を書いた日)
- 2026年11月5日
次に読む
- 「先物型」などの印が何を表すかを、東京証券取引所の一覧で読んだ記事:ETFの名前と印の読み方
- インド株を先物で持つETFの中身と費用を、資料で読んだ記事:1678とは
- 指数が下がった分だけ上がるとは限らない、インバース型ETFの決まりを読んだ記事:インバース型ETFは、指数が下がった分だけ上がるのか
出典
- JPX「318A」銘柄詳細資料(2026年2月27日現在)
- シンプレクス・アセット・マネジメント「318A」交付目論見書(2026年10月16日)
- シンプレクス・アセット・マネジメント「318A」マンスリーレポート(2026年10月30日)
- シンプレクス・アセット・マネジメント「VIX短期先物指数ETF」商品ページ(2026年11月5日取得)
- JPX「先物型ETFのリスク」(2026年2月19日更新)
- JPX「ETF全銘柄一覧」(2026年11月4日時点)
- 資産運用業協会「成長投資枠対象商品リスト(上場ファンド)」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「ETF」(2026年11月5日取得)
- JPX 用語集「先物取引」(2026年11月5日取得)
- JPX 用語集「限月」(2026年11月5日取得)
- JPX 用語集「買建玉」(2026年11月5日取得)
- JPX 用語集「オプション取引」(2026年11月5日取得)
- JPX 用語集「国債」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「運用管理費用(信託報酬)」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「基準価額」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「分配金」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「為替ヘッジ」(2026年11月5日取得)
- 資産運用業協会 用語集「コールローン」(2026年11月5日取得)
