日銀のETF売却はどこまで進んだか|年3,300億円のペースで、9月末までに残高(簿価)は2,304億円減った

本ページはプロモーション(広告)を含みます。

itcareer40.jp話題から読む日銀のETF売却

日本銀行は2026年1月19日、ETFの売却の進め方を定めた処分の指針を実施しました。その前の2025年12月31日と比べ、2026年9月30日までに、保有するETFの残高(簿価)は2,304億円減っています。それでも、日銀の手元には36兆9,557億円のETFが残っています。

日銀が決めた売却ペースは年間3,300億円程度(簿価)です。9月30日の残高をこのペースで割ると、約112年分になります。これは売却ペースが変わらないと仮定した単純な割り算であり、日銀が売却の完了時期を決めた数字ではありません。

ETFの残高(簿価)の減少

2,304億円

2025年12月31日から2026年9月30日まで

2026年9月30日の残高(簿価)

36兆9,557億円

営業毎旬報告

年間の売却ペース(簿価)

3,300億円程度

2025年3月末の時価に換算すると6,200億円程度

日銀は、いつ、何を売ると決めたのか

日本銀行は2025年9月19日、保有するETFとJ-REITを市場へ売却すると決めました。

日銀は2024年3月の金融政策決定会合で、金融政策の枠組みを見直しました。その際、ETFとJ-REITの新規の買入れを終了しています。

その後、2025年9月19日の金融政策決定会合で、保有するETFとJ-REITの市場への売却を全員一致で決定しました。売却規模は、金融機関から買入れた株式の処分と同程度としています。

同じ決定で、2019年12月に導入したETF貸付制度の停止も決まりました。

日銀が定めた処分の基本方針は、次の3つです。

  • 市場の情勢を勘案し、適正な対価によること
  • 日銀の損失発生を極力回避すること
  • 市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避すること

ここで、売却額を見るうえで重要になるのが、簿価と時価の違いです。

簿価は日銀が買ったときの値段にもとづく帳簿上の金額で、時価はその時点の市場価格などにもとづく金額です。

日銀が決めた年間の売却ペースは、時価ではなく簿価を基準にしています。この違いは、売却ペースと保有額を比較するときにも関係します。

参照:日本銀行「当面の金融政策運営について」(2025年9月19日)

どんなペースと方法で売るのか

日銀はETFを年間3,300億円程度、J-REITを年間50億円程度のペースで市場へ売却する方針です。

2025年9月19日の決定では、売却ペースが次のように示されました。

対象 年間の売却ペース(簿価) 時価(ETF・J-REITは2025年3月末の時価に換算) 市場全体の売買代金に占める割合
ETF 3,300億円程度 6,200億円程度 0.05%程度
J-REIT 50億円程度 55億円程度 0.05%程度
金融機関から買入れた株式(2025年7月に処分を完了。実績) 1,500億円程度 6,200億円程度 0.05%程度

ETFの年間売却ペースは簿価で3,300億円程度ですが、2025年3月末の時価に換算すると6,200億円程度です。これは金融機関から買入れた株式の処分ペースとおおむね同額です。

表にあるETFの0.05%程度とは、東証プライム市場全体の売買代金に占める売却額の割合を指します。J-REITの0.05%程度は、東証REIT市場全体の売買代金に占める売却額の割合です。

売却方法についても、日銀は具体的な方針を示しています。

ETFとJ-REITは、取引所市場で形成される価格にもとづいて売却します。また、売却時期を分散させ、各銘柄の保有割合におおむね比例する形で売ることになっています。

つまり、日銀が特定のETFだけを選んで売却するのではなく、保有している各銘柄の割合におおむね沿って売る仕組みです。

ただし、売却額が常に同じになるわけではありません。売却を担当する受託者は、日銀とあらかじめ決めた範囲内で売却額を一時的に調整できます。ETFなどの価格指数が著しく下落した場合には、売却を一時停止することもできます。

さらに日銀は、処分開始後の経験や基本方針を踏まえ、金融政策決定会合で売却ペースを見直すこともありうるとしています。

年間3,300億円程度という数字は、現時点で示されている売却方針であり、最後まで変更しないと決めたものではありません。

参照:日本銀行「当面の金融政策運営について」(2025年9月19日)、日本銀行「ETF等の処分に関する決定(2025年9月金融政策決定会合)」(2025年9月19日)

ETFの売却の指針は、いつから実施されたのか

日銀が、ETFの売却の進め方を定めた処分の指針を実施したのは、2026年1月19日です。

日銀は2026年1月16日、指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針について、実施日を2026年1月19日とすると公表しました。

ETFとJ-REITの売却を決めたのは2025年9月19日です。決定から処分の指針の実施までには、約4か月の期間がありました。

このため、日銀がETFを売却すると決めた日と、処分の指針を実施した日は異なります。最初に売却した日は、この記事で使った日銀の資料には書かれていません。営業毎旬報告のETFの残高は、1月31日には12月31日より少なくなっています。この記事では、残高の変化を、処分の指針を実施する前の2025年12月31日の残高と比べます。

参照:日本銀行「『指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針』の実施日について」(2026年1月16日)

9月末までに、日銀のETFの残高はどれだけ減ったのか

日銀のETF残高(簿価)は、2025年12月31日から2026年9月30日までに2,304億円減りました。

日銀が公表している営業毎旬報告には、『金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)』という資産項目があります。

これは、信託銀行を通じて買い入れたETFなどを指します。ここでは、この項目を日銀が保有するETFの残高(簿価)として確認します。

時点 ETFの残高(簿価・億円未満切り捨て)
2025年12月31日(処分の指針の実施前) 37兆1,861億円
2026年1月31日 37兆1,808億円
2026年3月31日 37兆1,214億円
2026年9月30日 36兆9,557億円

処分の指針を実施する前の2025年12月31日には、37兆1,861億円のETFを保有していました。2026年9月30日には36兆9,557億円となり、残高は2,304億円減少しています。

残高は実際に減りました。ただし、減少した2,304億円に対し、9月末時点でも36兆9,557億円が残っています。

なお、J-REITの残高も減少しました。2025年12月31日の6,548億円から、2026年9月30日には6,505億円となり、43億円減っています。

ここで比較しているのは、日銀の営業毎旬報告に記載された残高の差です。売却したETFの時価や、売却によって得た金額を表す数字ではありません。

参照:日本銀行「営業毎旬報告(12月31日現在)」(2026年1月6日公表)、日本銀行「営業毎旬報告(1月31日現在)」(2026年2月3日公表)、日本銀行「営業毎旬報告(3月31日現在)」(2026年4月7日公表)、日本銀行「営業毎旬報告(9月30日現在)」(2026年10月7日公表)

日銀のETFは、時価ではいくらなのか

日銀が保有するETFの時価は、2026年3月末の決算で94兆1,871億円でした。

ここまで確認してきたETFの残高は、簿価で示された数字です。一方、日銀の決算資料では、保有ETFの簿価と時価、評価損益を並べて確認できます。評価損益は、時価と帳簿上の価額との差を表す数字です。

日本銀行の第141回事業年度(令和7年度)決算には、次の数値が掲載されています。

時点 簿価 時価 評価損益
2025年3月末 37兆1,861億円 70兆574億円 32兆8,712億円
2026年3月末 37兆1,214億円 94兆1,871億円 57兆657億円

2026年3月末の簿価は37兆1,214億円、時価は94兆1,871億円です。評価損益は57兆657億円となっています。

日銀の注記によると、時価は期末日の市場価格などにもとづきます。また、決算の簿価は信託財産(約定ベース)のみを対象とするため、貸借対照表の価額とは必ずしも一致しません。

各数値は、円単位で計算したあと億円未満を切り捨てて表示されています。そのため、表の時価から簿価を引いた額と評価損益が一致しない場合があります。

なお、日銀の決算では、ETFの運用損益についても内訳が示されています。

令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の分配金等は1兆6,336億円、売却損益は1,073億円でした。売却損益の1,073億円は下半期に計上された数字です。

つまり、保有ETFの価値を示す時価、帳簿上の残高を示す簿価、売却による損益は、それぞれ別の数字として公表されています。

また、ここで示した時価は2026年3月末のものです。前の節で確認した2026年9月30日の残高(簿価)とは、基準日が異なります。

参照:日本銀行「第141回事業年度(令和7年度)決算等について」(2026年5月27日)

このペースのままだと、売り終えるまでに何年分なのか

2026年9月30日のETF残高を年間3,300億円で割ると、約112年分になります。

9月30日時点の日銀のETF残高(簿価)は36兆9,557億円です。一方、日銀が決めたETFの年間売却ペースは、簿価で3,300億円程度となっています。この残高を年間の売却ペースで割ると、約112年分です。

これは、ペースが変わらないとした単純な割り算にすぎません。日銀は、処分を始めたあとの売却の経験などを踏まえ、金融政策決定会合で売却ペースを見直すこともありうるとしています。また、売却額の一時的な調整や売却停止も認められています。

したがって、約112年分という数字は、現在の残高を公表された年間ペースで割った計算結果です。日銀が約112年で売り終えると決めたわけではありません。

参照:日本銀行「当面の金融政策運営について」(2025年9月19日)、日本銀行「営業毎旬報告(9月30日現在)」(2026年10月7日公表)

日銀のETFの残高は、決めたペースどおりに減っているのか

2026年9月30日までのETF残高の減少額2,304億円は、年間の売却ペースを255日で按分した約2,305億円に近い数字です。

2025年12月31日から約9か月で減った残高は2,304億円で、それでも36兆円を超える残高が残っていると知り、決めたペースで少しずつ売るという仕組みの意味を数字で実感しました。

ここからは、この記事で確かめた資料から、そのまま導ける範囲の推論です。日銀が売却の実績として公表した数字ではありません。

日銀は2024年3月にETFの新規の買入れを終了しました。売却のペースは年間3,300億円程度(簿価)です。

処分の指針の実施日は2026年1月19日です。この実施日を起点に、年間3,300億円を9月30日までの255日で機械的に按分すると、約2,305億円です。

一方、2025年12月31日から2026年9月30日までのETF残高(簿価)の減少額は2,304億円でした。

按分した約2,305億円と、実際の残高の減少額2,304億円は近い数字です。ただし、前者は日数による計算額であり、後者は営業毎旬報告の残高の差です。両者を同じ売却実績として扱うことはできません。

日銀は、金融政策決定会合で売却ペースを見直すこともありうるとしています。この先も年間3,300億円程度のペースが維持される場合は、同じ前提で按分額との比較ができます。売却ペースが見直された場合は、その比較に用いる前提も変わります。

参照:日本銀行「当面の金融政策運営について」(2025年9月19日)、日本銀行「『指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針』の実施日について」(2026年1月16日)、日本銀行「営業毎旬報告(12月31日現在)」(2026年1月6日公表)、日本銀行「営業毎旬報告(9月30日現在)」(2026年10月7日公表)

この記事で言えないこと

  • 日銀がどのETFをどれだけ持ち、どの銘柄をいくら売ったかは書いていません。この記事で使った日銀の資料に、銘柄ごとの内訳が無いためです。
  • 日銀の売却がETFの値段に与えた影響は書いていません。日銀の資料は売却のペースと残高を示すもので、値動きとの関係は示していないためです。
  • 2026年4月以降の売却損益は書いていません。この記事で使った資料には、2026年4月以降の売却損益が掲載されていないためです。

数値の基準日

売却の決定
2025年9月19日
処分の指針の実施
2026年1月19日
ETFの残高(営業毎旬報告)
2026年9月30日
簿価・時価(決算)
2026年3月末

次に読む

この記事に関わる、国内株のETFと J-REIT のETFを扱った記事です。

出典

Sho
Sho

業務系SEとして長年

計画・リスク管理・数値設計を軸に、
ETFの情報整理から投資判断までをテンプレ化・自動化してきた。

新NISAの時代だからこそ、
感情よりも「仕組み」で迷わない投資を。

—— 焦らず、ブレず、仕組みで勝つ。

Shoをフォローする
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。
話題から読む