itcareer40.jpコラムAIを投資の相談相手に
投資について調べるとき、AIをよく使います。使ってみると、「おすすめ銘柄を教えてもらう」より、自分の考えを整理したり、見落としを探したりする相手として、かなり便利です。
ただし、AIが出した数字や引用元を、そのまま信じるのは危ないです。最後に元資料を自分で開いて確かめるところだけは、今のところ人間がやったほうがいいと思っています。
「何を買えばいい?」より、自分の考えをぶつける
投資でAIを使うと聞くと、「今買うならどの株?」「おすすめのETFは?」「これから上がる銘柄を教えて」といった使い方を想像するかもしれません。でも、AIが未来の株価を知っているわけではありませんし、「おすすめ」と言われても、その理由を自分で理解できなければ、値下がりしたときに持ち続けることもできません。
むしろ役に立ったのは、自分の考えをAIにぶつける使い方でした。たとえば、次のような聞き方です。
- 「金利が上がるなら銀行株には追い風だと思う。この考えの弱点は?」
- 「このETFを長期保有するとしたら、考えておくべきリスクは?」
- 「高配当株と個人向け国債を比較したい。利回り以外に何を見ればいい?」
すると、自分だけでは見落としやすい論点が返ってきます。答えが正しいかどうか以前に、「そこも確認したほうがいいのか」と気づけること自体に価値があります。
ETFを比較するときは、かなり使いやすい
ETFの比較にも使いやすいです。ETFを2本、3本と比べようとすると、見る項目がかなりあります。信託報酬、純資産総額、構成銘柄、指数、分配金、値動き、為替ヘッジの有無。海外ETFなら、経費率や税金まで入ってきます。全部を自分で表にするのは、それなりに面倒です。
そこでAIに、「この2つのETFを、信託報酬、純資産、構成銘柄、分配金、指数の違いで比較して」と頼みます。すると、比較するための土台を作ってくれます。さらに、次のように掘り下げていきます。
- 「長期保有するなら、違いが出やすいのはどこ?」
- 「似たようなETFだけど、値動きに差が出る理由は?」
- 「上位10銘柄だけで比較すると、どう違う?」
検索だと、自分で複数のページを開いて、情報をつなげる必要があります。AIなら、一度整理してから、気になったところを質問できます。この「まず全体像をつかむ」作業は、かなり速くなりました。
ニュースを読んだ後の「で、何が重要なの?」にも使える
経済ニュースも同じです。たとえば、「長期金利が上昇した」というニュースを読んだとします。そこでAIに、「長期金利が上がると、銀行、REIT、グロース株にはどう影響する?」と聞くと、次のように、ニュースと投資をつないで整理してくれます。
- 銀行は、貸出金利が預金などの調達コストより大きく上がり、利ざやが広がれば、プラス材料になりやすい
- REITは、借入コストの上昇が重荷になりやすい
- 高い成長を期待されている株は、金利の上昇とともに割引率が上がると、ほかの条件が同じなら、将来の利益の現在価値が下がるため、評価が下がりやすい
もちろん、現実の株価はこんなに単純には動きません。銀行株なら景気や貸倒れのリスクもありますし、REITなら物件価格や賃料、空室率も関係します。それでも、「このニュースを見るとき、何を確認すればいいのか」という入口を作るには便利です。
「自分の考えに反対して」と頼む
自分の投資でよく使うのが、この使い方です。AIに、「この考えに反対する立場から反論して」と頼みます。
投資は、一度「買いたい」と思うと危険です。そこから先は、その銘柄を買う理由ばかり探し始めます。たとえば、「日本は金利正常化に向かっている。だから銀行株は今後も強い」と思ったとします。すると人間は、次のような、銀行株に都合のいい材料ばかり集め始めます。
- 銀行の利ざやの改善
- 金利の上昇
- 株主還元
- PBRの改善
そこでAIに反対意見を出させると、別の材料が出てきます。
- 金利の上昇が、すでに株価に織り込まれている可能性
- 景気の悪化による、貸倒れの増加
- 保有している債券の評価損
- 銀行によって、収益力にかなり差があること
反対意見は、もう一度考えるための材料になります。AIを「答えを教えてくれる先生」として使うより、「自分に反論してくれる相手」として使ったほうが、投資では役に立つと感じています。
AIに相談して、投資を思いとどまったことがあります。そのときは、買う理由と買わない理由を両方出させ、似た商品と比べさせ、反対意見も出させました。決め手になったのは、AIが挙げた「買わない理由」でした。
分からない言葉を、その場で何度でも聞ける
投資の記事を読んでいると、PER、PBR、ROE、イールドカーブ、デュレーション、実質金利、EPS、FCFと、知らない言葉が次々に出てきます。ある程度投資をしていても、分野が変わると、知らない言葉はいくらでも出てきます。
検索だと、解説記事を読んで、それでも分からなければ、別の記事を探すことになります。AIなら、「デュレーションを初心者向けに説明して」と聞いて、まだ分からなければ「具体的な数字で説明して」、さらに「金利が1%上がるとどうなる?」「株ではなく債券ETFなら?」と続けられます。質問するたびに、自分が分からない部分だけを掘り下げられます。ここは、検索には無い便利さです。
計算の意味を確かめるときにも使える
投資では、数字そのものより「なぜそうなるか」が大事な場面があります。たとえば、レバレッジETFです。仮に、指数が1日目に100から80へ下がり、2日目に80から100へ戻ったとします。指数は、最後に100へ戻っています。
ところが、1日の値動きの2倍を目指す商品だと、費用や、目標の2倍からのずれを考えずに計算すると、100 → 60 → 90 になります。100から80は20%の下落なので、2倍で40%の下落です。100は60になります。80が100へ戻るには25%の上昇が必要なので、2倍で50%の上昇です。60×1.5=90です。指数は100へ戻っているのに、レバレッジの側は90です。
こうした仕組みも、「なぜ100に戻らないの?」とAIに聞けば、数字を使って説明させることができます。本や記事の説明で分からなかった部分を、自分が理解できる形までかみ砕いてもらえます。
ただ、AIは普通に間違える
ここまで便利だと、つい全部を任せたくなります。でも、ここからが重要です。AIは、普通に間違えます。しかも、「たぶん違います」という顔ではなく、「答えはこちらです」という顔で間違えることがあります。人間なら、自信がなさそうに話してくれれば警戒できます。AIの文章は、読むとそれなりに筋が通って見えます。これが厄介です。
記事づくりで、2026年9月25日にWeb検索を使わずに聞いたときは、AIは1479(iFreeETF MSCI日本株人材設備投資指数)を、新NISAの成長投資枠の「対象」と答えました。JPXの銘柄詳細資料(2026年2月27日基準)では「NISA制度成長投資枠 対象外」です。
間違いに気をつけたい数字には、次のようなものがあります。数字が1つ違うだけで、結論まで変わることがあります。
- 企業の売上や利益
- ETFの構成銘柄
- 信託報酬
- 金利
- 税制
- NISAやiDeCoなどの制度
- 過去の株価
- 統計データ
出典が付いていても安心しない
さらに気をつけたいのが、引用元です。AIによっては、回答と一緒に出典やリンクを示してくれます。これを見ると、「出典まで付いているなら正しいだろう」と思ってしまいます。
自分の投資でAIの答えを使うときは、必ずAIにファクトチェックと引用元を出させます。引用元は、自分で開いて、本当に載っているか確かめます。
引用元を開くと、次のような問題が見つかることがあります。期間・意味・時点のずれは、載っているかどうかだけを見ていると見落とします。
- 数字は合っているけれど、対象の期間が違う
- 記事には書いてあるが、元データでは少し意味が違う
- 去年の情報を、最新の情報として説明している
- 引用したページに、その数字が見当たらない
AIに限らず、二次情報では起きることですが、AIはそれを、とても自然な文章にしてしまいます。だから、余計に注意が必要です。
自分の投資でも、役に立ったと思ったのに、引用元を開いたら違っていたことがあります。ダブルチェックが大事です。
AIの答えは、システム開発のレビューと同じ考え方で扱っています。書いたものは、書いた側とは別の目で確かめる、という考え方です。システム開発のレビューでいちばん実感しているのは、作った本人ほど、自分の間違いに気づかないということです。
AIの回答は「調査結果」ではなく「調査の入口」
AIの回答は、完成した調査結果ではなく、「ここを調べるといいですよ」と教えてくれる案内板として扱えます。
- 「このETFの信託報酬は○%です」と答えたら、運用会社のページを開く
- 「このETFは成長投資枠の対象です」と答えたら、JPXの銘柄詳細資料の「NISA制度」の欄と、運用会社のNISA対応の表示を見る
- 「この会社の営業利益は○○億円です」と答えたら、決算短信や決算説明資料を見る
- NISAの制度そのもの(非課税の枠や期間など)について答えたら、金融庁のNISAの案内を見る
- 「この経済統計は○%です」と答えたら、政府統計や中央銀行などの元データを見る
ここまでやって初めて、自分の中では確認が完了します。AIに一次情報を探してもらうところまでは任せます。でも、最後の確認は自分でします。
買う・売るを決める前に、AIにさせること
買う・売るを決める前には、AIに次の3つをさせます。
- 買う理由と買わない理由を、両方出させる
- 似た商品と比べさせる
- 自分の考えに穴がないか、反対意見を出させる
そのうえで、答えを使うときは、上に書いたとおり、引用元を自分で開いて確かめます。AIに聞いて、一次情報で確かめる。AIだけで完結させないのが、ポイントです。
AIは「投資の先生」より「壁打ち相手」
AIは、投資の判断を代わりにしてくれるものではありません。手伝ってもらいやすいのは、次のような作業です。
- 考えを整理する
- 反論してもらう
- 比較表を作る
- 分からない言葉を説明してもらう
- 見るべき数字を洗い出す
- 一次情報を探す
調べる手間は、大きく減りました。調べる作業が減れば、そのぶん「考えること」に時間を使えます。
ただし、AIが最後の判断まで正しくやってくれるわけではありません。AIが出した数字を確かめ、引用元を開き、一次情報を見ます。
「AIに頼るのは危ない」と言われたら、「頼る」のと「確かめて使う」のは違う、と答えます。
AIは、投資の答えを教えてくれるものではなく、考えるための材料を集めてくれるものです。
この記事で言えないこと
- 思いとどまった商品と、AIが挙げた「買わない理由」の中身は、筆者の答えに含まれていないため書いていません。
- 自分の投資で引用元を開いたら違っていた内容は、筆者の答えに含まれていないため書いていません。
- AIが1479を「対象」と答えたのは記録にある1回の試行のため、同じ質問に毎回同じ答えを返すかは書いていません。
- レバレッジETFの数字は仕組みを説明するための仮のもののため、特定の商品の値動きではありません。
数値の基準日
- AIに1479を聞いた日(Web検索なし)
- 2026年9月25日
- 1479の成長投資枠を確かめたJPX資料の基準日
- 2026年2月27日

