売買が少ないETFは、売りたいときに売れる?|東証のマーケットメイク制度と、451本のスプレッド

本ページはプロモーション(広告)を含みます。

itcareer40.jpETFの基礎マーケットメイク制度

初めてETFを選ぼうとして、証券会社の画面を見ていたら、出来高がとても少ない銘柄が見つかりました。出来高とは、売買された数量のことです。これほど売買が少ないと、自分が売りたいときに売れないのではないかと不安になります。

東証(東京証券取引所)には、マーケットメイカーと呼ばれる業者が売りと買いの注文を出し続ける「マーケットメイク制度」があります。2018年7月2日に導入された仕組みで、売買しやすい環境を整えることを目的としています。

JPX(日本取引所グループ)が公表する2026年9月のデータでは、東証のETF451本のうち432本にマーケットメイカーがいました。ただし、マーケットメイカーがいても、売りと買いの値段の差(スプレッド)が大きい銘柄はあります。

売買が少ないETFは、売りたいときに売れないものだと思っていました。東証が業者に注文を出し続けてもらう仕組みがあると知り、出来高だけで判断せず、印とスプレッドも見たいと思いました。

マーケットメイカーは、何をしているのか

マーケットメイカーは、東証に指定されて売りと買いの注文を出し続け、その見返りに報酬を受け取る業者です。

東証は申請をもとに、ETFの銘柄ごとにマーケットメイカーを指定します。指定された業者は、売りたい値段と買いたい値段を継続して示す役割を担います。

この売りたい値段と買いたい値段を「気配」と呼びます。JPXの用語集では、「買いたい値段、売りたい値段であって、約定値段とは異なります。」と説明されています。約定値段とは、売買の結果、成立した価格のことです。

制度の仕組みは、次のとおりです。

  • 指定するのは東証です。申請をもとに銘柄ごとにマーケットメイカーを指定します。
  • マーケットメイカーは気配を出し続けます。これを「気配提示義務」と呼びます。
  • 義務を果たすと報酬を受け取ります。この報酬は「インセンティブ」と呼ばれます。
  • 報酬は東証が負担します。東証の報酬に加えて、運用会社(ETFを運用する会社)が自社の銘柄に独自の義務と報酬を設定する仕組み(スポンサードマーケットメイク制度)では、運用会社が負担します。

JPXは費用について、「投資家の皆様による負担はありません。」と明記しています。マーケットメイカーへの報酬を、投資家が直接負担する仕組みではありません。

マーケットメイカーには、日本の証券会社や海外市場でマーケットメイクを行う業者が指定されています。売りと買いの両方に注文を出すため、自分たちが出す注文が割安・割高すぎるものにならないようにしています。

JPXは制度のねらいを、「投資家の皆様が売買をしたいタイミングで、より良い価格で売買する環境を提供できるようになります。」と書いています。売買できる環境を整える制度であって、希望する値段で必ず売買できるという保証ではありません。

もうひとつ知っておきたい言葉が「スプレッド」です。これは、売りと買いの最良値段の差を指します。最良値段とは、買いたい値段のうちいちばん高い値段と、売りたい値段のうちいちばん安い値段のことです。あわせて、各値段に出ている注文の数量を「デプス」と呼びます。JPXは、売買のしやすさ(流動性)を高めるには、スプレッドとデプスの両方の改善が必要としています。

マーケットメイカーがいる銘柄は、どこで分かる?

JPXの「銘柄一覧(ETF)」には、マーケットメイカーが参入している銘柄を示す印があります。

  • ●:通常のマーケットメイク制度で、マーケットメイカーが参入している銘柄です。
  • ★:2019年4月から、一部の銘柄に追加の気配提示義務と報酬を設定した仕組み(JPXの資料では「Version 2」)の対象銘柄です。

マーケットメイカーがいるかどうかは銘柄一覧で確認できます。一方、実際にどの程度のスプレッドとデプスになっているかは、JPXの「ETF気配提示・取引状況」で日々公表されています。

参照:JPX「マーケットメイク制度」概要(ETF)(2026年10月14日取得)、JPX「マーケットメイク制度」Q&A(ETF)(2026年10月14日取得)、JPX「銘柄一覧(ETF)」全銘柄(2026年10月9日更新・2026年10月14日取得)、JPX 用語集「気配」(2026年10月14日取得)、JPX 用語集「約定値段」(2026年10月14日取得)

9月の451本で、スプレッドを比べた結果

マーケットメイカーがいる銘柄の平均スプレッドの中央値は約0.14%、いない銘柄は約0.82%でした。

「中央値」とは、数値を小さい順に並べたとき、真ん中にくる値のことです。個数が偶数のときは、真ん中にある2つの値の平均です。この記事の「平均スプレッドの中央値」は、銘柄ごとの9月の平均スプレッドを小さい順に並べて求めた中央値です。集計に使ったのは、JPX「ETF気配提示・取引状況」の2026年9月の月間データです。「ETF銘柄別取引状況」に掲載された451本について、マーケットメイカーの有無で分けました。

比較した項目は、次のとおりです。

  • マーケットメイカーの有無:銘柄ごとに「有」かどうかを確認しました。
  • 平均スプレッド:売りと買いの最良値段の差を示す数値です。
  • 1日平均売買代金:売買された金額の平均です。資料では円で示されています。

この記事で使ったのは、月間データのうち「立会内」の欄です。その平均値は、日々のデータを合計し、日数で割って算出されています。日々のデータが無い日は、計算から除かれます。平均スプレッドの単位は「bps(ベーシスポイント)」です。1bpsは0.01%を意味します。

100bpsは1%に相当します。次の表は、マーケットメイカーの有無によって、銘柄数、平均スプレッド、売買代金がどう違うかを並べたものです。数字は、括弧の中の%で比べると読みやすくなります。

項目 マーケットメイカーがいる いない
本数 432本 19本
平均スプレッドの中央値 14.46bps(約0.14%) 82.08bps(約0.82%)
平均スプレッドが1%以上の本数 25本 9本
1日平均売買代金の中央値 約2,625万円 約166万円

この集計では、マーケットメイカーがいる銘柄のほうが平均スプレッドの中央値は狭くなっています。一方、1日平均売買代金の中央値は、いる銘柄のほうが多い結果です。

マーケットメイカーがいても、スプレッドが広い銘柄はある

表の中央値だけを見ると、マーケットメイカーがいる銘柄はスプレッドが狭くなっています。しかし、個別の銘柄まで見ると、例外もあります。

  • マーケットメイカーがいる432本のうち、平均スプレッドが1%以上の銘柄は25本ありました。
  • いない19本では、平均スプレッドが1%以上の銘柄が9本ありました。
  • マーケットメイカーがいない銘柄でも、銘柄コード1693のETFは14.25bps(約0.14%)で、いる銘柄の中央値より狭くなっています。

マーケットメイカーの有無だけで、すべての銘柄のスプレッドが同じように並ぶわけではありません。

スプレッドの割合を金額に置き換えると、仮に1万円分なら、約0.14%は約14円にあたります。

同じ条件で約0.82%は約82円です。これは割合を金額に換算した仮の例であり、実際の取引費用を計算したものではありません。

参照:JPX「ETF気配提示・取引状況」(2026年10月13日更新・2026年10月14日取得)、JPX「ETF気配提示・取引状況」月間データ(2026年9月)(2026年10月14日取得)、JPX「マーケットメイク制度」Q&A(ETF)(2026年10月14日取得)

平均スプレッドの中央値(マーケットメイカーがいる銘柄・2026年9月)

約0.14%

平均スプレッドの中央値(マーケットメイカーがいない銘柄・2026年9月)

約0.82%

数えた結果から言えること

ここからは、この記事で数えた結果から、そのまま導ける範囲の推論です。値動きの見通しではありません。

マーケットメイカーがいることは、狭いスプレッドを約束するものではありません。

9月のデータでは、マーケットメイカーがいる銘柄の平均スプレッドの中央値は、いない銘柄より狭い値でした。同じデータで、マーケットメイカーがいない銘柄の1日平均売買代金の中央値は、いる銘柄より小さい値でした。

また、マーケットメイカーがいる銘柄にも、平均スプレッドが1%以上の銘柄があります。いない銘柄にも、いる銘柄の中央値より平均スプレッドが狭い銘柄がありました。

9月のデータでは、マーケットメイカーがいる銘柄といない銘柄で、平均スプレッドの中央値だけでなく、1日平均売買代金の中央値も違っていました。そのため、平均スプレッドの差のうちどれだけがマーケットメイカーによるものかは、この数え方では分けられません。

参照:JPX「ETF気配提示・取引状況」月間データ(2026年9月)(2026年10月14日取得)

売買が少ないETFを見つけたら、確かめる順

出来高が少ないETFを見つけたときは、次の順番で情報を確認できます。

  1. JPXの「銘柄一覧(ETF)」を確認する。マーケットメイカーが参入している銘柄には、●または★の印があります。
  2. 「ETF気配提示・取引状況」で平均スプレッドを見る。売りと買いの最良値段の差が、どの程度あるかを確認できます。
  3. 同じ資料で1日平均売買代金を見る。その銘柄がどれだけの金額で売買されているかを確認できます。
  4. 注文の前に気配とデプスを見る。売るときは、相手になる買い注文について、各値段にどれだけの数量が出ているかを確認できます。

この記事で言えないこと

  • マーケットメイカーの有無は、資料によって基準日が違い、9月の月間データで「有」の7本が、10月9日更新の銘柄一覧では印なしでした。この記事の本数は、スプレッドと同じ表で数えるため、9月の月間データだけで数えています。
  • 日ごと・時間帯ごとのスプレッドは書いていません。月の平均で比べたためです。
  • 実際に出した注文が売れたかどうかは書いていません。JPXの資料は気配とスプレッドの状況で、個々の注文の結果は載っていないためです。

数値の基準日

数えた月間データの対象月
2026年9月
JPX「銘柄一覧(ETF)」の更新日
2026年10月9日
資料を取得した日
2026年10月14日

次に読む

出典

Sho
Sho

業務系SEとして長年

計画・リスク管理・数値設計を軸に、
ETFの情報整理から投資判断までをテンプレ化・自動化してきた。

新NISAの時代だからこそ、
感情よりも「仕組み」で迷わない投資を。

—— 焦らず、ブレず、仕組みで勝つ。

Shoをフォローする
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。
ETFの基礎はじめての方へ